SLIDER 場外乱闘・番外編 HEATH KIRCHART

 TWSが制作するビデオシリーズが、今日のスケートビデオのハイスタンダードを築いたと言っても過言ではないでしょう。先日発売された『Outliers』で、実にビデオシリーズの26作目というのは驚きです。そんな数ある作品の中でも、名作中の名作としてスケーターの語り草になっているのが2001年に発表された『Sight Unseen』。ジョン・カーディエルで始まりヒース・カーチャートで終わるというとんでもない作品です。滑りの凄さは言わずもがな超一流なのですが、随所に織り込まれるスキット映像やBGMの良さも、この作品を大いに盛り上げた要因だと思います。
 前置き長過ぎ注意報なのですが、こちらの作品のヒース・カーチャートのパートの冒頭で、夜のフリーウェイを車でぶっ飛ばすシーンがあります。170km以上で(アメリカだと基本Mile表示だけど、おそらくkm表示。でないと説明つかない。汗)LAX方面(405号線 or 5号線のどちらか)にカーチャートが運転していると思わしき映像があるのですが、これはおそらく映画『HEAT』('95年)のワンシーンにインスパイアされているはずです。『HEAT』を観たことないって人もいるかと思うので簡単に説明させてもらうと、1995年に公開されたマイケル・マン監督の映画で、強盗団のリーダーを演じるロバート・デニーロをLAPDの警部を演じるアル・パチーノがチェイスするといった内容で、自分の中でもトップ3に入るファイヴァリット作品。観た瞬間から感化されまくってDVD、CD、パンフレット、クリアファイルなどあれこれ買い揃えてしまい、劇中のハイライトのひとつであるデニーロ vs パチーノのダイナーシーンの台詞を強引に英語で復唱できるまでになったほどです(少し脱線しました、失敬)。Anyways、先に上げさせてもらった映像を見比べてみると、確かに酷似している。かといって『HEAT』にインスパイアされているとは限らないだろ! 根拠はなんだ! 証拠だせ! って民の声が聞こえてきそうなので補足させてもらいますと、ヒース・カーチャートとスティーブ・ベラはともに'90年代中頃にBirdhouseのライダーでした(その前はともにFoundation)。’98年にリリースした『The End』はあまりにも有名で、この作品の印象が強すぎるため忘れがちなのですが、前年の'97年にはTWSの『Interface』で、ベラ&カーチャートのWパートが実現されました。今では考えられないのですが、その頃は仲良しだったんですね。当時はベラとカーチャートが一緒に、さらにはジェレミー・クラインも交えて『HEAT』を鑑賞していたかもしれません。というのも、『The End』のスティーブ・ベラのパートのセカンドソングが、Mobyの“God Moving Over The Face of The Waters”という曲なのですが、これは『HEAT』のエンディングに起用されるラストソングでもあります。ハードボイルド(死語?)なストーリーを締めくくるのにふさわしい壮大な楽曲でありまして、きっと映画好きのベラ(元奥さんは女優のジュリエット・ルイス)さんのことだから『HEAT』は大好きに違いない。とまあ、あくまでもすべて状況証拠で自分の勝手な思い込みかもしれませんが、あれこれ憶測しながら少し前のビデオパートを見直すのも、これからの季節にはピッタリかもしれませんね(秋の夜長に、ってフレーズは使わないぞ)。
 最後に、Heath Kirchartとかけて、映画『HEAT』ととく、その心は、HEAT Kirchart。なんちゃって。