SLIDER 場外乱闘・番外編 ぼくのなつやすみ

 「コラァ~待てぇー!!」 そう、ガードマンやらチャリ松から逃げているときに背後から聞こえてくる怒号。漫画やTVドラマみたいな台詞を本当に言うんだよね、やつら。
 想像力がないというか、もうちょいクリエイティブなかけ声してくれたら思わず止まっちゃうかもしれないけど。それにしてもいい年して公私に渡りハリソン・フォード並みに追われる身であります。
 スケートパークとかがあちこちに存在しなかった時代に都内でスケートを始めた世代なので、ストリートで滑るのが染み付いているに加えて、仕事柄撮影やらでシティスケートに赴く機会が比較的多いので、キックアウトされるのを承知で、自分やライダーの都合で少ないチャンスをモノにするために攻めるわけです。それにしても東京のガードマンはいい仕事してるって感心させられる。だってどう考えてもビルに直接関係なさそうなバイトっぽい若造や、あからさまに疲れ気味の初老の人たちが、たかだか数十分しかいないであろうすばしっこいスケーターを必死に追っかけてくるんだから。あれだけ本気でスケーターを追っかけて来るってことは、ほかに外敵と遭遇する機会が皆無というか、よっぽど警備の仕事が手ぬるいってことになるのかも。言い換えると東京の治安がいいってことなので、それはそれで喜ばしいことなんだろうけど、一昔前のコンプトンとかヨハネスブルグとかだったらスケーターなんかにかまってる場合じゃないよね。そういう問題でもないのだろうけど。
 信じられないだろうけど、昔の東京ではキックアウトってのがほぼ無かった。20数年前の話になるけど、自分が16歳だった頃の夏休みは東京ドームシティに集まって夜通し滑るのが恒例行事でした。21時頃に集合し、始発まで東京ドームシティの敷地内で滑り倒す。コンブくん、松井くん、神永くん、テルくん、植田くん、三上くん、権正、柿ちゃん…。現在のIKBクルーの前身となるオリジナル池袋のメンバーたちと合流して、ドームシティの敷地内で連日連夜スケートセッション(ドーム内は当然NG)。6段ステア、長い3段ステア、超ロングの大理石ベンチ、噴水横マニュアル台、変形飛び出しバンク、甲羅オブジェ、簡易ステージに加えて、照明あり、自販あり、トイレありでキックアウトなし、しかも無料という完璧なスケートプラザ。当時はそれが当たり前のスケート環境だったのが、今となってはあり得ない状況で毎晩スケートしていたわけです。確か「サンダーバード展」なる催し物がやっていて、そこでバイトしていた当時大学生ぐらいだったお姉ちゃんたちに愛の手ほどきを…なんてのも遠い夏の思い出(最後だけ妄想)。
 おっと、なにやら日本昔話に花が咲いてしまいそうなので、本筋にブラインド180しますが、要するに当たり前のことだけど東京ストリート事情が20数年前とは大きく変わり、シティスケートだけに限定するとかなり非スケートシティに変貌してしまったということを憂う今日この頃。一方で、スケートシーンや業界が成熟しつつあり、いろんな意味で認知度が広がり浸透したということでもあるので喜ばしいことでもあるのですが…。スケート業界のみならず、つねにシーソーゲームに揺られながれ一喜一憂を繰り返すのが世の常、と言われてしまえばそれでこの話は終了なんだけど、あの頃の東京は今よりも…ってところでカット、カット。現在発売中のSLIDER最新号(Vol. 24)の特集は東京。題して『TOKYO SKATE NATIVE』。東京とスケートについてのエピソードが綴られているので、興味のある人は一読願います。
 “ほんと東京って迷路のよう♪  振り出しに戻りルーレット再開”