Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
DAISUKE MIYAJIMA

M×M×Mの敏腕スタッフにして自称映像作家のジマこと宮島大介。
伝家の宝刀Fs 180フリップをなくした今、どこへ向かっていけば
いいのか迷走中。本能の閃きをたよりに書き綴る出口なしコラム。

第19回:CAPY G-SIDE

 「ひょんなことから~」って言葉なんか好きです。“ひょん”ってなにそれ? みたいな。普段スルーしてるけど「ひょん」ってどう考えてもふざけた音ですよね? って思っているのは僕だけかもしれませんが、1年半くらい前にこれまたひょんなことから西川誠 a.k.a. Capyのパートを僕が撮ることになりました。このコラムのコーナーまでチェックしているVHSMAGファンの人は多分ご存知ではなかろうかと思いますが、ここVHSのPick Upというコーナーのパートで数ヵ月前にUPされています。

 正直最初はひょんすぎてびっくりしました。というのも僕がCapyをそれまでに撮影したことは多分2回ほど、MxMxMの2ndの作品を撮影している期間に、茨城の今は亡き白畑公園で1回、新潟の横尾(江原)志輝の所有する変態ボウルで1回…くらいで両方ほぼたまたまのタイミングで撮影した程度です。指名されて「え? 僕? 僕っすか?」って周りをキョロキョロしちゃうような感じでした。

 しかし滅多になさそうなことだし、何よりおもろそうだったので「んじゃやろっか」てな感じで即答し撮影を始めました。撮影を始めて分かったことがいくつかありました。まずCapyは私生活や性格がどちらかというと無茶苦茶なヤツかなと思っていたのですが、待ち合わせすると必ず時間通りに集合場所にいたり、やりたいスポットやトリックが自分の中で明確だったりと結構しっかりしています。ちょっとアホなだけで性格は真面目なのです。それはスケートスタイルにもしっかり現れていて、ものすごいスピードででかいスポットを攻めるのが得意なのですが、ちょっとでも危ないと乗りに行かず、確実にすべてのバランスが整った時に初めて乗りに行き完璧にメイクするっていう、そこに雑な感じは一切ありません。そして行ったスポットでは必ず狙っていることをメイクします。

 今までいろんな人を撮影してきましたが「狙っているスポットでメイクできなかった」ってのはそんなに珍しいことではなく「そんな日もあるさ」と僕がスケーターの肩を叩くことはよくあります。しかしCapyはそれが一度もなく、何度も撮影を繰り返すうちに次第に「撮れるのは当たり前」という感覚で撮影に臨むようになっていました。まあ、少しアホなのは変わりませんが。

 そうそう、撮影日の前日に財布を無くして撮影に行けないということが2回ありました。撮影の日に朝起きて携帯を見てみるとCapyから夜中に5回とか不在着信があって折り返してみると「昨日の夜 Fucked Up(撃沈)して財布なくしちゃったっす~」てな感じ。1年程の撮影期間に財布って2回も無くす? どんだけだお前? って感じですが、1回目は本当にLostして2回目は何日か後に出てきたようです。時間通りに集合場所にはいるけど、二日酔いすぎて目がほとんど開いていなく不細工な顔が三割増しになっていたり、スポットでおにぎり食べながら密かに嘔吐いていたりということもありました。ちなみに見た目が普通にオッサンなのですが、Capyは21歳の若者です。

 そんなこんなで撮影を1年ほど地道に続けていた今年の7月、Capyは学校も卒業したということもありアメリカに3ヵ月スケートしにいくので、そこを締め切りに定め、一番最後に安中のデスボウルに行ってパートを完成させようという計画をたてました。梅雨時期ということもありなかなかタイミングが合わず結局安中に行けたのはアメリカ出発の3日前。ラストチャンスでした。まさかここまでギリになるとは思っていなかったのですが、Capyの撮影なので行きの移動中も普通にメイクして帰ってくることを僕は当たり前のようにイメージしていました。

 ずーっと雨続きだったのですがその日は晴天、ボウルの中に水が溜まっているかもという心配をよそに現地に着くとボウルはベストな状態で僕らを待っていました。いつも通り軽くアップしてから「さぁやりますか」と何度かトライ。探り探りで僕の方もアングルを決めて自分の中でベストな場所を見つけ…と恒例の作業。大体いつもこのベスポジを見つけるくらいのタイミングでもうすでに乗っているか惜しいのが何発も来ているかという感じなのですが、この日はなかなか惜しいというのすらも来ておらず、1時間があっという間に過ぎました。まあしかしよくよく考えてみれば3m程も高さのある半球体のようなボウルのチャンネル越えてハンドフリップしてテール当て込んで戻って来るっていうほとんど奇跡みたいなことやってんだよね…って撮影の途中に再認識しました。普段からCapyのトランジションの対応力がありすぎるせいで撮っているこっち側もかなり脳みそが麻痺していたんだなと…。行ったことある人は分かるかと思いますが、安中のそれはまさにデスボウル、下手したらマジで死ぬくらい迫力のあるボウルです。

 そこから戦いは続き、さらに1時間が経過し僕はそのあたりでCapyの撮影で初めて、「あれ、今日メイクしないかもしれない…汗」と考え出した途端、いろんなことが頭をよぎりました(ここでこのトリックが納められないとパートは未完成になってしまうし、明後日からCapy渡米…おほほ、どーしましょ…)。行きの車ではまったく想像していなかった展開でした。しかしCapyはいろんなことを微調整しながらも諦める様子はなく、ただただひたすらトライしています…が、顔はだんだん険しくなり見るからに身体も重たそうです。いくらアホで若いCapyもしんどそうでした。開始から約3時間、他に滑っていたスケーターも「頑張ってください」という言葉を残し帰って行き、日はだんだん落ちてきたその時、感動の瞬間は訪れました。

 不細工なCapyがリップを飛び出しそれは美しい放物線を描きながら左手で板をくるりと1回転させ完璧なタイミングでテールを当て込み、何事もなかったかのようにボウルを下までスルリと降りて行き反対側のリップの上にロールアウト…。いろんな気持ちと興奮が織り交ざり全身にゾワっと鳥肌がたったのを覚えています。Capyの方を見上げると、両手でガッツポーズをしながら「オオオーーーォぅ ファ~ック!」とか叫んでいます。Capyのあだ名の由来は動物のカピバラに似てるってことからきているのですが、その姿はそんな可愛いものではなく野生のゴリラそのものです。まさか人間の僕がゴリラにここまで感動を与えてもらえるとは思いもせず「お前はすごい」と素直にリスペクトしました。

 CapyのPick Upパート、もしまだ見ていなければ一度見て頂ければ幸いです。もう見たっていう人も。ゴリラみたいなカピバラがスケボーしていると思ってもう一度見返してみて頂けるとこれまた幸いですw。3ヵ月の渡米を終えてもう日本に帰ってきているようですが、もし何処かでCapyに会ったら財布ちゃんと持ってるかどうか見てあげてください。よろしくお願いします。

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