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 それは、Sくんが小学生になるかならないかのころ。その日はお母さんと一…
──第11回 : キャッツ ~後編~

2012.04.02

 それは、Sくんが小学生になるかならないかのころ。その日はお母さんと一緒に、ダイワというショッピングセンターに行ったそう。お母さんの買い物の付き添いである。とはいっても幼い子にとって、おもちゃ屋でない限り、買い物などでテンションが上がるわけない。S少年は、フロアーにある、3・4段の階段に腰をかけ、お母さんが買い物を終えるのを、おとなしく待っていた。そんな時、S少年は何かを感じた。

 「なんかね、誰かがずっと僕のこと見てるんですよ」。

 恐る恐る、感じる視線の先に目をやると、ひとりの人間がいた。その瞬間、S少年はこう思ったという。

 「猫人間や‼」

 うっ…いいじゃないか。僕は、この猫人間の話は、先程のUFO談とはまったく別次元の話と察した。そして、すぐに質問した。

 「まじかよ? で、そいつのどこがどう猫人間だった訳? 周りの人も猫人間に気がついていたの?」

 「顔です。もう猫なんです。でも身体は人間。気がついてるのは僕だけでした」。

 やば! 僕の興奮はMAXになりつつあった。

 「Sだけに見えてたのね。じゃあ、顔は毛だらけで、目は尖ってたの? ヒゲもあったんだね? それでいて、身体は人間。とんでもないヤローと遭遇してしまったな」。

 ふむふむ。かなりやばい話ではないか。僕は、もうこの話に釘付けになっていた。

 「いや、毛だらけではなかったです。猫なんですけど、どちらかというと人間の顔でした」。

 ん? ん? ん? 今なんて? 人間の顔? じゃ、じゃ、じゃあ人間じゃん…。

 「それって、ただ猫っぽい顔の人ってこと?」。

 僕の興奮は冷めてきた。

 「いや、猫です。口では説明できないんですけど、猫なんです。そいつもね、オレのこと見ながら『おまえ、よくオレに気がついたな』みたいな表情で見てたんですよ」。

 そんなムキになって猫と言われても…猫っぽい顔の人はたまにいるではないか。竹下元総理なんて、かなり猫っぽい顔だ。では、その人たちはみんな猫人間だというのか。日本は猫人間が総理だった時代があるのか。

 「猫に優しい猫社会を!!」

そんなことあるわけないだろう。しかも「おまえ、よくオレに気がついたな」というような表情とは、いったいどんな表情なのだろうか。猫人間よりむしろそちらの方が気になってきたが、Sくんはさらに話を続けた。

 「僕も最初は単なる勘違いかな、なんて思いましたよ。ただ…」。

 S少年は、かなり怖くなっていたらしいが、その猫人間らしき人をずっと見ていた。そして、S少年に近寄ってきたそう。猫人間らしき人は、S少年が座っていた階段をピョンピョンと駆け上がり、S少年の耳元ではっきりとこう言ったらしい。

 「ニャー…」と。

 僕は、目が丸くなった。そして、すぐにSくんの顔を見た。もしかしたら、この話はただのギャグで、僕は騙されてるのでは? っと思ったからだ。
 Sくんは、ハンドルを握り前方に向けていた顔をこちらに向け、僕を見つめた。
 ロバのような可愛い目だった。
 ロバはきっと嘘つかない。僕は、S君の話を全面的に信じた。そして、こう伝えた。

 「そいつは、猫人間だよ」。

 ロバ…いやSくんに笑みがこぼれた。

 「いやぁ、よかったすわ、デシくんならきっと信じてくれると思いましたよ。嬉しいですわ」。

 うん。そう言ってもらえたら、僕も嬉しいよ。

 どうやらこの地球には、猫も人間になりすまし紛れ混んでるらしい。

DESHI

旅とドトールと読書をこよなく愛する吟遊詩人。 “我以外はすべて師匠なり”が座右の銘。

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