Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
LAURENCE KEEFE

エンゲル係数高すぎスネークスタイルで、世界の秘境をスケボー片手に渡り歩くザ・トラベラー。合言葉は「旅の恥はかき捨て」。
ローレンス流、地球の歩き方。

第14回:THE PERSIAN VERSION

 イラン・イスラム共和国へスケートトリップに出かけてどうなるかなんて想像すらできなかった。イランは古代文明が発祥した素晴らしい国にもかかわらず、現在は不幸にも最も危険な国のひとつとして知られ、その自然資源を巡って争いが絶えることがない。最高指導者として知られるルーホッラー・ホメイニーがイラン・イスラム革命を起こし、西欧の支援を受けた皇帝を国外に追放した1979年から、イランは一般的にアメリカの敵国として知られるようになった。映画『アルゴ』を観れば、当時、アメリカ大使館で起きた人質事件の酷さがわかってもらえると思う。また、ニュースではイランの核開発問題も頻繁に取り上げられている。このようなイランに関する事柄は、果たして我々スケーターにとってどのような意味を持つのだろうか? 我々がイランを訪れ、スケートスポットをヒットすることを彼らはどう思うのだろうか?

 朝4時にテヘランのエマーム・ホメイニー国際空港に降り立つと、現地のスケーターたちが“Visualtraveling・イン・ダ・ハウス”というプラカードを掲げて我々を出迎えてくれた。そして、彼らはすぐにオレが履いているショーツがイスラム教の戒律に反していると丁寧に指摘してくれた。オレはバカ者だ。イランのローカルスケーターたちの温かい歓迎を受けた後、我々はイミグレーションで足止めを食らうアメリカ人スケーターを長い間空港で待つはめになったのだが、そんな旅の始まりが今回のイランツアーのすべてを物語っていた。そのアメリカ人スケーターとは、ケニー・リードとウォーカー・ライアン。ヤツらはイラン滞在中、つねにガイド兼ベビーシッターのような男によってすべての行動を監視・管理されたため、我々とはほとんど別行動を余儀なくされたのだ。しかし、現地のスケーターたちは我々を驚くほど歓迎してくれた。これからイランの規則になんとか慣れていかなければならない。

 ケニーとウォーカーは、イラン滞在中ずっとそのような男に付きまとわれることになるとは思ってもいなかっただろう。無理やり美術館に連れ回され、(おそらく盗聴された)ホテルに軟禁されるために多額の旅費を支払ったのだ。本当にかわいそうでならない。

 一方、オレたち非アメリカ人は、スケーター兼ガイドのMJの自宅に連れて行かれた。MJはイランのスケートシーンのボス的存在。ヤツはイランで初めてスケートパークを作り、アメリカからデッキが輸入されてこないために自宅の地下にプレス機を持っている。オレたちは本当に手厚いもてなしを受けた。毎日何時間もドライブしてスポットを案内してくれ、食事を提供してくれ、ツアーがスムースに進むように最善を尽くしてくれた。

 テヘラン市内の巨大な建物にはアーヤトッラーや殉教者の壁画が描かれている。星がドクロ、そしてストライプが爆弾になったアメリカ国旗に“DOWN WITH THE USA(アメリカとともに沈む)”とのメッセージが刻まれたものあるほどだ。恐ろしく聞こえるかもしれないが、ローカルスケーターたちに西欧人に対する偏見など見られず、みんな親しみやすく教養があり、イラン政府に賛同しているようには感じられなかった。

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 エスファハーンで秘密警察に職務質問されるまでは、基本的にどこでも好きなスポットでスケートすることができた。そして、イランに滞在するにつれ、この国における女性の人権についても少しずつ明らかになっていった。女性は公共交通機関で男と一緒になること、肌を見せること、ましてやカフェに入ることすら許されない。MJのガールフレンドのモナも、オレたちと一緒にお茶を飲んだり水タバコを吸ったりすることができなかった。既婚者であることを証明する書類がない限り、オレたちの宿泊するホテルに入ることも許されないのだ。

 イランがはらむ矛盾も興味深かった。顔と手しか肌を見せることが許されないにもかかわらず、何人もの美しい女性たちがオレの目配せに応えてくれたのだ。中には投げキッスをしてくれたり、茶屋で男女を隔てるカーテン越しに「アイラブユー」とささやいてくれたりする女性もいたほどだ。アルコールも固く禁じられ、公共で酔っ払った者がその場で警察により射殺されたこともあるという。にもかかわらず、どこでもビールやハシシを入手できるような環境だ。覚せい剤でキマったようなバスの運転手もいたほどだ。

 ローカルスケーターと出会い素晴らしい時間をともに過ごすという意味では、今回の旅はこれまでで最高のものとなった。シラーズでみんなが開いてくれた送別会。モナのボロボロのワゴンでドライブをしながらブラックストリートの“No Diggity”を聴いたこと。オレたちにスナックやドリンクをすべておごると言ってきかない鉄製のデッキに乗っていた少年が、新品のデッキをもらって涙を流したこと。そして、朝5時のバス停で、ローカルスケーターのひとりが、パトリック(ドイツ人)とキリル(ロシア人)を見て「オマエたちはヒットラーとスターリンを連想させる」と言ったこと。なんてこったい。

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Nixon x C.R. Stecyk III
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