押してダメなら引いてみろ

 それなりに長いスケート人生において、習得するのがもっとも困難だったのが“Late Shove-It(レイト・ショービット)”。クオリティの程度はさておき、ティーン時代は一通り最新トリックを取り入れていたことを自負していましたが、これには本気で頭を悩まされました。オーリーしてから時間差でショービットってどんな技よ!? しかもピークで地面と水平に回すなんて無理っしょ!! 今となっては涼しい顔してこなす人多数なのですが、この技が登場した’91年あたりは地獄の日々でした…。スケート始めてから最初の壁(オーリーはわりとすぐできた)で、自分の中での天敵認定。普段は温厚で高円寺のガンジーなんて言われていた自分ですが、このときばかりは室伏広治ばりにデッキ投げたり、アンディ・フグ顔負けの踵落とししたりとアウトレイジ全員悪党。当時は当然How To動画もネットもなかったので、連日連夜ひたすら練習しまくったけど原理がどうしても掴めず眠れぬ夜が…。結局自分には向いてないんだと言い聞かせてギブアップ。
 それからどれくらい後かは定かではないけど、ある日なにげなく遊びでやったらパーン、クルン、バシって嘘みたいにクリーンメイク。エッ、嘘、ポッポー、ってことであっけなく天敵を殲滅。その日は勝ち誇った顔で、ホーミーにDel Tacoをご馳走したような気がする。スケートボードも恋愛テクニックと同様「押してダメなら引いてみろ」なんだとそのとき知りました、というのは後付けなんだけど。

─KE

 

Nixon x C.R. Stecyk III
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