SLIDER 場外乱闘・番外編

DYLAN FOREVER

 スケートボードコミュニティにおいて、もっとも影響力が強い人物のひとりが28歳という若さで他界した。彼とは、3度会ったことがある。
 最初は、2012年に東京で敢行されたGRAVISツアーで撮影のアテンドを任されたとき。スケートスポットを廻ったり、スケートパークでデモやサイン会をしたりと、およそ1週間のスケートツアーに帯同した。容姿端麗、世界有数のスケートスキルを兼ね揃えたいわばスケート界のロックスター的存在である彼との1週間は、外タレ慣れしている自分でさえも、いつにもなく緊張を伴うものだった。それは兼ねてから耳にしていた先入観によるものだったことは、後になってわかったことなのだが……。聞くところによると彼は「酒癖が悪く、神経質」ということで若干構えていたのだが、ツアーも中盤にさしかかるとその心配は杞憂に終わる。接点が仕事とはいえ所詮スケーター同士、連日同じロケバスでスケートスポットを廻っていれば、共通の友人やスケートの話題を介して心の壁は壊れていくものだ。この時に撮り下ろされたフッテージや写真はGRAVIS関連の広告や動画で記憶しているスケーターも多いかと思うので、いまさらスケートスキルについては割愛させてもらうが、現場に立ち会った者としてひとつ言えるのは、トリックを決める際の瞬発力と集中力が尋常ではないってこと。猛スピードで獲物(スポット)に容赦なく飛びかかる姿は黒豹(実際に見たことないけど)のように的確で残酷だ。スケートボードの上での彼をどのように形容していいのか適当なワードが見当たらないが、神がかっていると言っても大袈裟ではないだろう。周囲の空気をガラッと変えてしまう希有な存在であることに間違いない。
 そんな彼も、ひとたびスケートボードから降りればどこにでもいる若者(明らかに普通ではないが)というか、意外と人間っぽいなんて思える出来事も。(国際電話で恋人と喧嘩して)ステイ先のホテルの壁に灰皿を投げつけて弁償させられたり、アキレス腱を切った仲間の心配をまったくしてなかったり(こういう場合は周りは冷静でいるべき)、スケートパークの入場に必要な記入用紙にTre-Bomb(彼の必殺技である360フリップの別称)と書いてみたりと(管理人は疑いもせず受理)、他愛もないことなのだけれど。
 2度目は翌年の2013年夏のLAにて、取材で彼の盟友オースティン・ジレット宅を訪れていたとき。一通り取材も終え次なる目的地に向かおうと支度していると、彼が大型犬を連れて現れた。オースティンと同様にLA在住だった彼は、犬の散歩も兼ねてフラッと遊びにきたようで、思わぬところで自分に遭遇したものだから少し驚きながらも「ヘェ~イ、ワサッ~プ」と彼特有の少し気怠そうなトーンでカジュアルな握手を交わす。先の少し尖ったドレスシューズを履いていたのが印象的だった。
 そして3度目は、渋谷シネマライズにて公開されたSupremeのフルビデオ『cherry』のプレミアにて。LA、NY、ロンドンなどで開催されたプレミアツアーの一環で東京を訪れていた彼は、少しドランク気味ではあったが異国の地で知っている顔を見つけて安堵したのか、会場で自分の姿を見つけると嬉しそうな顔つきでハグをしてくれた。撮影に数年を費やしたであろう作品内の彼のパート(映像)について労いの言葉をかけると、「う~ん、自分ではそんな凄いパートだとは思わないけど、ありがとう」とはにかんだ。このときはまだ、これが彼のまとまったスケート映像を拝める最後の作品になるとは知る由もなかったが……。
 記憶が正しければ、『cherry』のプレミアは2014年の3月頃で、彼が白血病と告げられたのが2014年の夏とのこと。若いほど進行が早いとされている病気のようなので、この後の闘病生活の壮絶さは想像に難くないが、プレミアで言葉を交わしたおよそ2年半後、2016年10月12日に彼は永眠した。若くしてスケートシーンの頂点に君臨したスタイルキングのレガシーは、スケートボードが存在する限り永遠に語り継がれることであろう。ディラン・リーダー、フォーエバー。
 最後に、ディランがツアー中にロケバスでヘビーローテーションで流していた曲を添えておきたい。


 
dylanforever
Photo by Ryan Allan

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