BOMB HILLS NOT COUNTRIES

 去年の秋頃の話。新潟の南魚沼市というところにスケートをしに行ったのですが​、ローカルスケーターに案内されたダウンヒルスポットは自分がかつて経験した中でも最上級。市街地から少し登ったところで車を降り、川沿いの遊歩道を10分ほど下ることができるというものでした。緩やかに続く坂で僕の板は気持ちいいスピードを保ちつつも決して気は抜けず、かと言って恐怖心を抱く程でもありません。スムースな路面、よく晴れた空の青と山の緑、そして田舎の美味しい空気を堪能しつつほぼノープッシュでゴールまで辿り着けるのです。「あぁスケートボード万歳!!!」と全身で歓喜するような、滅多にない体験をさせてもらいました。
 海外ではダウンヒルのことを「ヒルボム」と言うのをご存知でしょうか? 僕がそのことを知ったのは今から10年ほど前。沖縄から筑波に住む友人宅にお邪魔したときに訪れた、広めのパーク付きのスケートショップでのこと。店に陳列されていたキャップに「BOMB HILLS NOT COUNTRIES」とプリントされているものがありました。今はなきスケート誌、Slapがリリースしていたものです。プリントの意味を尋ねると「これはね『爆弾落とすんじゃなくって、ダウンヒルしろよ〜』って意味なんだよ」と当時の店長さんが教えてくれました。時はイラク戦争の真っ只中、アメリカのブッシュ政権がイラクに爆弾を落としまくっていた頃のことです。妙に感銘を受けた僕は、そのキャップを購入し店を後にしました。
 そんなヒルボムの聖地といえば言わずもがなサンフランシスコでしょう。「よくこんな坂だらけの場所が街となったもんだ…」。これが僕が初めてサンフランシスコの街を訪れた時の感想です。それまで見てきた数々の映像から予想はしていましたが、街中の坂はそれをはるかに上回るシビアなものばかりでした。そんな街を舞台に繰り広げられるストリートスケートはヒルボムが確立されています(一方手元のコントローラーでスピード調整可能な電動スケボーもしかり…)。「坂の途中でダメになっても必ず板より先の位置で転び、板を流さない」という暗黙のルールも存在すると言われるほどの街、ストリートスケーターなら坂を下ることができて当たり前と言ったところでしょうか。年齢もスケート歴もテクニックも僕とどっこいどっこいな感じの現地在住の友人スケーターがいるのですが、スポット帰りの急坂、フットブレーキでしか下ることができなかった僕はそいつに1ブロック以上も差をつけられてしまいました。ようやく追いついた坂の下、何事もなかったようにに涼しい顔して待っている友人におったまげたものです。
 その時の衝撃と悔しさ以来、ひとつひとつのトリックとはまた違う「坂を下るというスケート」に対しての考え方が変わったという事実。そして「BOMB HILLS NOT COUNTRIES」のキャップを手に入れて早10年。今でもお気に入りで被ってたりしますが、お隣北朝鮮の金正恩aka ロケットマンの狂いっぷりを見るにつけ「あんな国には早く爆弾が落ちるがいいさ!!!」なんて思ってしまう自分もどうやら変わってしまったようだ。

―Kazuaki Tamaki(きな粉棒選手)

 

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