DOTY(DADDY OF THE YEAR)

 いわゆる「理想の父親像」というのも今と昔ではずいぶん変わってきているものなのでしょう。それこそ昔は「地震、カミナリ、火事、オヤジ」なんて言いましたが(怖いものベスト4ね)、年がら年中腕組みして難しい顔してるお父さんというのは、正直子供たちにはウケが悪いのかもしれません。「子供に媚びを売る親がどこにいる!」なんていうカミナリが落ちてきそうですが…。それはさておきリック・ハワードやコリン・マッケイなど、偉大なスケーターを数多く輩出しているカナダ連邦政府は、理想的な父親の仕事について実に簡潔にそれを定義しています。それは「子供のお腹を食べ物で、子供の頭を知恵で、そして子供の心を愛と勇気で満たすことである」と説いています。
 なんだかアンパンマンのライフワークを連想させるような言葉ばかりですが、中年真っ盛りなこの自分も、かつては父親の姿を見上げて育った子供だったわけで、この健康な体は十分な食べ物を与えられたからこそ育まれたものだし、少ないながらも社会を生き抜く上で必要な知恵も持ち合わせることができて、口に出すのは恥ずかしいのですが、愛と勇気というものがどんなものであるかも一応経験できているつもりです。
 これはすなわち自分の父親が成すべきことをしたことの証であり、それにはリスペクト以外の何ものでもないのですが、自分たちの関係には足りなかったものがあることもまた事実です。それは残念ながら僕には父親とふたりで何かをしたという思い出がほとんどないこと。旅行や食事にふたりきりで出かけたこと、あるいは何か共通の趣味みたいなものに没頭したことや、それこそ近所のスーパーにふたりで買い物に行ったなんて些細なことすらほとんど記憶にありません。そんな父親から先日、「ひとりで行くのはなんだから行きつけの店に付き合わないか?」と言う申し出を受けても、特に予定もないのに「用事がある」ととっさに嘘をついて逃げるように家を出てしまうところが、自分の最も未熟な部分であると自覚はしているのですが、長い年月をかけて形成された人格というやつはなかなか難しい構造を秘めているようです。
 そんな自分には縁がありませんが、最近はスケーター周りにも家庭を持つ父親になった者がずいぶん増えてきました。そして、その多くはスケートの楽しみを自分の子供たちと共有して良い時間を過ごしているようですが、中にはスケートしている姿は子供に見せないし、子供にスケートをしてほしいとは思わないと言う者もいます。個人の教育観は尊重されるべきものですが、スケーターであるならばぜひ子供とはその楽しみを共有してください。スケボーが大好きなお父さんなんて、こんなクールな親父はいません。少なくとも僕らが子供の頃にそんなお父さんはいなかったし、自分が大人になった今思えば、当時の社会にはそういう自由な雰囲気を持ち合わせるゆとりがなかったのでしょう。
 アンパンマンみたいに完璧じゃなくていいから、何かに夢中な姿を自分の子供に見せて、それを子供と同じ目線で共有することのできる父親は、ハゲでもデブでも金がなくても僕は偉大だと思います。

─Takayuki Hagiwara(FatBros

 

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