Nike SB dojo | スケートパーク

 ワタシがスケートをはじめた場所は家の駐車場。とにかくプッシュの練習を…
──第4回 : ベッサンソン

2012.02.24

 ワタシがスケートをはじめた場所は家の駐車場。とにかくプッシュの練習をしていた。段々それだけでは物足りなくなり、外へ刺激を求め「近所の駅前」や「バスロータリー」を転々としはじめた。

 駅前やロータリーには、その場所場所のローカルがいて、チームを組んでいたりとローカルの輪があった。ワタシは、人見知り&引っ込み思案もあるせいか、大体その輪に入れずにひとりぼっち族。ハズレの時は、ローカルと思われる子に汚い言葉を吐かれキックアウトされる場面もあったが、アタリの時は、高級車に乗った怖そうなお兄さんにリアルゴールドをおごって貰ったこともあった。そんな感じで転々としていた。

 ひとりぼっち族のワタシにも、ちょっとしたキッカケからスケート友達と呼べる子が数人できはじめた。そして流れ流れて、はじめて「ホームスポット!」と呼べるところができた。
 そこは、市ヶ尾にある高速道路の高架下で通称「市ヶ尾」。明かりは街頭がふたつ。洗濯板のように荒れくれた路面。手づくりのセクションに、クタクタの茶色いソファーがひとつある場所。そこがワタシのはじめてのホームスポット。

 今までひとりぽつんと滑っていたから、はじめてのホームスポットや、スケート友達が嬉しくて、毎日の様に夜な夜な通ってはスケートをした。その当時の市ヶ尾は、多い日には20人位いた時もあったので、もちろん知らない人も沢山いた。みんな茶色いソファーにカバンを置いて滑るんだけど、知らないグループがソファーの周りにいると、緊張してソファーに荷物を置けなかったりした。そんな時はソワソワしながら、ソファーの辛うじて近くであろう場所に自分の鞄をそっと放った。そんな人見知りだから、いつも見かける人なのに勇気がなく話しかけれないことが続いた。

 そんなある日のこと。いつも居るけど話したりしたことのないグループがいた。いつものように、薄暗いなかで滑っていると、急にあたりが明るくなった。かなり異常な光景。そこに居たみんなで、その明かりの場所に行ってみると放置された車が放火されていたのだった。目の前にゴウゴウと燃える車。誰かが消防車をよんだ。爆発したら怖いので車から離れ、犬のオシッコだらけであろう茶色いソファーにみんなで集まって消防車を待った。目の前で車が燃えるという映画のような状況に、普段無口な人がめちゃめちゃ喋ったりとみんな極度の興奮状態。そして少し時間が経つと消防車がサイレンを鳴らしてやって来た。みんなで消防車をプッシュで現場へ誘導。消火がはじまるころには、いつも話せなかったグループと話せるようになっていた。みんなで近くにあるローソンに立ち寄り、1杯のビアを交わせばグッと距離が縮まり、まるで昔から仲の良かった仲間みたいになっているのである。なにかを乗り越えた戦友のようだ。「人は、火を見ることによってその場にいる人との一体感を強めたり、距離を近づけたりもする心理的効果がある」みたいだけど、そう考えると林間学校のキャンプファイヤーは一体感を生むためだったのかも知れない。「マイムマイムマイム~♪ マイムベッ・サン・ソン♪」も一体感のためだったのだろうか。みんなで唱えた“ベッサンソン”って何だったんだろうか。ベッサンソンに縁がない。

 そのあとも放置車の放火が相次いだ。放火防止策としてセンサーに反応して「放火はやめなさーい」みたいなアナウンスが「我々は宇宙人だ」ばりの低音の声で流れるもんだから、そこを通る度にビクッとしながら通っていたのを思い出す。暗闇にアナウンスが急に流れるもんだから、そこにセンサーがあってアナウンスが流れるのを知らない人の中には、きっと腰を抜かした人もいるだろう。

 あれから11年。今でもたまに「ワタシのことなんて、1回会ったくらいでは覚えてもらってないよなぁー」って思ってしまい話しかけられない時もあるけど、スケートを始めて引っ込み思案も少しは改善し、牛丼屋にはひとりで入れるようになりました。焼き肉屋にひとりで入れる日も近いかもしれない。

--Satomix

  • PRIME
  • STANCE