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座薬と飲み薬を大量投入。激痛との戦いでもあったイベント本番
──第7回:ひとりタフネス(後編)

2013.07.08

 さあいよいよ最終話です。
 会場に着いたオレは、車椅子の状態だったので会う人会う人に心配されるのは避けたかった。「あれ!?」っという顔をした知り合いに、「そうなの~」的な顔をして控え室にダッシュで運んでもらう。

 VHSMAGの関係者、G-SHOCK関係者に謝罪する。本当に申し訳ないです。みんなこのような状態のオレに対して優しい心配の言葉をかけてくれる。余計自分を情けなく思い、また自分に怒りが込み上げてくる。その怒りで痛みを緩和させた気でいるが、車椅子から立とうとするとやはり痛い。「さっきの力の漲りはどこ行ったんだよ」と意気消沈し、控え室でひっそりしているとその日の主役たちがぞくぞくと控え室に入ってきた。

 オレを見るなり「うおっ、豪くんどうしたんすか~~~!!」
 恥ずかしながら事情を話す。
 彼らから「無理しないで」などの言葉が来ると思ったら、オレを賞賛してくれる言葉の連続だった。
 松尾裕幸や小島優斗は「そんな状態で来てくれたんですか!? うお~気合いが入る。豪くんはこんな状況でもオレらのMCをするために来てくれたんだから、豪くん以上にオレたちは気合い入れてやりますよ! マジでやるぜ」と言ってくれた。
 オレがやっているメーカーのライダーでもある謝花明徳は「豪さん 見ていて下さい、絶対に勝ちます」。
 B7の泰斗や洋佑も「こんな姿見せられたらやってやるしかないっスね」と声をかけてくれた。

 そして招待選手のウェス・クレマー。彼とはDCツアーで日本で会い、その後サンディエゴの街中でも会ってるので顔見知り…。ウェスに事情を説明すると「サブウアアアアイブ~~~」とぶち上がってくれてる。さらに、ウェスがジーンズを脱ぎ見せてきた太ももはありえない程の大きさでムラサキ色に変わっている。聞くと数日前に撮影で鬼スラムをかましたらしい。オレだったらこんな怪我で滑ることなんてできるのか!? できたとしても、激痛以外の何ものでもないだろう。そう思わせる怪我。でもウェスは「お前もサバイブしてるからオレもサバイブするぜ」と笑顔でハグしてくれた。

ありえないほど腫れ、ムラサキ色に変わった太ももでも果敢に攻めたウェス・クレマー。

 このやり取りがコンテストスタートの2時間前。リハの時にステージに向かうスロープをあがるのも、杖をついてあがったらダサいんでゆっくりながらも歩きでステージへ。一番まわりを見渡せるスペースを決める。
 イベントがスタートすると控え室周辺が慌ただしくなる。みんなが持ち場の仕事をこなすなか、車椅子でずっと居るのが忍びなくなったので、人目のつかないところに移動。
 精神を整える。スタート1時間前、トイレに移動。理由はもちろん座薬投入。あのヒルズ医者自慢の座薬を個室でスタンディングインサート! 立ちながら挿入なので背中を反らなきゃいけない。「ふううお~~」と言いつつセットアップ完了。
 次は飲み薬の痛み止め。こちらはエナジードリンクで3粒投入。
 時計の針は刻一刻と本番に近づく。いよいよ開幕5分前。
 オレがステージ裏にすり足で向かうと、すでにスタンバっているライダーたちから「豪くん! オレら頑張りますよ!!!!」の声がかかる。ウェスも「サバイブ」と絶叫!
 小さいときから見てる、今では身長も追い抜かされた瀬尻 稜も「豪さん! 頑張れ~」とハイファイブ! 本来ならオレがその立場なのに、みんなに元気と気合いをもらう。本当に選ばれしライダーは心もスキルも一流なんだと、自分より年下のソルジャーたちに感謝と尊敬の念が込み上げる。この時、涙を流しそうでした。
 マイクを渡される。メインMCの合図がきた。オレの脳内は爆発寸前! 歯を食いしばりながらスロープを歩いてステージへ向かうと、いろんなスケーターや仲間たちが笑顔で見ている。その顔を見た瞬間に、オレに少し笑顔が出た。
 「あ~みんな知り合いばかりだ。もし失敗してもみんながサポートしてくれる。失敗恐れずに最後まで立っていられるように頑張ろう」。

 覚悟はできた。ふうぅ~と息を吸い込み「REAL TOUGHNESS開始だぜ~準備はいいか~!」 この一声をあげると「ウォ~イェ~~!!!」 オーディエンスは準備完了!
 12時間前は病院だったのに、今はマイク持ってステージに立ってるよ。もうどうなるかなんてわかんね~。やるだけやったるわ~。一声一声腹の底から声を出し、ライダーを紹介。ライダー陣もステージ中央で戦闘態勢。

 「それではスタート!」
 そこからは怒濤のライダーアタック。攻めるライダーたち、吹っ飛ぶわ、股は裂けるわ、叩き付けられるわ…。まさしくイベント名に恥じないREAL TOUGHNESS。六本木ヒルズを取り囲むオーディエンスのボルテージも最高潮の連続だよ。

 ただ痛みは正直だ…。一声づつオレの我慢のバロメーターも減ってくる。痛みに顔を歪めるも、ライダーを見ると勇猛果敢にハンドレールやステアに躊躇なく突っ込む。ウェス・クレマーなんて、おいおいあの太ももでアタックかよ…。本物だ。ライダーたちに感動と刺激と言うボルタレンをもらい、オレの身体も痛みに耐える。
 この時、オレの怪我を知っているのは関係者とライダーたちのみ。ミスったライダーのデッキがオレの近くに吹っ飛んでくる。しかしオレは素早く足を動かすことなどできないので、飛んできたデッキはオレを通り越しステージ下へ落っこちていく。きっとMCはデッキを拾ってはいけないルールか、それとも情けもへったくれもない冷血な男にしかオーディエンスは見ていなかったかもしれないな…。あまりにもオレがデッキを拾えないので、決勝はステージ下にスタッフが待機していたのは言うまでもない。
 話はそれたが、とにかくオレのひとりタフネスの状態なんてどうでもいいや、というぐらいの攻め攻めのライダーたちだった。

 決勝で松尾裕幸が失神した。REAL TOUGHNESSの名に恥じないアタックを最後までし続け見事に散った。スケートを知らないオーディエンスにはどのトリックもハードに見えたに違いない。しかし、目が肥えたスケーターたちをも唸らせるハードシットを松尾裕幸はやってみせた。クオーターの手すりに50-50からのオーリーアウト、しかも手すりはラウンド、手すりからリップまではコンパネ1枚は余裕である。乗るか死ぬかの紙一重。結果ヒロはハングして左頭部側面を強打。目の焦点が合わず痙攣…。ラストトライの前にヒロが目でオレに合図した。今思うとそうなる覚悟でアイツは行ったのかもしれない。正真正銘のREAL TOUGHNESSを彼は身体で体現した。プロスケーター以前に本物の男だと思う。

REAL TOUGHNESSの名に恥じないアタックを最後までし続けた松尾裕幸に本物の男を感じた。

 REAL TOUGHNESSの映像を見て再確認したんだが、失神したヒロに近づくオレがいる。この時の記憶がオレにはあまりない。ヒロの男気に感動していたに違いないし、彼に対し向かった時の足取りは腰の痛みさえも感じさせないような足取りだった。不思議なものです。きっと脳内麻薬は存在し、あの時のピークの時間は、好きなことに対する正直な気持ちを体現する男たちに対して恥ずかしくない行動と態度を見せるべく、自然と身体がいうことをきいてくれたんだなと今にして思います。

 その理由は、タフネス後の2週間は自宅のリビングに布団を引き、起き上がる時は息子や嫁にしがみつき「はい、おじーちゃん」と言われながら起こされてたオレがいる。それだけ痛みが続いたのに関わらず、今なおタフネスの戦いの時間に感じた痛みは、激痛とは言いがたい感覚であった。

 素晴らしきソルジャーたちとともにあの空間を共有させてもらったことが結果としてこうなった。どうなったか。六本木ヒルズでの大舞台、前日に腰椎横突起骨折をしながらMCとして立った上田 豪がどうにか仕事をやりきった事実がある。みんなのお陰で仕事を終わらすことができました。

 「ひとりタフネス」ありがとう。

緊張の糸が切れ、痛みが爆発し立つのが精一杯の表彰式。

 

PS 長々と長文を読んでくれてありがとう。もっともっとREAL TOUGHNESS進行中の出来事を書きたいんだけど、書ききれませんでした。表彰式は緊張の糸が切れて痛みが爆発してきて、他のジャンルのMCと一緒に並んでなきゃいけないのに、マジで動けなくなり優勝者の稜と並んでいたとか…。帰りは松金くんが運転してくれると言ったんだけど、彼はその時点で愛知に帰らなければ行けない時間をかなりオーバーしていたんで遠慮して、ひとりで運転して帰ったら、足が痺れて帰宅までに3時間近くかかり、そこでもタフネスしてたとか…。
 最初の方は親切だった家族も、さすがにリビング生活10日目ぐらいには「さすがにじゃまだよね~」と言われたりとか…。
 みなさま本当にご迷惑を御かけしました。
 今後も迷惑かけるでしょう。
 現にこの文章を書いている4日前にも後頭部打って気絶しました。

 どんなだったか、ちょっと書こうか! Facebookやブログに載せた記事を抜粋するね。
 月曜日、池田幸太と一緒にM's Ramp Labで撮影中にぶっ飛びからハングして後頭部打って久しぶりに気絶した。パーク真っ暗にして、スポットライトを当ててたんだけど、一瞬ラインディングが見えなくって、確実にメイクできる着地を狙ったんだけど目測誤って鬼ハング…だから自分でも完璧に気を失って前後の記憶があまりない。5分間も目を見開いたまま気を失ってたって…。仲間いわく目を開けた死体だったって…。

 撮影が夜中だったんで、次の日の午前中に初めて食事をしたら奥の銀歯がふたつ同時に取れた。それだけの衝撃だったらしい。
 身体を強打してるからヒジやら肩やら手首やら首やらいたるところが痛い。で、今日まで安静にしてたけど頭痛がするので緊急病院に行ってきた。
 CTスキャン撮ったら白い影が見えるから、MRIも撮ろうということになりこれまた久々のMRI。少し焦ったし、結果を聞くまで緊張した。
 オレは平気だけど、閉所恐怖症の人はMRIはきっと無理だろうなと思いつつ15分間のMRI時間。
 結果は…、良かった。とりあえず異常なし。本当に良かった。一安心。あの場にいた5人衆。心配かけました。オレの心も肉体も含め無事に生還です。
 ね…。これがオレ。スケートボードが大好きなおっさんです。これからも宜しくね。

 そうそう今週末は新たなREAL TOUGHNESS。五体満足でマイクを握らせて頂きます!

2012年12月8日に六本木ヒルズアリーナで開催されたREAL TOUGHNESSの映像を改めてチェック。

Go Ueda
@goueda13mind

プロスケーター、MC、ディストリビューター、そして生粋の江戸っ子。経験値と熱量と、そして壁に張り付く頻度の高さはlikeスカイツリー。スケート界屈指のオピニオンリーダーが語る、ひとつ上の男とは。

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