スケーターの海外遠征で気をつけなくてはならないことって何でしょう。海外渡航経験が比較的豊富（？）な自分より、国外においての注意点をスケーターのみなさんにひとつだけ指南させていただきたい。国外では、ぼったくりだ置き引きだの気をつけなくてはならことは多々あるけど、特に気をつけて欲しいのは他でもなく“水”です。
　遡ること20数年前、それはまだ自分が少年だった頃、「海外の水道水は飲むな」と散々周りの大人から言われたにも関わらず「水ぐらい余裕っしょ！」と高をくくって水道水を一気飲みしたところ、数日間寝込むという失態をメイク。痛い経験を通り過ぎてトラウマとなり、以後海外ではレストランでもなんでも出された水には手をつけず、マイウォーターのみ口にするようにしてきたのですが、先日遂にマイルールを破り撃沈…。
　日本のホープを撮影するという仕事の依頼を受け台湾へ出向いた撮影初日の朝、現地のコーディネーターに連れられ小洒落たカフェへ。これから始まる失敗の許されないタスクの緊張感からか、いつもと違うヴァイブスで朝食をほおばり、出されたグラスの水をゴクリ…。慣れた遠征先であったこととキレイなカフェだったということで完全に油断していたのです。撮影スポットに到着し、ホープはかなり集中力が高まっている模様。それもそのはず、わずか72時間でウェルカム動画を撮影するという強行スケジュールで海外に来たのだ。とにもかくにも撮影開始。ホープがいきなり日本人離れしたスーパーラインを決めにかかる。それを一心不乱に追いかける俺。ゴロゴロ、ピカァッ、ギュルルル〜。あれ、雷!?　いや、違うぞ、これはもっと近くから響いているぞ、って俺の体内からじゃん！　こうなるとヤバさが伝染してくることを経験上知っているので、ホープがメイク間近にも関わらず「ゴメン、ちょっと待った！」と叫びその場から逃げるように猛ダッシュで地下鉄のトイレへピットイン。冷汗と脂汗でびっしょりになりながらも、かろうじてサードインパクトは免れる。気を取り直して現場に戻ると、ホープは地面に横たわって舞台挨拶の沢尻エリカ気味。や、やばい…「ゴメンゴメン」。丁寧に謝り撮影再開。スイッチのフルプッシュからの締めのWセットはさすがのホープも少し手こずっているようで、若干イライラ棒。それでも着実にメイクに近づいているのは流石のひと言。キュルキュルキュル〜。なにぃ、こんな昼間っからドリフト族!?　いや、俺の腹でカオス発生。それでも我慢を貫き、ホープのフルプッシュをビデオカメラ片手に追い続けるも、惜しくもメイクならず。今度は何も告げずにウサイン・ボルト顔負けの速さで再びトイレへ。ヤバい×2、マジでヤバい…大事な撮影の初日にカオスを起こした自分の不甲斐なさを呪いたくなる。おそらく集中力を欠いて撮影の継続は厳しいであろう…。地上に戻ったらホープに土下座して謝ろう…。最悪の事態を覚悟し肩を落として現場に戻ると、現地の有名スケーターとホープが談笑しているではないか。どうやら俺がドロンしている間にスポットに到着したらしく、顔見知りということもありワサップしていたようだ。
　何事もなかったようにシレっと撮影を再開させ、迅速なメイクを心底祈る。それでも集中力を欠くことなく、ホープはスーパーラインをトライするも惜しくも乗り転け。どうやらトリックうんぬんではなく、タイルの表面が滑ってスイッチプッシュのタイミングが合わないようだ。待望のメイクまでおそらく数回！　チュクチュク、チュ〜ってDJのスクラッチ音!?　であれば良かったんだけど異音の発信元は俺（汗）。これで中断したらフィルマーとしての信頼は失墜する…。もうどうにでもなりやがれ!!　得意の逆ギレで開き直り、鬼の形相でフルプッシュで追い撮りすると、コ〜ン、ピタ、パ〜ンとデッキを叩いてキャッチし着地する心地良いサウンドが辺りに響き渡る。メ、メイクだ！　ホープがゆっくりフレームから消えていくのを確認すると緊張の糸と筋肉が緩んだのか、異変に気づく。「アッ」

--KE