いわずもがなブロークンハートは辛い。そしてブロークンアームもこれまた辛い。利き腕をメイクしてしまった場合などはなおさら。てなわけで今回は唐突ですが、仮にスケートで片腕を骨折してギプスのお世話になることを余儀なくされた、独身・彼女なしの安宿にてひとり暮らし中の成人男性(東京にはよくいるスケーター像)に想定される困難をいくつか挙げてみよう。
まずは仕事への支障が挙げられる。運転、搬入運搬作業、調理従事者や美容業種などの職種は1発アウト。いきなり戦力外にカウントされる。はっきり言ってできることもほぼ無いだろうから、しばらく来なくていいですよ状態。「スケボーしててやった」なんて言ったら最悪クビかも。またデスクワークや接客業、販売など片腕で何とかこなせる職業でも、普段どおりの動きはできない訳だから戦力としてはあまり期待できないし、何より厄介者の烙印を押され、「それみろ自業自得だ」といわんばかりの周囲の冷たい視線に耐えていく必要がある。
次に日常生活でのさまざまな困難が挙げられる。何と言っても食事の問題である。自炊しようにも片手じゃたいしたことはできないし時間もかかる。何しろ片手ギプスで火を扱うのは危険すぎる。すべてを外食で済ますという方法もあるが、ただでさえ金が無い上に仕事もできない人間が選択できる方法とは到底思えない。大変な苦労が予想される。
そして入浴の不自由。浴槽につかるのは手間がかかるのでシャワーだけで乗り切るにしたとしても、ギプスが濡れないように毎回サランラップやビニールでぐるぐる巻きにして片手でせこせこ頭や身体を洗う訳だが、どうしても痛めた腕の逆サイド、特にブラインドサイドには相当な困難が予想される。スケートに例えるなら、スイッチバックサイドの困難さを想像してもらえると分りやすいだろう。なんにしてもブラインドサイドには困難が付きまとう。
そして最後に排泄の問題がある。大きく括れば日常生活の問題ではあるが、この排泄だけは完全にプライベートライアンな戦いを強いられる。よほどの「変態さんいらっしゃ~い」でない限り、己の排泄処理にともなう不便に積極的に他人(身内も含め)の援助をお願いする者はいないであろうし、それぐらい誰にも見せることができない情けない戦いを狭い便所の中で毎日繰り返すのだ。
そしてこれほどまでに追い込まれた状況下にあっても、腕の骨折だけであるならばとスケートすることを諦めない者たちが確かに存在する。ひとりでろくに飯も食えず、仕事もままならず、排便にすら苦労する身の上であるにもかかわらず滑走することを止めないスケートボーダーたちへ一言。
「お前らは病気だ!」
--TH (Fat Bros)