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ADIDAS SKATEBOARDING

ドイツ・シュトゥットガルトにルーツを持ち、パリでの存在感も高まりつつあるARROW & BEASTはスケートショップ以上の存在。カルチャーの拠点でありクリエイティブな発信基地、そしてローカルスケーターが集う憩いの場でもある。最近ではADIDAS SKATEBOARDINGとのコラボレーションやジェイソン・ディルのアートショーを実現したばかり。パリ店を取り仕切るフランク・バラッティエロと共同創設者兼クリエイティブディレクターのマット・アーヴィングに話を聞き、ARROW & BEASTがパリの地でどのように独自の存在を築いているのか、その裏側に迫った。
──ARROW & BEAST

2025.07.29

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos courtesy of Arrow & Beast
Special thanks_adidas Skateboarding

VHSMAG(以下V): まずArrow & Beastがどういうショップなのか、知らない人のために教えてください。

Arrow & Beast(以下A): Arrow & Beastはローカルのスケートシーンを支える存在であり、人が集まれるハブでもある。スケートギアや洋服も売っているけど、ショップを始めたモチベーションはオレら自身が子どもの頃に、スケートを始めるきっかけをくれたショップがあったこと。その感覚を今に引き継いでいる感じ。

V: ショップ名の由来と、シュトゥットガルトでのスタートからパリへの展開について教えてください。

A: 名前については、最初は単語ひとつでいい名前がないか探していたんだけど、すでに商標登録されてるものばかりで難しくて。そんなときに“ARROW”と“BEAST”という言葉がうまく噛み合ったんだ。矢のように正確に滑ることもできるし、獣のようにワイルドに滑ることもできる。どちらにもそれぞれの魅力があるし、結局スケートって個人のスタイルがすべてだからね。

V: パリ店の雰囲気やコミュニティはどんな感じ?

A: いい雰囲気だよ。コミュニティもどんどん広がっている。パリは大きな街だから、スケーターやクルーもショップごとに分かれていたりするけど全体としてはかなりいい空気感がある。ストリートやイベントでみんな顔を合わせるし、結局同じ「遊び場」を共有してるわけだから。

 

V: パリには独自のクルーやスタイル、エネルギーがあると感じる?

A: もちろん特有のエネルギーはあるよね。世界の他のスケート都市と同じようにいろんなクルーやスタイルが混在していてそこが面白い。共通しているのは「この街を最大限に楽しみたい」という想いで、それぞれが自分なりの視点で街を解釈している。

V: シュトゥットガルト店とパリ店の関係はどう?

A: 密に連携している。国は違うけど電車でたった3時間の距離だし、パリのライダーたちもよくシュトゥットガルトに行くしその逆もある。見ていてうれしくなるね。

V: それぞれ独立して運営しているの? それとも協力体制が強い感じ?

A: 連絡は密に取り合っているけど、それぞれ違うシーンに属しているからショップごとに独自のアイデンティティと自立性を保つことも大切だと思っているかな。

V: 印象に残っているプロジェクトは?

A: GX1000とのビデオプロジェクトは印象深かった。サンフランシスコのチームがシュトゥットガルトとパリで数日間撮影して、パリ店のギャラリーで上映するという企画だったんだけど、10日間というタイトなスケジュールで映像を撮って編集して試写会を準備するのはマジで大変だった。でも結果的に最高の作品になった。ライアン・ガーシェルによる“JAGEN”。ぜひチェックしてほしい。あとはライアンとフェリックス・アドラーのフォトショーも同時にやって、これもなかなかハードだった。

 

V: Arrow & Beastが一番大切にしていることは?

A: やっぱりカルチャーだね。

V: ではadidasとのコラボについて。今回のプロジェクトはどのように始まったの?

A: 最初はForumのカラーウェイで進めるはずだったんだけど、Arrow & Beastのライダーたちはフランスやドイツのadidasチームに所属していることもあって、みんなSuperstarが大好きなんだ。だからそっちでプッシュして進めた感じ。

V: デザインや2色展開のコンセプトは?

A: 誰かに「ビール飲む?」って聞かれたら、もう次の一杯のことを考えちゃうだろ? そんな感じで、どうせなら2色出したいって(笑)。シュトゥットガルトとパリ、それぞれの街を表現するカラー。パリは特徴的な青いドア、シュトゥットガルトは温かみのある砂岩の建物が多い。そこからインスピレーションを得た。

 

スケートショップ同士のネットワークを象徴するような織りの素材を使いたかった

V: 今回のキャンペーンでは、ショップスタッフや「カウンターの裏側のカルチャー」にもフォーカスしているよね。

A: ヨーロッパ、そして世界中にあるスケートショップ同士のネットワークを象徴するような織りの素材を使いたかったんだ。これはスケート特有のものだと思うんだよね。みんな情報を共有して、同じように戦って、ローカルスケーターたちのハブになっている。プロスケーターたちもツアーの度に立ち寄る場所になる。サッカー選手のメッシが地元のJD Sportsで買い物してる姿なんて想像できないけど、デニス・ブセニッツがショップにふらっと現れるみたいなことがスケートでは普通にあるわけだから。

V: そのメッセージを伝えることがArrow & Beastにとって重要だった理由は?

A: スケーターは旅をするのが当たり前で、だからこそ現地のショップに立ち寄って、似た感覚の人と繋がる。それがスケートの面白さでもあるんだ。だから今回のカラーはArrow & Beastのためだけじゃなく、世界中の仲間のショップのためでもあるんだよ。

V: 個人的に思い入れのあるデザインは?

A: adidasのシューズデザイナーのノア・フースと一緒にアイデアを深めていくなかで、いくつか面白いディテールを提案してくれたんだ。'70年代のスキージャケットみたいな質感のシュータンだったり、ゴールドの通気孔リベットを内側に入れたり。新旧のミックスのバランスがよくて、ノアに任せて正解だったと思っている。プロに任せるべきところは任せるって大事だよね。

V: 地元のスケートコミュニティの反応はどうだったの?

A: 6月のパリ・ファッションウィーク中にローンチパーティを開催して、そのあと7月にシュトゥットガルトでもパーティをやった。各地からスケーターたちが集まってくれて、まさにうちらのショップの活動を象徴する瞬間だった。スケーターのためでもあり、スケートを取り巻くクリエイティブな人たちのためでもある。だから地下にギャラリーもあるんだ。スケートのクリエイティブな面にもフォーカスしたくて。

V: 実際にパリで今回のコラボモデルを履いている人は見かけた?

A: 需要はあるね。こういう機会があることで「まだやれるぞ」って気持ちになれるんだ。今は本当に厳しい時代で人が物を買わなくなっている。新型コロナの影響やインフレもあるし。でもこのコラボのおかげで少し希望が持てた。街中でシューズを履いてるのを見るとマジでうれしいよ。

 


 

V: 最近ではジェイソン・ディルのアートショーも開催したよね。どういう経緯で実現したの?

A: 前から話はしてたんだけど、ディルはここ数年ペインティングにすごく集中していて。ソロの展示をやるというチャレンジは、彼にとってもいいプレッシャーだったと思う。ビデオパートと同じで少しずつ作ることはできても締切があるから本気になれる。パリに仲間がたくさんいるタイミングだったのは彼にとっては安心感があったのかもしれない。本気で作品を出し切っていてすごく刺激を受けたよ。

V: 今回のスペースやタイミングにディルの作品がフィットした理由は?

A: ディルは写真もコラージュもドローイングもペインティングも全部やるから、彼の表現を理解するには全部見せる必要があるんだ。それが彼自身の希望でもあった。でもまだ見せきれていない部分もある。洋服のデザイン、店舗空間、映像のコンセプト、音楽のセンス、そういう部分も本当にうまい。だから次は“DILL’FEST”をやりたい。サーカスのファンハウスと、美術館で開かれる音楽フェスと、映画『Idiocracy』のモンスタートラックラリーを全部ミックスしたようなイベント(笑)。やるしかないでしょ!

V: ディルと組んで印象に残っていることは?

A: ディルが何かやるときは絶対に全力。あとディルが動くと周りも自然と動くんだ。まるでサンタクロースみたいに小さなお手伝いがいてみんな最高なんだよ。ブレイク、セージ、ヤニックにリスペクト!

V: 今回の展示で来場者に伝えたかったことは?

A: ディルは本当にクリエイティブなビーストだってこと。もう30年近くもスケートのセンスやスタイルに影響を与え続けている。滑り方、ファッション、音楽、Supremeのイメージ作り、Fucking AwesomeやHockeyの存在感。そのすべてに関わっている。でもSNSをやっていないから自分でそういう話は一切しないんだ。昔ながらのやり方で、他人に語らせるタイプ。みんなが無意識に参考にしてる「教科書」を、いまも更新し続けている人だよ。

V: ではArrow & Beastの今後について教えて。

A: とにかく続けていくこと。時代は本当に厳しい。ローカルのスケートショップを守りたかったら、足を運んで買い物をしてほしい。ネットで買えば買うほど、地元のシーンは干上がっていくから。スケート業界は「業界」というより「シーン」や「コミュニティ」で、それを守ることが重要なんだ。ビデオを観たり、くだらない話をしたり、新しい仲間と出会ったり、そういうことは大体ショップやパークで生まれるもので、SNSからじゃないからね。

V: イベントやコラボで予定しているものは?

A: 基本的には静かに動いていたいんだ。今の時代はみんな喋りすぎだから(笑)。やると決めたら本気でやるから。今後もいろいろ控えているよ。

V: では最後に、この時代にパリでスケートショップを運営するということにはどういう意味があると思う?

A: ただ単にオレたちは完全に正気じゃないってことかな(笑)。親にちゃんとした大人になる教育を受けなかったんだろうね。でもそれもいい。年をとっても、ちょっとくらいバカなままでいることが誰かの刺激になればいいなと思っているよ。

 

Arrow & Beast
@arrowandbeast / @arrowandbeastparis

ドイツ・シュトゥットガルトで設立され、現在はパリと2拠点で展開。コミュニティ、クリエイティビティ、そしてスケートへのパッションを原動力とするショップでありカルチャーハブ。最近はadidas Skateboardingとのコラボシューズもリリースしたばかり。

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