独自のスケートスタイルを追求するJAPANESE SUPER RATこと吉岡賢人がRED BULLのグローバルシリーズSKATE TALESに出演。パンクバンドJAPANESE SUPER RATS、ハードウェアブランドK.N.T.H.W.、新プロジェクトOFFICIAL GARBAGEまで、スケートボードを軸に多彩な表現活動を展開する天邪鬼スケーターの素顔に迫る。
──JAPANESE SUPER RAT
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Photos courtesy of Red Bull Skateboarding
Special thanks_Red Bull Skateboarding
VHSMAG(以下V): 現在は逗子を拠点に活動してるんだよね?
吉岡賢人(以下K): 今は池尻の方にいます。逗子と池尻にも物件を友達と借りてて。
V: じゃあ2拠点生活?
K: そうですね。めっちゃ最高っす。
V: 逗子を選んだ理由は?
K: 本当の理由はあれなんですよね。吉祥寺にいるときに付き合ってた彼女がストーカー被害に遭ってて。一緒に住んでたんですけど、ピンポンダッシュとかされたり。しかも帰ってきて「おかえり」とか言ってドアをガチャッって閉めた瞬間にピンポンダッシュされたり。なんかヤバかったんですよ。郵便物とかも勝手に取られたり破かれたりとかしてて。警察に相談して監視カメラをつけたりしたんですけど、さすがに遠くに引っ越したほうがいいって言われて。それで逗子に行った感じです。
V: そんなことがあったんだ…。ヤバいね。逗子はどんな感じ?
K: うみかぜ公園もあるし、本郷ブラザーズもいるし、守重もいたりとか、友達が多いから調子いいです。茅ヶ崎の方へ行ったら三本木 心や北詰隆平もいるし。めっちゃレベル高いし刺激になります。あと逗子には海も山もあって、なんか地元の愛媛の感じと結構似てるんで。その感じもいいなと。
V: 逗子に移ってスケートとかその他の活動に変化はあった?
K: めっちゃ変わったかもしれないですね。東京だとパーティとかも多いし、友達もめっちゃ多いから遊びすぎちゃってたんですけど、逗子だと結構集中できますね。静かだし。みんなゆっくり暮らしてるっていうか。ノイズ少なめで。だいたい店も遅くても夜の12時には閉まるんで。だから遊びすぎず、いい感じに集中できる場所ですね。
V: では今回、Red BullのSkate Talesというグローバルなシリーズに出演することになったきっかけは?
K: 最初はマダース(・アプス)から「Skate Talesに出てくれないか」ってDMが来たんですよ。それでSkate Talesをチェックしたんですけど結構面白くて。それで5月くらいに「4日間一緒に動こう」って。それで受けた感じです。ちょうどゴールデンウィークくらいだったかな。
V: 撮影は4日しかなかったんだ? 結構タイトだね。
K: もう最後のほうは身体がバキバキ過ぎて。何もできなかった(笑)。
V: 撮影で印象的だった出来事は?
K: マダースが楽器をいろいろ持ってきてたんですよ。なんかギターとか口でビョンビョンやるトランスみたいなやつとかいっぱい持ってきてて。それでスタジオに入ってセッションをやったのも印象的だったし、あとギターでオレらのバンドの感じに合わせてやってくれてたんですけど、音が速すぎて指から血が出たり。ギターが血まみれになりながら弾いてたのが印象的でしたね(笑)。
V: Skate Talesのエピソードもスタジオのシーンで始まるもんね。そんなことがあったんだ(笑)。では番組を通して、自分のスケートや人生観を世界にどう伝えたいと思った?
K: ありのままでもう世界に肛門を見せたような感じで(笑)。なんか頑張ってやんないようにというか、まぁいつも通り。ちゃんとリアルな感じにしないとって思って。だからなるべく酔っ払ってましたね(笑)。やっぱりシラフだとかっこつけちゃうじゃないですか。
V: 演奏してるときもそうだったの?
K: あの時もベロベロでしたね。なるべく状態で挑んでました(笑)。
V: 完成した映像をチェックして本人的にはどうだった?
K: いや、めっちゃ恥ずかしいっすよ。でもまあ、恥ずかしいぐらいがリアルかなと。
V: これまでの歩みや現在の活動とかを伝える濃い内容だったけど、今回のエピソードのハイライトは?
K: 何だろうな。でもやっぱ吉祥寺あたりの話ですかね。7年ぐらい住んでた場所なんで。あと最近は逗子と池尻にずっといて吉祥寺には行けてなかったんで、エモくなったっすね(笑)。
V: 吉祥寺のシーンといえば、ヒダカ・シンノスケという人については? あの人はこれまでの人生でかなり重要な存在という印象を受けたけど。
K: あの人が東京で一番最初に泊めてくれた人なんですよ。あの人から一番影響を受けてるかもですね。10代の一番多感なときにずっと一緒に遊んでたというか。家に行ってオレの新しいビデオとかを一緒に観たり。シンノスケさんが昔に影響を受けたものをめっちゃ見せてもらったりして。めっちゃセンスが良くて、すごい信用してる人です。オレが上京するきっかけになったのもシンノスケさんだったり、その周りだったりしたんで。あとシンノスケさんの弟がMEANINGっていうメタルバンドをやってて、K.N.T.H.W.ともイベントを打ったりしてます。だからシンノスケさんは自分がパンクになるきっかけになった先輩です。
V: 今の自分を形成する上で欠かせない人だね。言葉も少ないけど鋭かったもんね。
K: こういうプロジェクトで「シンノスケさんの話を聞きたい」みたいな感じになることが多かったんですけど、いつも断られてて。あんまり映りたくない人なんで。でもさすがに今回は出てほしいなと思ってゴリ押ししたんですよ。最初は「声だけで映らなくていいでしょ」って言ってたんですけど、無理やり呼んで「じゃあ、撮るんで」って感じで(笑)。結局出てくれましたね。
V: 独特なスケートスタイルについても聞きたいんだけど、譲れないこととか美学みたいなものは?
K: オレは天邪鬼なんですよ、めちゃめちゃ。だから大事にしてるみたいなことは、誰かがめっちゃかっこつけてやってることの逆をかっこつけてやりたいみたいな(笑)。だからみんなの出方をずっと見てるっすね。
V: 同じ愛媛出身の弓山真吾の影響が大きいというのは今回の作品のエピソードでも言ってたけど、それ以外にカルチャーや音楽とかから受ける影響はあったりする?
K: ファッションとかでいったら、2003年にUNDERCOVERが初めてパリコレに出たときの『SCAB』っていうショーがあって。当時のパリコレは超キレイな服ばっかりが出てたんですけど、そこで日本のUNDERCOVERが継ぎ接ぎだらけのボロボロの超パンクなショーをやったんですよ。それもシンノスケさんに見せてもらったんですけど、「真逆を行く」みたいな。そういうのとかにも影響を受けたし。あとChim↑Pomってアーティストが広島の空に「ピカッ」って描いたりとか。あとスーパーラットを捕まえてピカチュウにしたりとか。それにも影響を受けて「スーパーラット」って名前を使ってます。あとなんだろうな、Chim↑Pomが歌舞伎町で結婚式デモみたいな意味わかんないのとかやってたりするんですけど。そういうのとか、あとはやっぱパンクっすね。THE BLUE HEARTSとかINUとか。
V: やっぱり王道から逸れたところなのかな。
K: そうですね。王道から逸れるんだけど、ユーモアもあるみたいな。
V: とはいえ王道のこともしっかりできるよね。バランスがいいというか。
K: それは結構意識してますね。「ちゃんとやってる」人たちにもナメられないように(笑)。
V: 今回のSkate Talesでは音楽のセッションのシーンが印象的だったよね。音楽の位置づけはスケートの延長? それともまったく切り離した表現?
K: やっぱスケートと音楽はめっちゃ近いですよね。自分がやってる音楽は、もうスケボーだと思ってやってます。だからスケボーが軸の音楽的なノリでやってます。スケボーしてて溜まったストレスを全部ぶつけてる感じですかね。やっぱスケーターは音楽めっちゃ好きだから。好きなビデオパートの曲とかみんな覚えてるし。スケーターからDJになる人とかも多いし。なんかオレもバンドできたらいいなくらいに思ってて全然やれる気配はなかったんですけど。いろんなところで「いや、バンドとかもやってみたかったっすね」って話をしてたら、先輩から「バンド組もうよ」って言われて。「お前は叫んどけばいいから」ってボーカルをやらされたのがきっかけ。バンド名も決まらず身内のイベントとかに出たりとかしてたんですよ。そしたらドラムとかベースが集まってきてバンドとして活動することになって。それで、JAPANESE SUPER RATSって最後に「S」だけつけてやることになりました(笑)。
V: もちろん歌詞は全部自分で考えてるんだよね。
K: そうですね。全部スケボーのことを言ってるつもりですね。スケート病の叫びみたいな(笑)。
V: その他にもハードウェアブランドのK.N.T.H.W.を運営したり大忙しだね。これは知らなかったけど、Skate TalesではOFFICIAL GARBAGEってブランドにも触れてたよね。
K: 来月ローンチします。逗子の家の近所に住んでる友達でめっちゃ面白い人がいて。めっちゃ変わった趣味なんですけど、台風の後の海とかに行って、落ちてるゴミを拾ってコレクションしてるんですよ。それが全部めっちゃかっこよくて。面白いゴミを集めてるんですよ。
V: それでGARBAGEなんだ。
K: そう。それでOFFICIAL GARBAGE、「公式のゴミ」っていうブランドを一緒にその人とローンチします。今つけてる指輪もワッシャーだったり、スパナとかバネ。今は工業ゴミみたいなやつをシルバーで型取って作ってるんですけど、今後は潰した空き缶を使ったやつとか作ろうかなと思ってたり。ゴミからインスピレーションを受けたアクセサリーブランドみたいな感じ。ネズミがゴミを売ってるっていうイメージですね。
V: いろいろ活動してるよね。そういう創作活動の「表現の軸」ってどこにあるのかな?
K: やっぱスケボーですね。全部の軸がスケボーで、そこから得た感覚みたいなものを違うアプローチで出していけたらいいなっていう感じです。
V: Skate Talesの最後でもスケートボードは「嫁」って言ってたもんね。
K: そうそう。一生スケボーと結婚してます(笑)。
V: では今後トライしたいプロジェクトとかは?
K: 今後はとりあえずOFFICIAL GARBAGE。リングをクルーの証みたいにしたくて、これを持ってる人は無料でパーティに入れるとか。最近ランプをもらったんで、パーティでランプを出したり、自分が影響を受けてるDJの人とかを呼んだり。ゴミ集団みたいなイメージのパーティをやっていきたいですね。あとバンドも今は休止してるんですけど、2027年ぐらいにベースが留学から帰ってくるんで、そのタイミングでアルバムを出そうって今作ってます。K.N.T.H.W.もまたビデオを出そうと思ってるし。あと「ねずみ商店」っていうWEBのセレクトショップ的なやつを作ろうと思ってて。友達と作ったねずみ商品とかゴミグッズをそこで売ろうかなと思ってます。今は42インチぐらいのワンサイズのバギーショーツとか作ってたり。あと靴下。今も履いてるんですけど「日本超鼠」って書いたやつ。あと「自画自賛」とか「疑心暗鬼」とか全部四字熟語縛りのソックスを作る予定です。「日本超鼠」は四字熟語でも何でもないですけどね(笑)。
V: いろいろ楽しみだね。
K: あと来月からヨーロッパに行きます。adidasのイベントで行くんですけど、2ヵ月ぐらい残ろうかなと。フランスからバルセロナ、そこからローマ。ベルリンにも行って、フランスに戻ってパリに行って。ボルドーでレオ・ヴァルスがイベントをやってるみたいだから、それも見に行って。それからベルギー、ロンドンとか。それで最後アムステルダムで遊びまくって帰ろうかな(笑)。
V: 最高のスケートライフ謳歌中ですな。では最後に、今回のSkate Talesが公開されたあとにどんな反響を期待してる?
K: オレ自身も恥ずかしいぐらいなんで、あれですけど…。自分がこの変なモチベーションを保ててるのは、やっぱ海外に行ったときに本物の自由なスケーターたちを見て「スケーターはやっぱこうじゃねぇとな」っていつも思わされるからっていうか。CPH Openだったりとか。やっぱいろんなとこに行かせてもらってる分、そういう本物のスケートのヴァイブスを日本でしか滑ってない人よりは見てる自信があるんで。もっと世界って広いんだよっていうか、もっとめちゃめちゃでいいんだよっていうか。何て言うんだろうな、ありのままに、わがままにいてほしいなって感じですよね。やっぱちゃんとしてる人が多いから。もっとみんなふざけた方がいいし、それを受け入れてあげる優しさみたいなのも持った方がいいし。なんかどんなヤバいヤツでもみんな好きなスケートボードは一緒だから。なんか日本のスケーターのキャパが広がったらいいなって思いますね(笑)。
V: では最後にひと言。
K: 目指せ都会のムツゴロウ!
1999年生まれ、愛媛出身。Evisenやadidas Skateboardingの特攻隊長。独特のアプローチと自由自在なボードコントロールで注目を集めるパンクスケーター。











