世界を舞台に精力的な活動を続ける岸 海。LAを拠点にして3年、プロスケーターとしての存在感を着実に広げる一方で、VENTUREからのプロモデルのリリースや自身のブランドPARAHの展開など、多方面に活動の幅を広げている。今回のインタビューでは、リヨンでのADIDASツアーの裏側から新たなパート制作への意気込み、そして将来的な夢まで、現在進行形の岸 海に迫った。
──KAI KISHI / 岸 海
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Main portrait_Bailey Schreiner
Photos_Clement Le Gall
Special thanks_adidas Skateboarding
VHSMAG(以下V): 先日までフランス・リヨンでadidasのツアーに参加してたけど、今はどこにいるの?
岸 海(以下K): 今は中国の広州市にいます。リヨンから3日間だけLAに戻って、そこから中国に来ました。
V: 中国での目的は?
K: 毎年Avenue & Sonが開催しているイベントがあって。それに参加するんですけど、その前に1週間ほど広州に滞在してストリートで滑ったり友達と撮影をしたりって感じです。
V: ではリヨンでのadidasツアーについて聞かせてください。
K: 今年の初め頃にSuperstarがテーマの"SSTR"が公開されたんですけど、その反響が結構良かったみたいで。それで「第2弾やろうよ」みたいな話になって。イベントと撮影を兼ねたツアーの2回目です。今回はadidasとリヨンのWall Streetとサッカーチームのコラボのイベントがあって、それプラス"SSTR 2"の撮影が含まれてました。
V: サッカーにも精通している身として、今回のイベントは特別な感じだった?
K: リヨンのチームの試合はあまり見たことがなかったんですけど、やっぱりサッカーの試合を見るのは好きだったんで。スタジアムで試合を見に行けたのはうれしかったです。みんなでシャンパンとか飲んで結構酔っ払ってましたね(笑)。
V: リヨンのストリートはどうだった?
K: リヨンのストリートは良かったですね。ずっと観ていたJB・ジレットの映像に出てくるHDVっていうプラザにずっと行きたかったんですけど、このタイミングで行けるとは思ってなくて。実際に滑ってブチ上がりましたね。
V: IGのストーリーにJB出てたね。
K: そうですね。ツアーの4日目あたりに「JBいないな」みたいな話になってて。でも地元の仲間とかは「スケーターが集まるバーにいた」みたいな話があったりして。それでHDVじゃない別のプラザでイベントがあったんですけど、そこにJBがパッと現れて。それでローレンスに紹介してもらって初めて話しました。インスタでコンタクトを取ったことはあったんですけど、生JBは上がりましたね。
V: やっぱJBは好きなスケーターのひとり?
K: めっちゃ好きですね。フレンチ・フレッドのビデオとかずっと観てたんで。スイッチのモンゴとかはJBから影響を受けてます。最初はスイッチプッシュしてたんですけど、どこかのタイミングで撮影してて、ちょっとモンゴやってみようかなって思って。HDVでもJBっぽい技をアレンジして撮れたんで。初めてのフランスでリヨンに行けて良かったです。
V: ではadidasのチームで個人的に印象深いスケーターは?
K: リル・ドレは最初に上海ツアーで会って結構仲良くなって。一緒に滑るのは楽しいですね。ニールズ・ベネットは'90sのスケーターっぽいというか。なんか昔のスケーターっぽい動きをしてて、今回のツアーでも携帯をなくしちゃったり。結構深いスケートの話もできるし。トリックチョイスもオリジナルで楽しいし刺激になるっていう。映像もバンバン撮る感じじゃないけど、撮れたときは毎回スペシャルというか。あとはローレンス。一緒に滑ってくれてクリップも撮るし、昔から自分にいろいろ葉っぱをかけてくれて、自分ができなさそうなことでも挑戦させて成長させてくれる存在です。ベストTMですね。


V: 最近履いてるのはやっぱりSuperstar?
K: 履くことが多いのはSuperstarですね。でも最近気に入ってるのはPro Model。つま先が白のスエードのモデルがめちゃくちゃ調子良くてしっくりきます。
V: LAに拠点を移してから3年が経つけど、日本にいたときと比べてマインドセットは変わった?
K: そうですね。やっぱりLAはスケボーの聖地なんで、LAにいるとやりたいことが早く進むっていうか。マインド的にもモチベーションが保てる感じ。最初の1〜2年はLAにずっといたんですけど今は慣れてきて、LAで撮影をめっちゃ頑張るっていうより、LAでゆっくりして海外に撮影に行くっていうライフスタイルになってきました。
V: Ventureからシグネチャートラックがリリースされたけど、完成までのプロセスはどんな感じだったの?
K: 昨年の10月頃にAprilからプロに昇格したちょうど3日後ぐらいに、VentureのTMから「ぜひプロモデルを一緒につくりたい」ってメッセージが来て。まったく予想してなかったからめちゃびっくりしました。でもやっぱりプロモデルが出るなら、それに合わせてパートも撮りたいと思って。それでパートも並行して進めることになりました。これまでのパートと違って今回は場所や雰囲気を変えたいと思ってたんで、LAの映像はあまり入れず、サンフランシスコや中国の映像とかで構成しました。
V: そのなかで特に思い入れのあるトリックは?
K: エンダーは台湾のスポットで撮りました。一番有名なプラザのレッジ。ずっとエンダーが決まってなくてどうしようかと思ってたときにちょうど台湾にいて。そこでナチュラルに撮れたトリックを「エンダーに使おうか」みたいな感じで。ずっと狙ってたトリックとかじゃないんですけど、結構うれしかったですね。ただのレッジトリックじゃなくて、レッジ to レッジみたいな。あまりやらない動きだったんで良かったです。
V: 超絶テクニカルで複雑なコンボトリックとか、トリックセレクションがかなり独創的だよね。そのアイデアはどこから来てるの?
K: Aprilのプロ昇格パートを撮ってたときは、誰も見たことのないトリックをやりたかったんで毎日ずっと考えてました。ずっと探してた感じだったんですけど、最近は少し変わってきて、あまり技を考えすぎないようにしてて。スポットに着いてから「あれやろう」と決めるスタイルになってます。今回のVentureのパートは特にそうですね。でも次のパートはAprilのときみたいに誰も見たことのないトリックをやりたいと思って、また最近考え始めてます。考えすぎるとスケートが面白くなくなる気がしたんで、今年の1年はあまり新しいトリックを考えずに過ごしてた感じです。でもVentureの後はこれまでで一番いいパートを撮りたいです。
V: フェーズがあるんだね。ちなみにブレイデン・ゴンザレスが撮った"KISHI•KAI"パートが彼の個人アカウントから公開されたのはなんでなの?
K: あのときはブレイデンとずっと撮影してて、どこから映像を出すか決まっていなくて。当時はブレイデンもフィルマーとしてどうしていくか悩んでた時期でもあったんで、ブランドから出すよりもブレイデンのYouTubeから公開して、彼が作ったビデオを多くの人に見てもらって一緒に上がっていけたらなということで。ブレイデンはめっちゃいい友達なんで。
V: なるほど、謎が解けました。ブラザーフッドですね。ちなみに今はParahという自身のブランドも運営してるよね。
K: 最初は自分で写真を撮ったり、友達にモデルをやってもらったりしてて。スケボーと一緒で人種とか関係なく、仲間で楽しむということを見せたいという思いで始めました。そういう感じで日本人としてブランドを作って、日本のスケーターがアメリカとかに行ったときに、そのアイテムが会話のきっかけになったり、現地の人と仲良くなるためのツールのようなものになればいいと思ってます。スケボー以外のことも含めていろんなことにチャレンジしたいと思ってます。
V: では最後に、スケートボードを通して、最終的に実現したい夢や目標は?
K: 今後もずっとビデオパートを撮り続けたいです。また自分が今アメリカで生活できるようになったように、自分のブランドを作ったこともそうなんですけど、仲間たちも好きなことだけで生きていける環境を作りたいです。みんなで協力し合って、一緒に進んでいきたいです。 あと大きい夢になっちゃいますけど、将来的には日本でパークを作りたいですね。ただのスケートパークというよりは、ストリートに近い、見た目は公園だけどその一部に滑れる場所があるみたいな。街にナチュラルに馴染むスケートスポットを作りたいと思ってます。
Kai Kishi
@_kaikishi | parahbrand.com
Aprilやadidas Skateboardingに所属し、卓越したテクニカルスタイルで知られる岸 海。レッジで繰り出されるコンボやマニュアルトリックはトップクラス。Ventureからプロモデルをリリースしたばかり。










