世界中のスケートコミュニティで注目を集める存在へと成長したASICS SKATEBOARDING。グローバル展開を見据えた戦略やスケートカルチャーとの向き合い方について、ブランドマネージャーのカスパー・ファン・リーロップに話を聞いた。
──KASPAR VAN LIEROP / カスパー・ファン・リーロップ
[ JAPANESE / ENGLISH ]
Photos courtesy of ASICS Skateboarding
Special thanks_ASICS
VHSMAG(以下V): ASICS Skateboardingは日本でスタートしたけど、ブランドのビジョンや方向性は当時から今にかけてどう変わってきたと思う?
カスパー・ファン・リーロップ(以下K): 日本での立ち上げには関わっていないけど、外から見ていた印象としては、ブランドとしてのアイデンティティがまだ弱くて、かなり慎重な進め方をしていた感じだった。でも今はブランドのビジョンもしっかりしていて、受け入れられ方も違うと思う。少しユニークなことをやろうとしたり、他のブランドとは違う形でアプローチして、予想外だったり型破りな方法で攻めることを意識している。
V: 今ではアメリカでもしっかり存在感があるよね。この成長をどう見ている?
K: 確かに、特に東海岸では強いね。最初は小規模な流通と少量のプロダクトからスタートしたからビジネスの規模はまだ大きくない。でもマーケティングやチーム編成がうまくいけば需要は作れると思うし、流通も戦略的に広げていければ、新作のLeggerezza FBみたいなプロダクトもあるだけに着実で健全な成長のポテンシャルは十分あると思う。
V: ビジュアルやチーム、ビデオなどのブランディングが不可欠だけど、スケートコミュニティにおける「いいブランディング」とは何だと思う?
K: 人それぞれだし時代によっても変わると思う。個人的には、ライダーやビデオ、広告が重要な要素で、共感できて、楽しくて、ユニークで、本物であること。そしてもちろん、見た目も良くて履き心地やパフォーマンスも優れたプロダクトが伴っていることが大事だと思う。
V: スケートシューズブランドが信頼を得るために絶対に守るべきことは?
K: 本物であること、カルチャーに忠実であること、そして自分たちに正直であることだね。ASICSの場合は、日本発のスポーツブランドとして高品質なプロダクトを出していることを大切にしている。それを隠そうとしたり、違う側面を演じたりはしていない。


V: 世界中にライダーがいるけど、ローカルの個性とグローバルな存在感のバランスはどう考えている?
K: 戦略的にライダーを選ぶこともある。例えばフランスのスケートショップで展開したときには、フランス人のライダーもチームに迎えた。でも基本的には、その人のスキルやブランドとのフィット感、ASICSを世界に広める力があるかを重視している。まだビジネスを展開していない国のライダーでも、価値があれば起用する。
V: ライダーやクリエイティブを選ぶときに最優先していることは?
K: 全部大切だけど、チーム全体のバランスも見る。何が足りないか、逆に多すぎるか。スキルならヤッコ、スタイルならジーノやブレント、個性ならアクワシやモニカ…みたいな感じ。あとは他にはいないユニークで印象に残る、見ていてテンションが上がるライダーを見つけるのも好きかな。エミールやエヴァン(・ワッサー)、アクワシはかなり特別だね。

V: 大手スポーツブランドとして、スケートカルチャーにはどう向き合うべきだと思う?
K: 「自分たちのやり方でやる」ということかな。スケートに真摯で、ASICSとしても真摯であること。大きく目立とうとか、競争に勝とうとかはあまり考えていない。「自分たちの道を作る」ということ。新鮮で、リフレッシュできる何かを提供できたらいいと思っている。
V: 企業的な視点とカルチャーの視点がぶつかるとき、どうやってバランスを取っているの?
K: 両方の立場を理解して、中立的に教育者のような役割を心がけている。大きなブランドに対してスケートの仕組みを説明したり、コミュニティにいる人たちにそのブランドの目標を伝えたり。難しいときもあるけど、いい関係性を築き、信頼と尊重を持って接すればうまく進められるはず。
V: 振り返って、特に印象に残っているプロジェクトは?
K: 最初のグローバルローンチのビデオとその反響だね。マーケティングキャンペーン全体も含めて、キャリアのハイライトのひとつ。落ち込んだときはYouTubeの素敵なコメントを見に行ったりしているね(笑)。
V: 今後のチャレンジや目標は?
K: ビジネスを少しずつ成長させて、もっと利益を出すこと。でもこれには時間がかかる。今は世界の状況が少し厳しいから、焦らずミスをしないようにしたいね。
V: ではASICS Skateboraingを通じてスケートコミュニティにどんな価値を届けたい?
K: カルチャーをリスペクトして、スケーターに刺激やインスピレーションを与えること。長い目で見れば、スケートを楽しむ人や世界のスケートシーン自体をもっと盛り上げることも目指せると思う。
V: 10年後にはASICS Skateboardingをどういうブランドにしたい?
K: 世界的にリスペクトされて、欲しいと思われるスケートシューズブランド。洗練されていて、見てワクワクするユニークなマーケティングと、最高品質のプロダクトで知られるブランドにしたいね。

Kaspar van Lierop
@kvl.connect @asics_skateboarding
オランダ出身。ASICS Skateboardingのブランドマネージャーとして、ライダーのセレクションやクリエイティブ戦略を統括。日本発のスポーツブランドとして、スケートカルチャーへの理解を深めながらグローバルに独自の価値を構築している。










