Nike SB dojo | スケートパーク

制作期間7年、16mmフィルムの映像を駆使して完成させたロードムービー『YE OLDE DESTRUCTION』。ディレクターのトーマス・キャンベルに作品に込めた思いを聞く。
──THOMAS CAMPBELL

2019.12.04

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Portrait_Junpei Ishikawa
Photos courtesy of_YOD
Special thanks_Nike SB Japan

50歳を迎え、純粋にスケートボードを祝福する作品を作りたくなった

VHSMAG(以下V): 『YE OLDE DESTRUCTION』の完成おめでとうございます。まずはタイトルの意味から聞かせてもらえる?

トーマス・キャンベル(以下T): この作品はスマッシュアップダービー(※車をぶつけ合うモータースポーツの一種)のシーンで終わるんだ。2台の車に2組のスケーターが乗り込んで、それぞれいろんなスポットで滑って最後に合流。そして最後にスマッシュアップダービー。スケートは破壊的なものだから「古き破壊」というタイトルが面白いと思ったんだ。

V: 本作は自己資金で完成させたんだよね? なぜスポンサーなしで進めようと思ったの?

T: 50歳を迎えたということで、純粋にスケートボードを祝福する作品を作りたくなったということかな。5歳で始めたスケートがオレにすべてを与えてくれた。創造的な人間になれたのも、これまでの活動を成し遂げられたのもすべてスケートのおかげ。だから本作で金を稼ごうという気はない。純粋に作品をリリースするために資金を集める方法を思いついて進めることにしたんだ。今回に限っては絶対にスポンサーをつけたくなかった。
 


 

V: 資金はどうやって調達したの?

T: Creatureのスタッフでオレの友人のリーが大きなブランクデッキを手配してくれた。カットもされていなくて横からグルーが滴っているような生のデッキ。トラックの穴も空けられていない状態。完全なブランク。「なんだこれ? 家具か?」って思えるくらいスケートボードに見えない代物だ。それにこれまでに展示を行ってきた40名以上の仲間のアーティストがペイントしてくれてオークションを行ったんだ。そうして資金を集めていった。

V: 映像のほとんどが16mmで撮られていてかなりの現像費用がかかるよね。しかも何度もツアーに出掛けている。オークションだけですべてを賄えたの?

T: ほぼほぼね。でもこの作品で金を儲けようと思ったわけじゃないから。そこはあまり心配していないね。

V: トーマス・キャンベルのモノクロ作品といえば、個人的に'95年の“A Love Supreme”を連想する。モノクロにこだわるのはなぜ?

T: スケートボードが感情的だから。現代の作品はスケートの感情的な要素を記録できていないと思うんだ。どうしてもトリックの連続になってしまう。だから現場でどのような感情が生まれているか伝わらない。モノクロはそのような感情を効果的に表現できると思う。なんて言うか、モノクロが答えのような気がするんだ。
 


 

V: “A Love Supreme”から制作のアプローチは変わった?

T: 現代的な技術が加わったかな。本作は全編フィルムじゃない。90%がフィルムでドローンも使っている。観ればわかるけどドローンの空撮ショットのほとんどはまったく動いていない。俯瞰した視点で現場で起きていることをよりよく理解し繋がりを感じられるようにしているんだ。最近のスケートビデオでもドローンが多用されて被写体を追っているけど、あれだとドローンの操縦者が主役になってしまう。だからそうなるのを避けるためにも静止させたんだ。フィルムと空撮を組み合わせることでモダンな感じになっているとは思う。

V: 他のフィルマーも撮影に協力してくれたの?

T: オレが撮ったのは60%くらいかな。あとはジョン・マイナー、フレンチ・フレッドとマイク・マンズーリが協力してくれた。そしてコナー・ウェイスというヤツがドローンを操縦してくれたんだ。オレを含めてみんな生々しい撮り方をするからちょうど良かったと思う。作品のテーマがDIYだからスケートそのものはクレイジーというわけではない。どちらかと言えば仲間とのセッションや一緒に楽しむ時間を表現したかった。現在のスケートシーンが悪いと言っているわけじゃなく、スケートが凄くなりすぎてある意味楽しさが薄れてしまっているような気がするんだ。

V: スケートの楽しいヴァイブスを記録したかったんだね。

T: 一緒に楽しみながら物を作るコミュニティと仲間意識を記録したかった。本作に登場してくれたスケーターはみんな喜んでくれた。アーロン・サスキなんて最後の撮影のためにアリゾナから車で駆けつけてくれたくらい。彼は7年前に撮った最初のシーンにもいてくれたんだ。リック・マクランク、TNT、チコ・ブレネス、エリッサ・スティーマー、マックス・シャーフ…。最後のシーンの撮影には24人のスケーターが協力してくれた。こんな面子がコンテスト以外で集まることなんてないから。

 







V: ひとつのスポットにあんな面子が集結したのは美しい光景だったと思う。どうやってあの面子を選んだの?

T: ほとんどが友人だから。古くからの仲間だったり、オレの作品のファンだったり。仲間の仲間だったり。たとえばマーク・スチュウはスケートショップを運営する友人の仲間だった。「マークはオレの映画に出てくれるかな?」って聞いたらすぐに電話してくれて協力してくれることになった。彼は最高だった。マジで最高。

V: 中でも一緒に仕事ができてうれしかったスケーターは?

T: 面白いことを聞くね。というのも…今何歳?

V: 44歳。

T: なるほど。ということはスケートシーンが分断されていた時代を知っているということだよね。

V: 特に'90年代はそうだよね。

T: その通り。テクなスケーターがいて、ヘッシュなヤツがいて。プールやバーチカルもいた。このようにカテゴライズされて交わることがなかった。でもオレにとってのスケートとはただスケートするということ。ディッチ、プール、カーブ、レッジ、なんでもいい。スケートすればいいんだ。マーク・ゴンザレスを見てみろよ。ダン・ドレホブル、フィル・シャオ、カーディエル、TNT…。ヤツらこそ生粋のスケートボーダーだ。

V: ジャンルは関係ないと。

T: そう。当時の風潮は好きになれなかった。スケート業界での最後の仕事がSkateboarderのフォトエディターだったんだけど、マジで当時のシーンが嫌いだった。くだらない。今が完璧とは言わないけど、少なくともエヴァン・スミスのようなスケーターがいる。ヤツは誰にどう思われようとまったく気にしない。ウォーリーをしたり、Kグラインドをしたり、気が向くままに攻めている。それが美しい。それがオレにとってのスケートであり、今はジャンルなんて関係なくなっている。そんなタイプのスケーターが本作に登場している。みんな互いの滑りに刺激されまくっていた。集まって最高の瞬間を過ごせることを喜んでいた。エヴァン・スミスこそ最高のスケーターだと思う。

V: 完成までにいろんなミッションに出掛けたわけだけど、中でも印象的だったのは?

T: 一番気に入っているのは最初のシーンだね。

V: 車にトランジションをつけたシーンだよね。あれは誰のアイデアだったの?

T: オレだね。

V: ロケーションは? 荒野の真っただ中みたいだったけど。

T: 人が住んでいるスラブシティという場所があるんだ。メキシコの国境線近くのソルトン湖の界隈。まずはそこに行ったんだけど、みんなドラッグに溺れていて変な感じだった。こんな連中と2日も過ごせないということになって移動することにしたんだ。そこでアル・パータネンの知り合いがメキシコ国境近くのディッチの場所を教えてくれたんだ。そこに向かって車を停めて、トランジションを作って、2日間キャンプをしながら滑り倒した。クレイジーなスケーティングってわけじゃないけど最高のヴァイブスだった。そしてクオーターパイプを車から離してスパインにしてさらにセッション。スパインは想定外だった。移動しようと思ったら「スパインになるじゃねぇか」って感じだった。

 




友情やコミュニティを象徴する空間を作れたことがうれしくてならない

V: 最高だね。

T: シェーン・オニールとかナイジャ・ヒューストンといったクレイジーなスケーターは心からリスペクトしている。マジで最高のスケーターだと思う。でも友情やコミュニティを象徴する空間を作れたことがうれしくてならない。スキルに関して言えば、すべてが進化し続ける。これからもさらに凄いことになっていくだろう。でもその類は世界中のスケーターの1%未満にすぎない。ほとんどのスケーターの目的は楽しむことなんだ。

V: 16mmで撮影すると音声を記録することはできない。ということは作品で聴こえるのは音楽だけだよね。現場音がないにもかかわらずスケーターの感情がしっかりと伝わってきたのは流石だと思った。

T: それは緊張感があるからだと思う。オレの作品はそういうものが多い。スケートの現場音があるとその世界観は現実に近い。それにオレは普通のスピードで撮ることはまずないんだ。スローモーションや早送りで撮ることが多い。使用する音源が良ければ緊張感を保つことができる。あとは編集のやり方。気がついたかわからないけど、すべてのシーンがフェイドアウトしているんだ。ハードカットはひとつもなし。すべてのシーンが溶け合っている。だから夢のような世界観になるんだ。

V: 本作の音源はNo Ageというバンドが即興で演奏したって聞いたけど?

T: そうだね、すべて即興。昨年の夏にフランスで開催した試写会では、映像に合わせて即興プレイをしたんだ。ハヴィエル・メンディザバルが試写会を実現させてくれた。ヤツはフランスのQuiksilverのスタッフでもあるんだけど、スタジオを所有していたから試写会本番の前日に練習することになった。そこで映像を観ながら即興でプレイした。その日の演奏を完成版に使う予定じゃなかったんだけどいい感じだった。それから帰国して編集を仕上げたんだ。帰国してからもNo Ageと4日間通して最初から終わりまでレコーディングを行った。それとフランスの即興の録音を組み合わせた感じかな。

V: 1時間もある作品なのに長く感じなかった。最近の作品は短いものが主流だから。

T: オレには関係ないんだ。集中力が続かないヤツなんてクソ喰らえだ。集中力のない人間に向けて作品を作っているわけじゃないから。オレは作りたいものを作っている。もっと短くもなっただろうし、長くもなっただろう。でもこの尺がオレにとって完成だったんだ。気に入ってもらえればうれしいよ。気に入らなければ…どうでもいい。わかるだろう?

V: でも「よし、20分撮れた。これで十分」って思う瞬間はなかったの? 「これで完成」と思えるのはどんな瞬間?

T: ざっくり完成に向けたスケジュールがあったから。それに撮影で使った2台の車がずっと庭に置きっぱなしで妻が「この汚い車はいつになったら無くなるんだよ」って怒っていたから(笑)。それに対して「もうすぐ終わる。スマッシュアップダービーを撮る日が決まれば終わりだ」ってずっと説得していた。すると「はい、はい」って…。彼女もスケーターで映像作家でもあるから理解してくれるんだ。でも「そろそろ小汚い車をどけろよな」ってずっと言われていた。だから完成図はずっと頭にあったんだ。

 


完成した作品がすべてとは思わない。大切なのはそのプロセス

V: 初期に撮ったのはどのシーン?

T: 中盤のシーン。ジャージーバリアでニック・ガルシアがバックテールをトライしてぶちコケるシーン。7年前だからコリン・プロヴォストもエヴァン・スミスもまだ若かった。だから中盤のシーンだね。車にトランジションをつけたシーンはその4年後くらいかな。

V: 本作で一番うれしかったのは?

T: オレは完成した作品がすべてとは思わないんだ。大切なのはそのプロセス。シリアスなプロジェクトじゃないからみんな心から楽しんでくれた。最高のスケーティングで魅せてくれたけど、大切なのは楽しむことだった。本当に楽しい撮影ばかりだった。それが一番だね。

V: 本作を観て何を感じてほしい?

T: そうだな…。好きなように感じてくれればいいよ。アートとは自分が観ているものや繋がりを感じるものがもたらす体験そのものだから。だから興味深い体験となればうれしい。物事に対する感じ方は押し付けるべきものじゃないから。

V: では本作はどこで観ることができる?

T: まずは世界中で試写会を開催して、本作のダウンロードのコードがついた作品集がリリースされる予定。だから今のところは試写会もしくは作品集を通してかな。作品集が完売したらいずれオンラインで解禁すると思う。お楽しみに。

 









 

Thomas Campbell

カリフォルニアを拠点に活動するビジュアルアーティスト。'90年代にはフォトグラファーや映像作家としてスケート業界に携わり、“A Love Supreme”をはじめとする作品を手掛ける。最新作『YE OLDE DESTRUCTION』のストリーミングコードつき作品集はUM YEAH ARTSの公式サイトにて購入可能。
@thomascampbellart

 

  • PRIME
  • STANCE