初めまして。普段はスケシューを中心に紹介する動画を制作しているFricks Kicksと申します。これまでは1足のスケシューにフォーカスし、背景情報やディテールを深掘りするスタイルで発信してきました。ただ、動画ではなく文章だからこそ俯瞰で語れるスケシューの面白さも数多くあります。そのような内容を記事として執筆させていただくことになりました。ここからは、その第1回として取り上げるテーマについて触れていきたいと思います。
2025年10月にDGKからジョシュ・ケイリスのプロ30周年を記念したデッキと映像が発表されました。
30年という長いプロのキャリアを誇るケイリスですが、彼にとって一番長いスポンサーはDC。'90年代半ばからフロウライダーになり、'97年に正式にチームの一員として迎え入れられ、今なお現役で活躍しています。 そこで、今回はケイリスのスケシュー遍歴をおさらい。
まずDC以前の話から。ケイリスは12歳でスケートボードを始め、そこで初めてスケートシューズの存在を知ります。そして初めて履いたスケシューがVisionのSuede High Top Sneaker Oxbloodだったとか。その後は分かりやすくプロスケーターの影響を受けることになります。マット・ヘンズリーの影響でVansのChukka Bootを履いたり、マイク・キャロルの影響でAirwalkではずっとEnigmaを愛用していたそうです。
やがてケイリスが頭角を現すようになってきて、初めて雑誌に掲載された1994年のInvisibleのAdではPuma Suedeを着用しています。この時にはまだシューズスポンサーはなく、Dukes、Vans、Duffs、etnies、adidasなどから送られてくるシューズを履いていました。そのため、当時はブランドの縛りなくさまざまなシューズを履いてメディアに露出していました。
TransWorld SKATEboarding 1995年11月号の表紙はadidasのSuperstarを着用。
TransWorld SKATEboarding 1995年12月号のAlien WorkshopのAdではDukesを着用。
TransWorld SKATEboarding 1995年12月号のTransworldグッズのAdではVans Half Cabを着用。
Toy Machine『Heavy Metal』（'95）では主にetniesのSal 23を着用。
そんな最中、adidasのAdに出ることになり、正式にadidasからサポートを受けることに。それがTransWorld SKATEboarding 1996年5月号に掲載されたadidasの広告。この広告は当時開催されたトレードショー会場の天井から6mほどの巨大広告として吊るされており、DCのメンツがそれをいじって笑っていたのが恥ずかしかったと本人が語っています。そして、それをきっかけにadidasから離れることを決意。
※おそらく当時の他のインデペンデントなブランドの雰囲気とは違い、adidasという大企業がど派手な広告を出している感じが場違いで浮いていたのだと推測されます。ちなみにこの広告に載っているadidas O’Reardonというシューズは2017年にPalaceとのコラボで復刻されています。
その後ついにフロウとしてDCとの関係が始まります。後にシグネチャーがリリースされるまではさまざまなモデル（上記写真はHoward 1）を着用しますが、ここでは主にシグネチャーシューズについてまとめてみたいと思います。
まず1998年にLynxが発売。こちらは完全なシグネチャーシューズではありませんが、2018年にLynx OGとして復刻する際、プレスリリースに「ジョシュ・ケイリスとブライアン・ウェニングのプロモデル」と紹介されていたモデルです。 TransWorld SKATEboarding『Sixth Sense』やZoo York『Peep This』のビデオでは主にこちらを着用しています。
2000年には1stシグネチャーシューズにあたるKalisが発売。同年発売のAlien Workshop『Photosynthesis』のビデオでは主にこちらのモデルを着用しています。このKalisと前段のLynxはケイリスにとって最高のスケートシューズだそうです。
2001年には2ndシグネチャーのTruthが発売。DC初のフルレングスビデオ『The DC Video』では主にこのモデルを着用しています。こちらも1stとともに人気が高く、2023年には復刻されさまざまなカラーウェイがリリースされました。
2003年に3rdシグネチャーのProofが発売。ここからのシグネチャーシューズはまだ未復刻のモデル。この辺りからは比較的シンプルなVansやLakaiのStaple、éSのAccelなどの人気が急上昇。Nike SBも徐々に浸透し、DCにとっては苦しい時期に入った影響が大きいのかもしれません。
2004年に4thシグネチャーのVerdictが発売。こちらのモデルはマーケティングなどの関係でボリューム感などを好みにできず、ケイリスにとって過去最悪のシューズだったとか。しかしこのプロモーションとして撮影したLOVE Parkでのノーズブラントスライドは歴代のなかで一番のお気に入り写真とのこと。
2005年に5thシグネチャーのCauseが発売。この辺りからはWeb上にもあまり情報の出てこない不毛な時期。
2006年に6thシグネチャーのJK6が発売。ケイリスを象徴するJK + ナンバリングというフォーマットの命名規則と現在でも使用されているJKのロゴがこのJK6で誕生。 Alien Workshop『Kalis in Mono』で前段のCauseとこちらのJK6を着用しています。
2007年に7thシグネチャーのJK7が発売。 こちらはAlien Workshop『Mind Field』で着用。そして、これ以後シグネチャーモデルの発売ペースが鈍化することに。
約3年ぶりに8thシグネチャー、JK8が2010年に発売。DGK30周年の動画のサムネイルになっているサンフランシスコ図書館のギャップでのフェイキーフリップではこちらのJK8を履いています。
2012年に9thシグネチャーのCentric Sが発売。クリス・コールやナイジャ・ヒューストン、マイク・モーを筆頭に人気ライダーが揃い、DCの人気も再び上がってきて注目度も高くなってきたタイミングでのモデル。 DGK『Parental Advisory』では前段のJK8とこちらのCentric Sを履いています。
10thシグネチャーのWolf Sを2015年にリリース。10作目という節目に一区切りがつき、何作目と言われるようなモデルは今のところこれが最後のモデルになります。『Sabotage 4』ではこちらを着用しています。
以降は過去作のアップデート版が複数リリースされています。1stシグネチャーシューズの軽量版であるKalis Liteが2016年に発売。
2019年に1stシグネチャーを現代版にアップデートしたKalis Sがリリース。
2020年に1stシグネチャーのヴァルカナイズドソールモデルのKalis Vulc。
2022年に1stシグネチャーのアッパーにLynxのソールを合体させたKalynx。
2023年にKalis LiteのアッパーにLynx Zeroのソールを合体させたKalynx Zero。
2024年に2ndシグネチャーを現代版にアップデートしたAscend。今現在はすべてのシューズの中で、このAscendが一番調子のいいモデルとのこと。
そしてこれからはと言うと、2027年発売に向けて待望の完全新作を目下開発中らしいです。完全な新作としては2015年の10thシグネチャーから10年以上ぶりとなる最新作。果たしてどのようなモデルが登場するのか…？ 今から楽しみで仕方がありません。
最後に、上記のいくつかのモデルで筆者の詳細解説動画もあります。下記に貼り付けておくので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
FRICKS KICKS
苦節8年、YouTubeにオリジナル動画100本超で総再生約40万回と超低空飛行中。
