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パンデミックパニック
──第24回:ニューノーマル

2020.05.20

[ JAPANESE / ENGLISH ]

 
 2020年5月。現在、世界は新型コロナによるパンデミックに見舞われ、ウイルスの拡散を防ぐためにほとんどの国で自宅待機が余儀なくされている。このコラムを執筆している時点で、450万人以上の感染者が確認されており、死者数は30万人を突破。しかしPCR検査の少なさや報告漏れなどによって、実際の被害の規模がどれくらいなのか想像すらできない。さらに現時点での有効な予防策は社会的距離を保つことくらいしかなく、資質に欠ける世界のリーダーたちは失業者の急増に伴い、どうにかして経済を持ち直そうと躍起になっている。危険な消毒剤の注射を勧めたり、安全や効力に関する科学的証拠がなく副作用として胎児に奇形を起こす危険性のあるを販売しようとしたり。ウイルスが問題ないと主張したり、ジョージ・オーウェルが近未来小説『1984年』で描いた全体主義社会を彷彿とさせるスマホのアプリで人の行動を追跡したり。
 COVID-19による危機をテーマにした小説があるとすれば、現段階の我々が住んでいるのはおそらく第1章の世界。ワクチンが開発され集団免疫の獲得ができるまでは(最低でも1年以上はかかるだろう)、都市封鎖を繰り返したり、先の見えない未来に向けて状況に順応しながらみんなで安全に暮らす術を模索したりするしかないだろう。たとえばプラスチックのボトルを頭にかぶって通勤したり、二度と他人に触らなかったり。クソみたいな状況だが、考え方によっては実におもしろい時代を生きていると言えるじゃないか。

 ありがたいことに今は彼女と一緒に住む自宅で仕事をすることができている。自宅待機してもう2ヵ月。キッチンテーブルで仕事をし、週1ペースでひとりスケートをしていると(ひとりだとキックアウトがさらに惨めに感じる)、どうしても自分と向き合わざるを得ない。オフィスでの仕事、終わりのない酒盛り、週末のパーティから身を引くことができたのはいいことだが、Netflix鑑賞や読書しかすることがない部屋にこもって1ヵ月もすれば、かつて「普通」と思っていた自分の考え方が自己中心的だったと思えるようになる。これはオレだけではないだろう。オレの周りの人間も同じくクソ野郎だ。いずれにしろ、オレたちはいずれ崩壊する持続不可能で傲慢な生活を送ってきたのだ。これまでの常識は常識ではなくなり、多くの人にとって物事の優先順位にも変化があったことだと思う。人の過ちを許せるようになったり、人を嫌うことに時間やエネルギーを使わないようになったりしただろう。人のエゴを抑制するためにも、強制的な自宅待機を年に一度行うのも悪くないかもしれない。
 パンデミックはさまざまな形でオレたちに影響を与えている。オレはこのような典型的なパターンを経験したと思う。拒絶→非難→パニック→陰謀論モード→最終的な受容。その他の比較的まともな仲間たちは完全な5G陰謀論者になったり、ビル・ゲイツがウイルスを撒き散らした悪の根源であり(長年、発展途上国を支援してきた人なのに)、追跡チップを体内に埋め込みワクチンを売ることで地球を支配しようとしていると思い込んだりしている。ビルがコロナデビルではないという証拠はまったくないが、彼の活動を見てみるとその可能性は極めて低いと思われる。オレの彼女でさえ「Illuminati」を逆さに綴ってGoogle検索することを勧めたことがあったくらいだ。自分が信じる仮説の真偽をインターネットで調べる際に、それを支持する情報ばかりを集めてしまう確証バイアスという現象も起きている。ありとあらゆる仮説がインターネット上に溢れているため、結局、人はおかしな情報を信じてしまう。または利益を得るために他人が作った情報に流されてしまう。現時点で確認できるCOVID-19に関する情報は意味不明なものばかりのように思える。もしも巷に溢れる陰謀説を信じるのであれば、医者も科学者もメディアもみんなオレたちを騙そうとしていることになってしまう。人が簡単に科学的根拠を忘れて知り合いでもない人間が作ったドキュメンタリーを盲信したり、人の健康よりも金銭的利益を優先する億万長者の言葉を信じてしまうのは驚きだ(イーロン・マスクが「子供は本質的に免疫力がある」とTwitterでリプライした)。

 誰もこの先どうなるかわからないし、もしかしたらこれは孤独によって引き起こされた甘くポジティブすぎる考えかもしれないが、少なくともスケートボードは今回の危機に潰されることなく、他のスポーツよりも優位に立っていると思う。チームスポーツの未来が問われている今、スケートボードは人と接触せず外の新鮮な空気の中でひとり楽しむことができる個人スポーツとして際立っているのだ。もしかしたら皮肉にもスケートボードが最も安全なスポーツとして認められる日が来るかもしれない。社会的距離を保つために巨大なスケートパークの建設が求められ、スケートボードが普及することによって一般大衆によるストリートスケートの見方も変わらざるを得ないかもしれない。フィッシュアイでの撮影は禁止されることになるかもしれないが、そうなればロングショットで撮ればいい。変化と順応が求められても、オレたちには深く根ざしたカルチャーがある。業界を活性化させるために協力し合うことができる。スケートボードは必ず生き残ることができるはずだ。


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