
人と違った視点を持つスケーターの代表格といえば? マーク・ゴンザレスがその類として広く知られていますが、決して忘れてならないのがニール・ブレンダー。
'80年代のコンテストでラン中に突然ポケットからスプレー缶を取り出し、セクションに絵を描き始めたスケーターと言えばピンと来るかもしれません。物事をシリアスに捉えすぎず、スケートでクリエイティブな発想を表現してきた人。ゲイツイストの名付け親でもあります(バーチカルでのキャバレリアルのミュートグラブ。グラブするのは「ゲイ=ダサい」という意味が込められていた)。リーンエアーもこの人のトリック。シグネチャーモデルのボードグラフィックを自分自身で手掛けたプロスケーターの草分け。カリフォルニアにスケートインダストリーが集中した時代に、敢えてオハイオ州を拠点にAlien Workshopを始めたファウンダーのひとり。さらにはノーズを初めて活用した人としても知られています。それもほとんどデッキにノーズがなかった'80年代。そんな時代にミニランプやカーブでノーズストールをしていたブレンダーに触発され、ゴンズがノーズスライドを発案するに至ったという逸話もあるほど。
要は誰よりもクリエイティブなマインドの持ち主。スケーターとしても、アーティストとしても、ゴンズの先を行っていた人。音楽もやっていたし(Dinosaur Jr.のJ・マスキスと親交が深い)、スケート誌で連載を担当し写真を撮ったりコラムやショートストーリーの執筆も行っていました。時代の先を走り、スケートのクリエイティブな核の部分を築いた重要人物。用意されたレールの上でスキルを競うのではなく、レールそのものを敷いた人なのであります。実に<考える>スケーターの原点。ニール・ブレンダーなくして現在のスケートを語ることはできません。
数々の功績を残してきたにもかかわらず、表舞台に出ようとしないところも個人的にツボ。名声なんぞ興味なし。感覚のみで気の向く方向に進むだけ。現在は極細のスラロームデッキでルーツに立ち返り、スケートボードの曲がり方をマイペースに追求しているようです。まあ、こんなコラムで簡単に説明できるような人ではありませんが、とにかくスケートのクリエイティブな側面を大切にするスケーターなら絶対に知っておくべき偉大な人です。
--MK