ほぼすべての場合において、それが路上の天然物でもスケートパークでも、基本的にスポットにはもれなく名前が与えられています。もちろん名前がないとそれを探すことも見つけることもできないので、名付けることによって初めてそれは実在するものとして認知され、やがてはその名前がその場所の個性を体言し、最終的にそこは他の場所とは交換不能なかけがえのないスポットとしてその存在を確立するのであります。
そしてこのスポットの名前というものも実にさまざまな背景を持って与えられるものであり、この名前からそれこそスケーターにしか理解できないようなそのスポットの成り立ちや、それにまつわるストーリーなんかがあったりするのでこれもまたスケートの魅力を語る上で外すことのできない要素のひとつです。
このスポット名、基本的には地名や隣接する通り名がそのままその名前になっていることが多く、スクールヤード内のスポットなんかはほとんどがその校名であることが多いし、いわゆるスケートパークやランプもこのパターンが多いです。そしてこのパターンに当てはまらないネーミングを持つスポット、それは得てして面白いストーリーを持ってその名前を与えられています。例えばSFのハバハイドアウト。ハバ(※スラングでドラッグの一種であるクラック)+ハイドアウト(※隠れ家)。このスポットは文字通り、ホームレスやならず者が隠れてドラッグをキメる場所という意味で命名されたのですが、近隣のスポットでキックアウトを食らったスケーターたちが逃げ込むところとしても知られ、スケート世界遺産に登録された好例です。あるいはまた誰かの伝説的なトライが神格化されそのままそのスポット名に昇華されるパターン。カーディエルの名を与えられたレッジとレールは言わずもがなジョン・カーディエルの偉業に対するスケーターたちの畏敬の念がそこに込められたスポット名なのであります。
で、このあいだ最近気になっていたスポットを調べる機会がありその名前を探ると、なんとそのスポット名は「FLOWER SHOP」、そうです、女児が憧れる職業ランキングにおいていまだ不動の地位を四半世紀の長きに渡りキープしているお花屋さんです。こんなラブリーな名前が与えられたスポット、さぞかし優雅で平和的な物件と思いきや、これがまたエグいのなんの。もうはっきり言って突っ込んでいくのが罰ゲームみたいに立ちはだかるトランジションの上に乱暴に描かれた「FLOWER SHOP」のグラフィティはあまりにシュール過ぎて、このDIYスポットを設営したローカルスケーターのセンスにいろんな意味で脱帽です。
─Takayuki Hagiwara(FatBros)