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その板、泣いてるぞ
──雨ざらし

2025.05.30

 初めてスケートボードを手にしたのは2000年の5月だったと記憶しています。なので自分は四半世紀にわたってこの謎の乗り物と人生を共にしてきたこととなります。はじめはショッピングセンターなどで売られているいわゆるパチモンの板、さらには情報もゼロからのスタートだったので、当時の主流とはかけ離れた10インチはありそうな'80sタイプのビッグシット。嬉々としてスケボーデビューし、自分をスケートに誘ってくれた仲間たちといざ合流すると、そんな時代錯誤のしかもスーパー劣化版の板を持っているもんだから笑われてしまい、初っ端から出鼻をくじかれたっていう苦い思い出。次第にスケートに打ち込み、ギアのあれこれを取り替えていくなかでそんな板もすぐに不用となり処分してしまったのが今となっては悔やまれます。それはそれで残しておきゃよかったなと。
 本当に始めたばかりの頃ってのはまるで知識がないので、板を持って出かけるもゲリラ豪雨に見舞われ、なす術もなく雨の中をプッシュで移動したりもしたわけですが、当然ながら翌日にはベアリングが悲惨な状態になっており、ただでさえ粗悪なそれはまったく回らないという状況にガクブル。サラダ油を注入してどうにか一命をとりとめたってこともありました。そこで知るわけです、「コイツの扱いには丁寧さが求められるのだ」と。以来、板のメンテナンスに関しては割とマメな方。面倒な作業でもありつつ、板と向き合ういい時間だったりもします。そんな思い出もあり、雑に扱われ、雨ざらしになっている板を見るとちょっとだけ心が痛みます。「この板も、もういくらかいい状態でいられたはず。もう少しその持ち主のスケート的進化に携われたはず」と。
 先日ですが僕の仕事の作業場でもあるAxis Skateparkに、高校生くらいのビギナーふたり組がやってきました。彼らは外回りから帰ってきたばかりの自分とほぼ入れ違いで地元に帰っていったのですが、どうやらチャリで1時間ぐらいかけてきたらしい。そして彼らの背中とバックパックの間には使用済みの、それも雨晒しで転がってたような板が4、5本。ローカルのおじさんに「持ってけよ」って勧められたらしく、僕らから見たらもうどうしようもないような板をとても嬉しそうに持って帰る姿は実に微笑ましいものでした。そんな重たくしてチャリで遠くに帰るってだけでなかなかのヘビーな作業に違いないのですが、きっとこういう出来事って後々まで彼らの思い出になることなのだろう。そんなヤツらが長くスケートを続けてくれるのがイチバンだぜ。

—Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 



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