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独裁国家の闇
──ザ・ディシデント

2021.02.09

 先日、骨太なドキュメンタリー映画『イカルス』を観ました。オリンピックにおけるロシアのドーピング問題を暴いた2017年公開の衝撃作。2014年のソチオリンピックでも発表された通り、この国は国家主導でドーピングを行っていました。つまり検査に回されるアスリートの尿をすり替えるなどして、国ぐるみで不正を行っていたわけ。その内情を告発したロシアの反ドーピング機関所長は現在アメリカに亡命中。ロシア当局に暗殺されないよう米政府に身辺を守られています。ちなみに本作がアカデミー賞に輝き世界中で話題となったことでロシアはオリンピックから締め出されることとなりました。これはドキュメンタリー映画の持つ多大な影響力を噛みしめた瞬間でもありました。
 そして昨年、同作を手掛けた監督ブライアン・フォーゲルの新作『ザ・ディシデント』(反体制派という意味)が完成。日本に上陸していないのでまだ観れていませんが、今回テーマとなったのは2018年にトルコで殺害されたサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ。彼はフィアンセとの結婚書類を取りにサウジ領事館に入ったまま行方不明になったのですが、政府批判を繰り返していたことが理由でサウジ皇太子に消されたとされています。本作ではトルコ当局、カショギの元フィアンセ、そしてカショギと手を組んでいた反体制派の協力を得ながら事件の闇に光が当てられているようです。監督のインタビューなどをチェックすると、ここではとても書けないような残忍な手口が盛りだくさん…。
 このドキュメンタリー映画が事件解明のきっかけになるかもと期待が集まっているようです。ただしサウジアラビアは世界最大の石油輸出国。そんな国を批判するような作品は簡単には配給してもらえません。前作『イカルス』がアカデミー賞に輝き、今回も映画祭で鳴り止まないスタンディングオベーションを巻き起こしたにも関わらず、手を上げた配給会社は皆無。あのNetflixでさえ敬遠。サウジから多額の投資を受けていたり、安全を脅かすリスクがあるとしてほぼ黙殺状態が続いています。ということで現在はアメリカ国内限定のオンラインレンタル・販売しか行われておりません。
 鶴の一声で何でもまかり通る中東の独裁国家のゾッとするような現実だけでなく、言論・報道の自由についても考えさせられる作品。もしかしたら日本に入ってくることは永遠にないかもしれませんが、何よりもいま一番観たい映画です。

--MK

 



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