ADIDAS SKATEBOARDING

ヨーロッパを代表するストリートスケーターのひとり、Deedzことディドリック・ガラッソ。ユニークなトリックセレクションから荒れた路面をものともしない独特のラインまで、その滑りには一目で彼とわかる個性がある。enjoiを離れ、ノルウェーからリスボンへ移住したDeedzは、自身のインディブランドBermuda 1383をスタート。ブランドを立ち上げた経緯からリスボンでの暮らし、そして街に広がる荒々しい石畳との付き合い方まで話を聞いた。
──DIDRIK GALASSO / ディドリック・ガラッソ

2026.10.09

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Special thanks_Norm Skate Distribution

VHSMAG(以下VM): 今日はどこにいるの?

Didrik Galasso(以下DG): 今はリスボン。のんびりしてるよ。

VM: もともとはノルウェー出身だよね。自分のルーツと、リスボンに移住した経緯を教えて。

DG: ノルウェーのラルヴィクっていう小さな町の出身。オスロから南へ1時間半くらいかな。母親はその辺りの出身で、父親はブラジルのサンパウロ出身。ノルウェーで育ったけど、昔からよく旅はしてた。コロナ前は、週末になると安いフライトでリスボンに来て、ビーチで過ごしたりタイナン(・コスタ)と滑ったりしてた。ずっと「いつかここに住みたい」って思ってたんだ。それで2022年頃、コロナが落ち着いたタイミングで、経済的にも精神的にもそろそろ移住できると思って引っ越してきた。ヨーロッパにいながら、ブラジルに近い感覚でいられる場所でもあるしね。ポルトガル語を使い続けられるのもいい。

VM: ノルウェーと比べて、リスボンのスケートシーンはどう?

DG: 最高だよ。いいスケートショップもあるし、いいパークもどんどん増えてる。かなりオープンなシーンで、いろんなクルーやフィルマーがいるんだ。いつもの仲間が滑ってなくても、他の仲間のところに行けば誰かしらとセッションできる。そういうところもすごくいい。

VM: これまでかなりの数のビデオパートを出してるけど、身近にフィルマーが多いことも、コンスタントに映像を残せている理由のひとつ?

DG: 間違いなくそう。今は主にテルモってヤツと撮っていて、Bermudaの最新パートである"Primary Colors"も彼が撮ってくれた。家から10分くらいのところに住んでるんだ。数年前のNikeのツアーで一緒になって気が合った感じ。逆方向に15分くらい行けば、タイナンを撮ってるガリもいる。オレにとって撮影は結局信頼関係なんだよ。自分のことをちゃんとわかってくれている相手と撮るのがいいんだ。「今ちゃんと撮ってる?」なんていちいち確認しなくても、任せておけば大丈夫だと思える関係がいい。

VM: Bermuda 1383について聞かせて。enjoiを離れた後に他のブランドからもオファーがあったそうだけど、それでも自分でブランドを始めようと思ったのはなぜ?

DG: 正直、そこにたどり着くまで2年くらいかかった。いくつかオファーもあって、3〜4社くらいは本当に乗りたいと思えるブランドだった。でも同時に、今はマーケットが飽和していて、昔ほどブランド側からスケーターに声をかける時代じゃなくなってるようにも感じてた。enjoiでは自分のプロモデルも出してもらっていたから、これからもスケートやグラフィックを通して自分を表現したいという気持ちはあった。でもずっと迷ってたんだ。「オレなんかがやるべきなのか?」とか、「そもそもボードブランドを始めていいのか?」とか。

VM: 実際にやろうと思えたきっかけは?

DG: Epicly Later'dのエピソードを撮っていたとき。カメラが回ってないところで、パトリック・オデルとヒース・カーチャートが何度も「お前はデッキブランドを始めたほうがいい。とにかくやれよ」って言ってくれたんだ。たぶんオレの仕事の仕方とか、生き方を見てそう思ってくれたんだと思う。ヒースやパトリックみたいな人たちに直接そう言われて、自分のなかで何かが変わった。「もうやってしまえばいい。失うものもないし、とりあえず挑戦してみよう」って。あれが最後のひと押しになったね。


 

VM: デッキの生産はどうやって始めたの?

DG: あれは本当に行き当たりばったりだった(笑)。メーカーとのコネクションが何もなかったから、ある朝起きて、いきなりInstagramでエリック・エリントンに電話したんだ。そしたら本当に出てくれて(笑)。「そちらで作ってるデッキが好きなんだけど、ウッドを売ってもらえない?」って聞いたら、「直接売ることはできないけど、BBSを紹介するよ。そこから始めればいい」って。それでかなりいい感じで話が進んで、そのままBBSにつないでくれた。エリントンとはそれまで会ったことも話したこともなかった。でもなぜか、「電話するならこの人だ」って思ったんだ。

VM: Bermudaという名前にした理由は? 1383にも意味があるんだよね?

DG: Bermudaっていう名前は、かなり前からずっと頭に残ってた。RVCAのライダーだった頃、ロングビーチのチェリーアベニューの近くに住んでいたブランドン・ジェンセンの家によく泊まってたんだ。『Beware of Squatch』を撮ったフィルマー。そこで毎日のようにバミューダストリートっていう通りを車で通ってた。その名前の響きがすごく好きだったんだ。昔から存在しているブランドみたいに聞こえるというか。それにバミューダトライアングルのミステリアスな感じも好きだった。船が消えたり、どこかに迷い込んだりするようなイメージ。自分自身も頭の中で迷子になって、そこからまた道を探して戻ってくるようなことがあったから、そういう部分とも重なったんだと思う。

VM: 1383は?

DG: Archaicっていう古代ギリシャ語が元になっていて、大まかには「古風な」とか、ミステリアスでタイムレスな感じの意味。クラシックな響きのある、ふたつの要素を組み合わせた名前にしたかったんだ。それで文字を数字に置き換えてみた。Aが1、Cが3、Hが8、Cが3。それで1383。さらにそれをローマ数字にしてMCCCLXXXIIIにした。あの荒々しくて、時代に左右されない感じが好きなんだよ。

VM: Bermudaを始めたとき、外部の投資家や企業のバックアップが入っていないことを強調していたよね。完全にインディーズであることは、なぜそこまで重要だった?

DG: 本当に何もないところから始めたから。それが一番かな。誰にも言わなかったし、誰かに助けを求めることもしなかった。実物のサンプルが手元に届くまでは、仲のいい友達にも話してなかったくらい。自分でやっているから、グラフィックも作れるし、生地も選べる。フーディやパンツ、Tシャツもゼロからデザインできる。その代わり、ビジネスの部分を全部ひとりでやるのは大変だけどね。スケートショップにメールして、ディストリビューションのことをやって、税金関係の支払いをして、表には出ない細かい仕事も全部やらなきゃいけない。「今日はハンドレールをグラインドしに行くから、メールは明日返そう」みたいな日もある(笑)。でも昔のスケーターがやっていたブランドは、そういうものだったと思う。だから、その感じは残しておきたいんだ。

VM: 服もデッキのシェイプもオリジナルなんだよね。本当に全部ゼロから作ってるの?

DG: そう。服はポルトガルにいるミレナっていう人と一緒にやっていて、彼女が現地の工場と直接つないでくれてる。既製品の無地Teeにプリントしてるだけじゃなくて、生地の厚さ、フィット、身幅、縫い目の位置まで、フーディもTeeも全部細かく調整してる。デッキも自分が欲しかったのは特殊なハイブリッドシェイプだったから、BBSと直接やり取りして専用の型を作ってもらった。かなり手間はかかるけど、クオリティを全部自分でコントロールできるから、それだけの価値はあるよ。

VM: Bermudaのチームについて、長期的なイメージは?

DG: 夢はちゃんとしたチームを作って、最終的にはBermudaから仲間にお金を払って滑ってもらえるようになること。でも、ひとつの決まりきったブランドイメージにはしたくないんだ。もっとコレクティブみたいな感じにしたい。Bermudaが真ん中にあって、そこから三角形みたいにいろんな方向へ広がっていくイメージ。ライダーがパンクっぽいグラフィックをやりたいとか、自分で絵を描きたいって言うなら、100%自由にやってほしい。チームのスケーター全員が、自分が着ているものや乗っているデッキを本当に気に入っていてほしいんだ。

VM: 最近、Bermudaとして初のビデオパート"Primary Colors(※原色という意味)"を公開したけど、タイトルにはどんな意味があるの? 特に気に入っているクリップは?

DG: “Primary Colors”にしたのは、原色がすべての色を作る土台になるものだから。パートはテルモと3ヵ月くらいで撮ったんだけど、プロジェクト全体がすごく自然で、プレッシャーもほとんどなかった。自分ではカーブしたレッジでのバックテールと、フロントノーズスライドが特に気に入ってる。カーブしたレッジは難しいし、フロントノーズスライドは昨年覚えたばかりだったから、メイクできたときはうれしかったね。


 

VM: ポルトガルのストリートで滑る以上、石畳は避けて通れないよね。あの荒れた路面は、スポットやトリック選びにどう影響している?

DG: 別にわざと選んでるわけじゃないけど、ポルトガルでは石畳が「国民的路面」みたいなものだから(笑)。ここには、ずっと誰にも滑られてこなかったスポットが本当にたくさんある。単純に石畳が荒すぎて、みんな避けてきたんだ。石は砂を挟みながらひとつずつ手作業で敷かれているから、何回かトライしてるうちにウィールの下で石が動いたりもする。オーリーとか50-50みたいに真っすぐ入るトリックならまだ大丈夫。でもバックサイド180やテールスライドみたいに、スクープする動きが入るとウィールが隙間に引っかかるから、かなりストレスが溜まる(笑)。ただ、映像で見る石畳がいい感じなんだよ。荒々しく見えるし、スピードも出て見える。それにブラジルの父親の家の前も荒い石畳で、ガキの頃からそこで滑っていた。だから不思議と自分には馴染みがあるんだ。

VM: 荒い路面といえば、Epicly Later'dでパトリック・オデルが、フロントにソフトウィール、リアにハードウィールを付ける独特なセッティングについて話してたよね。どうしてそうなったの?

DG: (笑)それ、DMでもめちゃくちゃ聞かれるよ。少し前から、荒れた石畳の衝撃を吸収するためにソフトウィールを使い始めたんだ。でもある日、レッジでフロントブラントをやろうとしたら、ソフトウィールが食いつきすぎて全然ダメだった。もうセッションの途中だったから、とりあえずフロントはソフトのまま、リアだけハードウィールに替えてみた。そしたらメイクできた。それ以来ずっとそのセッティング(笑)。

VM: 実際、普段滑っていてどう機能するの?

DG: 石畳を走るときはフロントウィールが最初に衝撃を受けるから、ソフトウィールが凹凸を吸収してくれる。でもポップしたりスライドしたりするときは、リアのハードウィールが、ハードウィールらしい反発と滑りを出してくれる。それにオレのデッキは、ほぼツインノーズみたいなシェイプなんだ。テールがノーズより1mm短いだけ。だからスポットによって、ソフトウィール側を前にしたいとか、ハードウィール側を前にしたいとかあれば、デッキの前後を入れ替えればいい。変に聞こえると思うけど、これが完璧に機能するんだよ(笑)。

VM: この先数年間を考えたとき、Bermudaが成功したと言えるのはどんな状態?

DG: ブランドが自分たちの力だけで回るようになることかな。シーズンごとにコレクションを出せるくらいの資金があって、自分が昔からリスペクトしてきたブランドと並んでコアなスケートショップに置いてもらえる。チームでスケートトリップに行ったり、ショップデモをやったりできる。そうやって、スケートボードのコアな部分をずっと大切にしていきたい。スケートビデオを作って、旅をする。そういうスケートボードのスピリットを残していきたいんだ。全部ひとりでやるのは怖いけど、そのちょっとした怖さとワクワクがあるからこそ、もっと頑張れる。あとは、いつか東京に行って滑れたら最高だね。
 

Didrik Galasso
@deeddz
bermuda1383.com

ポルトガル・リスボンを拠点に活動するノルウェー出身のプロスケーター。元enjoiプロで、インディーズブランドBermuda 1383の創設者。荒れた石畳のスポットを攻める独自のスタイルでも知られる。

  • MBM Parkbuilders
  • Opera Skateboards