大阪を拠点に活動するスケートクルーDOGGY PISSの中心人物、鉾久泰三。スポットに刻まれる痕跡をマーキングになぞらえる独自の感覚と、仲間とのバイブスだけを頼りに街をヒットしてきた。昨年リリースした『人間バイブス』を軸に、ZOOM越しでも伝わるチルで荒削りな素顔に迫る。
──DOGGY PISS - TAIZO MUKU / 鉾久泰三
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Photos courtesy of DOGGY PISS
VHSMAG(以下V): まずDOGGY PISSというネーミングの由来は?
鉾久泰三(以下T): スポットをヒットするっていう比喩表現っすよね。スケートで残るグラインドとかスライドの跡をマーキングしていくというか。その跡を見たら「ここで何々やってんちゃうん」とか「このスケーターヤバいな」みたいなんが結構分析できたりするみたいな。「この犬優秀やん」ってなる感じで「このスケーター優秀やな」ってわかる。その感じが面白いなっていう表現っすね。クルーは最初から一応4人で。始まって1年経たずにひとりがアメリカに行ってたんすけど、昨年の11月についに帰ってきたんですよ。
V: そもそもそのDOGGY PISSはいつ、どんな感じで結成されたの?
T: 6年前ぐらいかな。ナオヤンくんと撮影に行ったときにハルトと一緒になって。そっから結構仲良くなって、ちょくちょくストリートをヒットする遊びをしとって。ほんで、結構いいのが多かったから「撮った方が面白いかもね」みたいな感じで。
V: じゃあみんな幼馴染とかそんな感じでもなく。
T: 全然そんなじゃないです。
V: でも全員大阪なんよね? それぞれ紹介してもらってもいい?
T: ハルト、カズマ、ソウマと自分。
V: 世間一般的にはスケートがオリンピック競技になってクリーンなイメージがあるけど、あえて「PISS」というワードを採用したのは?
T: 意識は特にしてないすね。そこに対しての意識はゼロ。そこへの敵対心みたいなのもないし。普通に遊びというか。自然な動作というか。普通にスケボー撮ったらやっぱ自分のスケボー見たいし。そしたら撮ってもらった方が面白いみたいな。それが全員が好きやから全員で撮り合ってやってるみたいな感じなんかなと思ってるんすけどね。結構近場で滑ってるヤツらで撮り合っとったら頻繁にそれができるというか。「面白いな」みたいな。
V: 昨年『人間バイブス』をリリースしたけど、タイトルについては?
T: 何を言ってるかわかれへんかもしれへんですけど、バイブスの合う仲間みたいなんってあるじゃないですか。こう同じことに震えれる仲間みたいなイメージで。オレらが「人間バイブス」っていう。揺らすみたいな感じの。電マあるじゃないですか。「人間バイブス」で複数形。「人間の心を揺らしたろうか」っていう話です。そういう感じのイメージですね。
V: オープニングに出てくる、あの「人間バイブス」のグラフィティを描いてたのは?
T: オレの友達ですね。タイトルの「人間バイブス」という文字を書いてくれた人と同じです。
V: ちなみにあの撮影は問題なかったの?
T: 全然大丈夫です。描き終わった後、工事もあってすぐに壁自体がなくなっちゃったみたいな。
V: では撮影中にクルーの間でバイブスが上がった瞬間は?
T: 正直、つねに上がりっぱなしですね(笑)。いつも面白いっすね。「今からフィルミング行くぞ!」って出かけても、結局広場でスケートゲームして盛り上がってそのまま帰ることも全然あるし。「寒いな。無理やわ。帰るぞ。メシ行くぞ」みたいなこととかもあるし。その場のバイブスに身は任せてるすね。
V: 夜のクリップが多いけど、それは大阪の街の環境や仕事との兼ね合いから自然とそうなったの?
T: そうですね。それもあるし、撮りたいと思うスポットはビルのエントランスみたいな場所が多いんですよ。そうなると人通りの落ち着く夜8時以降じゃないと厳しいというイメージがあって。あとは単純にずっと仕事もしてるんで。朝から夕方までは仕事に出て、終わってから動くとなると結局暗なってまうみたいな。
V: すべてのクリップがいわゆる公園や広場じゃなくて街のストリートだったけど、その辺のこだわりについては?
T: いや、なんかスキルで勝たれへんからちゃうすかね。普通に無理じゃないですか。フルスピードで縁石とかやってるヤツに…オレ普通のテール叩くのでもぎこちないし(笑)。そんなん見せても無理やから、だから自分が一番よく見える方法というか、一番自分が気持ちいいというか。だからイメージで戦えるから面白いっすよね。スポットをどう使うかっていうイメージだけで戦えるから。だからできるトリックがそんなにいっぱいなくても遊べるみたいな感じすね。
V: たしかにスキルだけで勝負すると競技になってしまうしね。編集はパート分けしないで全員がミックスされてたけど、その意図は?
T: そもそも、この3人だけでビデオを作るのが初めてやったから。完全な身内だけでフレンズもゼロ。それなら、あえて構成を完全にカオスにした方がそれぞれの個性が際立つし。パートを分けないことで「誰が一番ヤバかった」という比較がなくなるし、全員がぐちゃぐちゃに混ざっているからこそ、見終わった後に「全員ヤバかった」ってなるしかないみたいな。
V: 余計な演出やギミックを削ぎ落とした直球勝負な編集も潔くて良かったね。
T: まあ、できないだけなんですけどね(笑)。周りにできる友達もおらへんし。まあ悩みどころでもあるっすけどね。パソコンとかもまったくわからへんですよ。映像をチョップして繋いで、音を気持ちいい感じに入れて、感覚でやってる感じすね。音楽のミックスも頼める人もおらへんし、自分で「この曲合わしたら良さそうやな」みたいな。仕事の行き道とかに1時間くらいとか車ずっと乗ってるから、その間とかずっと音楽聴くんで。「お、この曲」とか思ったりしたら、イントロだけ引っ張ったりして。全部もう、まったく何もわからんまま、手探りでやり続けてるすね。

V: では『人間バイブス』の撮影中に起きた印象的なエピソードは?
T: カズマくんの骨が折れたんはヤバかった。あれは衝撃的やったけど渋かったっすね(笑)。3本ぐらい一気に骨折れたんすよ。ハンドレールでのボーンレス50-50で3本ぐらい一気に折れて。ヒザ突きながら、ちょっと震えながら、「すいません…。もうできないです」って。 そりゃ「無理でしょうね」みたいな(笑)。でもあれは『LENZ 3』の撮影やな。
V: 『人間バイブス』のエピソードはないの? あれだけ夜な夜な繰り出してたら何かあるでしょ。
T: いや、オレらほんま2〜3時間しかやらへんからね。8、9時ぐらいから12時過ぎとかまでとかしかせえへんので。だからあんまないっすね。ひたすらスケボーしてるっすよね。「おもろいなぁ」みたいなんはつねに更新されてるっすけどね。いつもケタケタ笑いながらやってるから(笑)。
V: 大阪のキックアウト事情は?
T: めっちゃユルいっすね。長いこと滑ったら来るけど、でも来てもユルいっすね。「あかん、あかんで〜」みたいな。 自分からフルスマイルで挨拶するから全然揉めへんすね。お店の人が出てきたら「お客さん入ってます〜?」みたいな。コミュニケーションすね。 全然しつこくやらへんし。4〜5スポットぐらいヒットできたらいいんじゃないみたいな。「ひとり1カット撮れたら最高や」みたいな。「ゴールデンピスや」みたいなことを言うてるすね。
V: ではめっちゃヤバかったけどDVDには収録できなかった未公開シーンは?
T: カズマくんのノグソとか。 しかもティッシュ投げてくるんすよ。それはよう使わんかったっすね(笑)。
V: 撮影とか編集で仲間同士でぶつかることはないの?
T: みんな流れに身を任せすぎて特にぶつかることはないっすね。緊張感ないっすよ。何の使命感もなくやってるだけ。ノリのままやから。みんなが思ってるよりかなり緩いっすね。
V: とはいえ作品としてDVDにしたわけでしょ。
T: それはやっぱそうしたほうが面白いかなって。YouTubeに上げたらそれで終わりやし、それならDVDにして、ちょっとでも小銭になったらまたこうやってケタケタ笑ってスケボーできるし。




V: ちなみにPISS PARTYっていうイベントもやってるよね。
T: あれは試写会やりたいよなっていう話がまずあったんすけど、「どこでやる?」ってなって。別にオレら街遊びもしてないし、酒も飲まへんから。だからやる場所がわからへんってなって、「どうしよう」みたいになってて。で「もう表でやってもうたらいいやん」みたいな。軽い気持ちすよね。「外でやった方が話早くない?」みたいな。何のルールもなくなるし。超フリーでパーティするなら「やっぱ外やな」みたいな。発電機とか焚いて、ターンテーブルとプロジェクターを持ってきて。「よしやっちゃおう」みたいなって感じで1発目やって。それで意外と人が来て4回になるんすけど毎回野外でやってるっすね。
V: まさにブロックパーティ。
T: ブロックパーティすね、完全に。めっちゃおもろい。夏とかやったら公園もマジで草ぼうぼうになってるんですけど、市に電話して。「僕いつもあの辺で働いてて、お弁当とか食べにあの公園に行くんですけど、草が多すぎて、蚊が増えすぎてますわ。ちょっとどうにかしといてください」とか言うたら、何週間かしたら全部キレイになってる。それでその当日にイベントやってちゃんと掃除して帰るみたいな。
V: 野外だけにカオスなこととかは起きないの?
T: 1回ドラム缶でぶわーって焚き火しとったんすよ。ふたつくらいドラム缶拾ってきて、2箇所でぐわって火焚いとったんすよ。そしたら警察が来て「消しなさい」みたいな。でも「消されへん」みたいな。最終的には「消えるまでほんまにこの場から離れへん」っていう約束で帰ってくれたっすね。さすがに「ほんまに消されへん、この火は消されへん」みたいな。「消えるまで待つしかない」みたいな。結構大阪はそんな感じすけどね。
V: このご時世はどこにも監視カメラがあるから、そんなパーティができてることがすごい。
T: つねにそんなアホな話ばっかりしてたら「ほんまにできるんちゃう?」みたいな気になってまうというか。「別に難しい話じゃないやん」みたいな。発電機にガソリン入れて、火点けただけっていうか。紐を引っ張ったら電気点くし。「できるやん」みたいな。簡単な話で全部できるというか。シンプルに物事捉えたら結構できるよねみたいな。

V: ではDOGGY PISSならではの美学みたいなものはあったりする?
T: う〜ん…やりたくないことはやらない。断る勇気。
V: 「断る」とはスポンサーのオファーとか?
T: いや、某雑誌が取材を受けてほしいみたいな感じで、インタビューの内容を見たときに「あんまり面白くなさそうやし、やめよう」みたいな。やりたいことしかやりたくないし。オレらスケボーで飯食えたらいいよなとはつねに思ってはいるけど普通に仕事もしてるし。それで生計を立てれるようにちゃんとしてるから、別にスケートに媚び売る必要は一切ないみたいな。
V: ドギーピスで犬とは言ってるけど「尻尾は絶対振らへん」ってことね。
T: そうすね。めちゃくちゃにかき回してどう思われようが大丈夫っていう。それぐらいの方が楽っすね。
V: では今は結成当初の4人で活動してるということで、この4人で動くことの重要性は?
T: 面白いのが第一というか。ひとりでやってもやっぱり寂しいじゃないですか。誰かしらと滑ったら楽しいし。気も合うし。スキルもレベルも同じくらいやから、一緒に滑ってて面白いというか。やることも似てるから。イメージとかも一緒に滑っとったら似てくるし。だから「その発想なかったわ」みたいなのをお互い持ってくるから。面白いっすよね。
V: 『人間バイブス』でもウォーリーからのノーズグラインドとか、スポットの使い方も観てて面白かった。ラインのリズムとテンポが良かったりとか。気持ちいいシーンがいっぱいあったよね。
T: 自分がそういうスケボーが好きで。だから自分らが一番そういう映像撮らなしゃあないというか。そんな感じすね。
V: ちなみにビルのエントランスのでかいステアのキックフリップは結構時間かかったの?
T: あれはほんま気が向いたときに行くようにしてて、3回行ったんすよ。1回目はもうほんま目の前に見えた瞬間に「あ、オレこれ行くわ」って言ってやったんすよ。で、乗りゴケまでいったけど足がプルプルになってたから「1回ちょっとタバコ吸うわ」とか言って休んだら「あかん、これもう無理やわ」ってなって。「もうやるテンションじゃない」って帰って。次に来たときは写真も撮りたいと思ってマサくんと行ったけど、「いや、今日キックフリップ調子悪いぞ」みたいになって。弾くだけ弾いたけど「あかんわ」って。で3回目行って…まあまあやったかな。でも10回やってないくらいっすね。でも何回もできひんすね。足腰弱いっすわ(笑)。
V: 話は変わるけど、ふたり目の子どもが昨年生まれたばかりよね? 2児の父になってスケートの向き合い方とか変わった?
T: いや、まぁ半年前、ふたり目の子が生まれる直前に骨折したから。鎖骨を折ってもうて。生まれたのが8月で、折れたのが6月末ぐらい。ほんで生まれた後、奥さんが里帰りしてる間にまた鎖骨折ってもうて。やっと最近ちょっとずつ復活しつつあるって感じすね。2回とも鎖骨。ちょっと治ってきたくらいでまたすぐ折って。ダブルコンボしてもうて、ちょっとビビって。半年くらいスケボーやめとこうかなみたいな。普通にこけただけで折れたんすよ。普通のフラットのトレフリップしてミスって転がったら折れたんで。完治するまではスケボーできへんなみたいな。こけるだけでまた折れると思ったら恐ろしいから。
V: 鎖骨はギプスできないからね。
T: そうなんですよ。プレート入っとって手術で抜いたんすよ。抜いて、3週間後にまた折れる。だからプレート抜いたのがもうほんま一番の失態っすね。だから鎖骨を折ったスケーターに伝えてほしいっす。「プレートは抜かん方がいいっすよ」って。「あれはプロテクターやと思って仕込み続けた方がいい」と伝えてほしいです(笑)。
V: では最後に、今後の予定があれば。
T: 相変わらず。まあ…ね、死ぬまであるんで。スケートライフは。先は長いっしょ。
Taizo Muku
_taizomukk_ | doggypiss_osk
大阪を拠点に暗躍するスケートクルーDOGGY PISSの一員。4作目『人間バイブス』がリリースされ、シーンに新たな熱を投下中。

『人間バイブス』¥2,420















