ADIDAS SKATEBOARDING - TEKKIRA CUP X MOMIJI NISHIYA

大都市ではなくローカルの“午後”から生まれたVillage PM。既存のスケートシューズへの違和感を起点に、クライミング由来の発想と独自構造で新たなスタンダードを提示する。ファウンダーのバジル・ラプレイとブラム・デ・クリーン、そしてライダーのタイナン・コスタ。仲間の延長線にある関係性から生まれたこのブランドは、ゆっくりと、しかし確実に前へ進んでいる。
──VILLAGE PM

2026.04.16

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos courtesy of Village PM
Special thanks_Prov Distribution

VHSMAG(以下V): まずは自己紹介からお願いします。

バジル・ラプレイ(以下BL): スケーターであり、若い父親でもある。ずっとスケートをしてきたし、仕事としてはSalomonをはじめ、アウトドアやファッション系のいろんなプロジェクトでフットウェアに関わってきた。

ブラム・デ・クリーン(以下BDC): 12歳でスケートを始めた。仕事ではスケートパークの施工、デジタルコピーライター、それからKingpinやSugar、Freeといったスケート誌でジャーナリストもやってきた。

タイナン・コスタ(以下TC): ブラジル生まれで、母がブラジル人、父がポルトガル人。13歳までブラジルに住んで、そのあとヨーロッパに移った。今はリスボンに住んでるけど、スケートを始めたのはブラジルで9歳のとき。

V: Village PMという名前の由来は?

BDC: バジルも自分も大きい街で育ったわけじゃないんだ。自分はブリュッセルとアントワープの間にある小さな町出身。

BL: 自分はフランス南部の村でボロボロの道で滑りながら育った。そういう私的な時間とか人生を形づくる場所で過ごした午後の感覚をそのまま名前にしたかったんだ。

スケートシューズを24時間履く「アイデンティティ」としての感覚を取り戻したかった
—バジル・ラプレイ

V: Village PMを始めたきっかけは?

BL: 一番のきっかけは、単純に当時のスケートシューズにワクワクできなかったこと。スケーターがシューズを「スポーツ用の道具」として扱ってる感じもあったしね。2時間滑るために履いて、終わったらまた普通のシューズに履き替えるみたいな。自分たちはスケートシューズを24時間履く「アイデンティティ」としての感覚を取り戻したかった。ちょうどその頃はクライミングや登山用のシューズに囲まれて仕事してて、精度とかテクノロジーのレベルが全然違うのを見てたし。

BDC: 特にクライミングシューズを参考にした。普通は耐久性と慣らしやすさがトレードオフになるんだけど、自分たちはそこを両立させたかった。箱から出してすぐ気持ちよく履けて、しかも長持ちする。薄くて精密なのに、柔らかくてグリップもあるといった感じ。

V: 大企業が多いスケートシューズの市場に参入するのは不安じゃなかった?

BL: 正直ちょっと怖かったかな。でもLast Resortみたいなインディブランドが成功してるのを見て勇気づけられたね。

BDC:  そうだね。何千万ドル規模のスポーツ企業じゃなくても、自分たちの道を作れるっていうのは励みになった。

V: タイナンはふたりがシューズブランドを始めるって聞いたときどう思った?

TC: アイデアがまず面白いと思った。スケートシューズは長年ずっと同じような形や見た目に閉じこもってたから。最初は実際どれくらいスケートシューズとして調子がいいのか気になって少し不安もあったけど、履いてみたらめちゃくちゃ良かった。自分は耐久性を重視するけど、Village PMは長く履ける。最近は足首を守るために1PM MIDを履いてるし、パテントレザーのモデルも2ヵ月は穴が空かなかった。

V: ラバーのテストもかなりやったって聞いたけど。

BL: ラバー開発のために、前の職場のラボを夜に使ったんだ。既存のシューズのフォクシングテープを剥がして、自分たちの配合に差し替えたりしてね。

BDC: そのサンプルをパリで試して、パッチごとに100回キックフリップとかフェイキーフリップやってた。それで「フリックはいいけどつま先が出血した」とか「これは柔らかすぎる」とかボイスメモを送って。密度や厚み、化学配合を調整しながら15種類くらい試したかな。履いて2〜3日目がずっと続くような、あのベストな状態を狙ってたんだ。

V: 最初のモデル1PMの非対称シューレースのデザインは誰のアイデア?

BL: 自分たち。クライミングシューズみたいに、より足にフィットする構造を目指した。ラストもかなり重要で、丸い形じゃなくてもっと有機的で動きやすい形にしたかったんだ。

TC: 足が本来あるべき状態に近い感じがする。ほとんどのシューズは左右対称だけど、足はそうじゃないからね。久しぶりに滑ったあとも1日中歩いても痛くならないシューズに出会ったよ。

V: なぜ従来のヴァルカナイズドやカップソールから離れたの?

BL: 新しいものを作りたかったし、構造自体も新しい。Rubber Glove Constructionって呼んでるんだけど、ヴァルカナイズドでもカップソールでもない。箱から取り出した新品の状態からの柔らかさはヴァルカナイズド、形の持ちはカップソール、その両方を狙って自社で開発したんだ。

V: タイナンが最初に履いて滑ったとき周りの反応は?

TC: 最初は結構バラバラだった。すごくいいって言う人もいれば、よくわからないって人も。でも実際履いたらみんな評価が変わった。ポルトガルの仲間は今ほとんど履いてるし、みんな良いこと言ってくれる。少し前にブラジルに行ったときはまだ手に入りにくかったけど、どこに行っても「それ見せて」って感じで興味を持たれた。いい意味で意表を突けてるのがうれしい。今の時代は人を驚かせるのが難しいから。

V: チームライダーはどう選んでるの?

BDC: チームは小規模で、人と人とのリアルなつながりを大事にしてる。自分たちが近いと感じられる人、そして純粋にそのスケートが好きな人と一緒にやってるんだ。インデペンデントでリソースも限られてるからこそ、しっかりとした意思を持って選択していく必要がある。

BL: スケートに対するスタンスがみんなだいたい同じ方向を向いてるから、そこについて言い合いになることもほとんどない。むしろ、そこはかなり恵まれてると思う。

BDC: そういう関係性はいろんなことに当てはまると思う。もちろん仲間同士と同じで、たまには意見が食い違うこともあるけど、逆に一致したときの強さはかなり確かなものがある。それはいいサインだと思うんだよね。お互いに迷いがないときは、決断も自然と早くなるし。それに信頼関係もしっかりある。バジルの考えは信用してるし、向こうも自分の視点を信じてくれてる。だからお互いに「これだ」って確信できたときは、「よし、それでいこう」ってスムーズに進む感じ。

BL: チームはかなりコンパクトだから、新しく誰かを迎えるときは、すでにいるメンバー全員がしっくりきてることがすごく大事なんだ。たとえばジェローム(・ソッスー)のときもそうで、一度は「このメンバーで固まったかな」って思ってたタイミングで、「やっぱりジェローム入れたほうがいいよね」って話になったのを覚えてる。たしかタイナンがかなり強く推してたんだよね。

TC: ぎゅっとした家族みたいな感じだよ。Airbnbでは部屋どころかベッドまでシェアしたりするしね。

BL: それもリソースが限られてるインデペンデントブランドならではの良さだと思う。だからこそ、ブレのないはっきりした決断をしていかないといけないしね。世界中の都市に何人もライダーを抱えるような大企業みたいなやり方はできない。でもチームはコンパクトに保ってるし、それがまさに自分たちのやり方で気に入ってるポイントでもある。

TC: 最近のスケートブランドはサッカーチームみたいに感じることが多いんだ。ロスターがめちゃくちゃ大きくて。でも自分たちは、もっとフォーカスされた、パーソナルな形を大事にしたいと思ってる。Aチーム、Bチーム、Cチームみたいに分かれてると、ひとつのロスターに40人とかいたりする。そうなると、もう全員で一緒にトリップすることすらできない。結果的に、ひとつのブランドにいくつもの小さいチームが存在してるような感覚になっちゃうんだ。

BDC: 「タイトにしようとしてる」わけじゃなくて、実際にもうそういう関係なんだよ(笑)。戦略として選んでるわけじゃないんだ。

 

V: これまでに2本のビデオを出してるよね。

TC: 最初のビデオはブランドが正式にローンチする前から動き始めてたんだ。あの最初のリリースに向けて全部がつながっていく感じで、だいたい6〜7ヵ月くらい撮影してたかな。ほとんどサンプルのシューズで滑ってたし。パリでシューズとブランドを発表するときに、しっかりインパクトを残したいっていう意識がみんなにあって、かなり熱量も高かったし、いいエネルギーが詰まってた。特別な感覚だったよ。ブランドとしての、初めてのちゃんとしたプロジェクトだったし。

BDC: 最初のビデオではユゴ・カンパンっていう昔からの仲間でもあるエディターと一緒にやったんだ。若い頃かなりスケートにハマってたんだけど、その後は別の方向に進んでいて。だからもう一度スケートビデオの制作に引き戻すっていうのも、なんか楽しいプロセスだったよ。とはいえ実際はかなり濃い時間でもあった。初めてのビデオであり、しかもフットウェアブランドのローンチもかかってたから、プレッシャーも大きかったしね。でも彼みたいに、スケートともう一度向き合いたいっていう気持ちを持った人と一緒にやれたことで、より意味のあるものになったと思う。

 

TC: 2本目のビデオは、またちょっと違う流れでできたんだ。1本目を終えたあと、その勢いをそのままキープして次のドロップに向けて何か作ろうっていう感じで動き出して。スケジュール的にはもっとタイトだったけど、その頃にはトリップも増えてきてて、マルセイユとかアントワープ、パリとか、いろんな場所に行くようになってた。だからトリップ中に自然とクリップも溜まっていって、むしろ撮影はやりやすくなってた感じかな。

V: タイトルは誰が考えたの? 「First」と「Second」という言葉の使い方がすごくいいよね。

BDC: それは自分だね、そのクレジットはもらっておくよ(笑)。

BL: それはブラムのジャーナリズムやコピーライティングのバックグラウンドから来てるんだと思う。でも3本目がどうなるかはまだわからないね。同じ流れを続けるかもしれないし、あえて崩すかもしれない。

 

V: タイナンは他のインタビューでも話してたけど、トリップ中よりも地元にいるときのほうが撮影しやすいって言ってたよね。

TC: ビデオパートにしっかり集中したいときは、やっぱり地元にいるほうが自分には合ってるって気づいたんだ。トリップは最高だし、パリとかマドリードみたいな場所も大好きなんだけど、あらかじめ明確なイメージがないと、どうしても入り込みづらいことがあって。自分は結構考えすぎちゃうタイプだし、スポットも把握してある程度プランがある状態のほうがやりやすいんだ。だからまずは地元で時間をかけてイメージを固めて、「これだ」ってなったら外に出て、できるまでひたすらトライする。すぐ決まることもあれば、何日もかかることもあるけど、地元なら納得いくまで何度でも通えるから。そのやり方が自分には合ってると思う。

V: もうひとつ聞きたかったのがプロモーションについてなんだけど。パリ・ファッションウィークの期間中にSalomonとMargielaの間あたりにトラックを停めて展開してたんだよね?

BL: ロケーションに関してはかなり戦略的だったね。特にトラックを停めた場所は重要で、パリ・ファッションウィークのど真ん中、すべてが動いてるエリアだったから、そこは大きな判断だった。今はパリ・ファッションウィークが従来のトレードショーの代わりみたいな存在になってきてるんだ。スケートやストリートウェア、スポーツウェアのブランドも、昔みたいなショールームを回る形じゃなくて、あの場でバイヤーにコレクションを見せる流れが増えてる。そのトラック自体のアイデアなんだけど、もともとは単純に予算の問題から来てる。ちゃんとしたショールームを借りると1日で何千ユーロもかかるし、スタートしたばかりの自分たちにはそこまでの余裕はなかった。だからどうやって自分たちの空間を作るか、クリエイティブに考える必要があったんだ。結果的にコレクション自体もコンパクトで、見せるシューズも限られてたから大きな会場は必要ないって気づいて。そこでレンタルトラックがちょうどよかった。内装も自分たちで作り込んで、ブランドの雰囲気に合わせて、いわば「移動式ショールーム」にした感じ。だからこそロケーションはさらに重要だった。特に最初の頃はまだ誰も自分たちのことを知らなかったから、自然と人の目に入る場所にいるっていうのがすべてだったんだ。2024年6月の最初のプレゼンでは、とにかく視認性が大事だった。今はある程度認知も広がって、わざわざ探して来てくれる人も増えたけど、最初のあの戦略的なポジショニングはかなり大きかったと思う。

 

デザインと機能性の両方がちゃんと成立してるっていう確信にもつながった
—ブラム・デ・クリーン

V: シューズはスケートショップだけじゃなくて、ファッションブティックでも展開してるよね。いわば両方の世界をまたいでやってるわけで、しかもタイナン自身もファッションモデルとして活動してる。スケートボードとファッションの理想的な融合って感じだよね。

BL: それは本当にうれしいことだし、自分たちにとってすごくやりがいのある結果だったよ。自分たちのプロダクトが、スケートの枠を超えてもっと広い層に届くっていうのが見えたからね。特にハイエンドのブティックは毎日のように新しいプロダクトを見てるし、かなり目も厳しい。そのなかで自分たちに興味を持ってもらえたっていうのは、デザインの方向性が間違ってなかったっていう大きな裏づけになったと思う。純粋なテクニカル面やパフォーマンスっていうよりも、デザインや見た目の部分で評価されたっていうのが大きいね。そういうファッション側のシーンに受け入れてもらえたのは本当にうれしかったし、最終的にはデザインと機能性の両方がちゃんと成立してるっていう確信にもつながった。

TC: スケーターのなかでも、たぶん一番シビアな層からもかなりポジティブな反応をもらえてるんだ。スケーターはやっぱり目が厳しいから、そこはすごく大事なポイントだと思う。直接じゃなくても、友達の友達経由とかで聞こえてくるフィードバックも含めて、かなりリアルにいい反応が多いし、それは自分たちがちゃんと正しい方向に進んでるっていう、強いサインだと感じてる。

BDC: 同時に、もし合わないっていう人がいるなら、それもむしろいいサインだと思うんだ。何かがちゃんと響いてるときは必ず賛否は分かれるものだから。

V: これから先はどんな展開を考えてるの? フットウェア以外の領域にも広げていく予定はある?

BL: ゆっくりとしたペースで成長していってて、新しいプロダクトも段階的に出してるところ。9月には新しいシューズも出る予定だし、ビデオもいくつか進行中。最初の2シーズンはかなりヨーロッパ中心で、流通も基本的にはそのエリアに限られてたんだ。日本では一部展開はあったけど例外的な感じで。でも今は、そこから徐々に広げていこうとしてる段階。日本とカナダではこれから本格的にローンチしていくし、アメリカもその後に続く予定。チーム自体が小さいから、一気に全部の地域で展開することはできないけど、その分ちゃんと段階を踏みながら進めてる感じかな。

BDC: 関係性を築いたり、一緒にやるべき人を見つけたり、全体の方向性をちゃんと揃えていくには時間がかかるんだよね。それに新しい場所にプロダクトを届けるときは、自分たち自身もちゃんとそこに行ける状態でいたいと思ってる。ただ流通させるだけじゃなくて、ブランドとして実際に存在してるっていう実感を持ってもらいたいから。

みんなが同じ方向に向かって動いてるっていう感覚がある
—タイナン・コスタ

V: じゃあ最後にタイナン。Village PMを3つの言葉で表すと?

BDC: がんばって、タイナン。あとでね(笑)。

TC: ん〜…。考えてみると、やっぱり「ホーム」っていうか、仲間と一緒にいる感覚に近いんだ。それが一番しっくりくる。何より、みんなが同じ方向に向かって動いてるっていう感覚がある。かつていろんなブランドに所属してたときは、それぞれがバラバラの方向を向いてる感じがあって、チームとして前に進んでる実感があまりなかった。でも今回は違う。ちゃんと全員が同じ方向を見てる。それがすごく大きい。ごめん、全然3つの言葉じゃないね(笑)。

V: みんな同じ方向を見ながら、前に進んでる感じだね。

TC: 前に進んではいるけど、「早送り」みたいな感じじゃない。もっとオーガニックな進み方で、一歩ずつ積み重ねていく感じだね。
 

Village PM 
@village_pm

フランス出身のバジル・ラプレイとベルギー出身のブラム・デ・クリーンによって設立されたスケートシューズブランド。従来のバルカナイズド/カップソールにとらわれないアプローチで新たな選択肢を提示。スケートショップに加えファッションシーンからも支持を集めるなど、両者の文脈を横断する存在として注目を集めている。

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