そんなスケート世界遺産はその名の通り世界中の至る所に存在しますが、中でもアメリカ合衆国は言わずもがなその宝庫です。そこで今日は突然ですが、アメリカはカリフォルニア州北部を代表する都市、サンフランシスコに今なお存在するスケート世界遺産のひとつに、みなさんと一緒に想いを馳せてみたいと思います。
そのスケート世界遺産の通称は、今回の表題にもなっている「BLACK ROCK」です。しかしこれはこの不動産の正式な名前ではありません。ここは僕の記憶に間違いがなければ、アメリカの某銀行のオフィスビルで、その銀行名が正式名称となっているはずです。しかしわれわれスケートボーダーの関心はその銀行の信用にあるのではなく、あくまでその建物が持つスケートという行為に対する普遍的価値。そこでスケーターはこの不動産の敷地内に、富の象徴と言わんばかりに鎮座する巨大な黒い岩をスポット名として採択したのです。この「BLACK ROCK」、かつてはオーリーアップでその斜面を駆け上がることが可能で(かなりの急勾配)、過去にはダン・ドレホブルのフリップtoフェイキーやキース・ハフナゲルのBSフリップなんかが映像に収められていますが、今では岩の周りにご丁寧なことに植え込みが作られ、だいぶファンシーな仕上がりになっており、この使い方はできなくなっています。
しかし今回注目したいのはこの巨大な岩ではなく、そこに続く外周にある極上レッジです。ラインを組み立てるのには十分すぎるほどの長さと膝丈くらいのちょうどいい高さ、そして飛ぶ位置を選べるステアに続いていくスムーズなフラット。セキュリティの厳しさはありますが条件としてはこの上ない物件で、今でこそスケート返しが取り付けられていますが、まだまだそのスポットとしての普遍的価値は健在で、その証拠といわんばかりに今も旬のスケーターが上質なラインをここで完成させています。
そんなこの場所に普遍的な価値を与え、スケート世界遺産をせしめるもの、それは数多のスケートボーダーがここで確かに残した上質なラインの数々です。どれも甲乙付け難いものばかりですが、中でもジュリアン・ストレンジャーがここにラインで残した表現は、もはやスケート無形文化遺産としての価値さえも持ち合わせているように思えてなりません。
--TH (Fat Bros)