VANS Skateboarding - The Lizzie

シブヤに殴り込みかけてみた
──まがり者

2022.06.24

 自分は今、間借りのタコライス店を営んでいます。「間借り」というのは、居酒屋やバーなどの営業時間外を借り、そこでまた別の人が別の内容のお店を運営するというやり方のこと。「間借りカレー」なんか最近よく聞きますね。4、5月と自宅の近所でやっていたのですが、渋谷の好物件を見つけ、早くも6月からそこに移ったばかり。そこは宮下パークに隣接する「のんべい横丁」という古い一画。5人も入れば満席の屋台サイズのお店が並びます。かねてより宮下公園で毎日スケートしていた頃から気になっていたそのエリアの一画を借りることができたので、すかさず移転したのです。宮下パーク屋上にあるスケートパークやinstant渋谷店の目と鼻の先、そもそも普段からスケーターが多いエリアだけにやって来るお客さんはスケーターが多く、気に入って週に何度も食べに来てくれる方も少なからずいてくれたりと、頭が下がる思い。とは言え与えられた制約の中で先行く不安とも戦いながら「曲がりなりにも」ならぬ「間借りなりにも」あくせくやっている次第です。
 もともとその物件を所有するバーのオーナーもよく顔を出してくれ、話すうちにその人となりが少しずつわかってくるのですが、思うのはお店のあり方やサービスに対する考え方がまるで真逆だなと。僕はといえば、上京し自炊する中で地元のタコライス発祥の名店「キングターコス」の味をコピーしようと始めたタコライス作り。そこから単なるコピーに走るよりも(というか真似すらできなかった)、試行錯誤から得られた自分のオリジナルで勝負することに価値を見出し、人を感動させたく提供しているつもり。そしてその意向はスケートボードを続けてきたことで得られたものであると信じています。だって、たとえばビデオパートを残してもそれが真似だったり、ABDのトリックのオンパレードだと評価されないじゃない? その概念を反映したタコライス作りを心がけています。
 一方で物件オーナーは自分のスタイルを打ち出さないというか、売上のために手段を選ばない感じ。夜のバーではお店独自のメニューなんてのはなく、それよりもいかにお店を回転させ、客単価を高くできるかに重きを置いているようです。そして決定的に考え方が違うと思ったのが、近所でつねに並ぶもんじゃ焼きのお店を見て「夜はウチも真似してもんじゃ出そうかね? そこに並んでいる客がこっちに流れてくるかもよ」という一言。もんじゃ焼きに対するこだわりなど特にないはずですが「案外このやり方の方が稼げたりするんだよな」とも。
 その素性をまだ深くは知りませんが、そのバーのオーナーは少なくとも悪い人ではないし、普段は別の会社を運営しながら夜のバーは片手間で開いている、おそらく凄く稼いでいるエラい人。コロナ禍前はあの屋台サイズのお店とは思えないほどの売上があったのだそう。「稼いだ額は、すなわちそれだけ多くの人を幸せにしてきた証拠」と言われたりすることや、社会的に見てもそのオーナーの方が僕よりまともであるはずです。それでも自分はやっぱり自分のやり方考え方でどうにか進んでいきたい。それはスケートボードに毒された考え方とも、スケートボードから得られた教訓とも呼ぶことができそうです。

─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 



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  • NB Numeric: New Balance