KATSUSHIGE ICHIHASHI
KATSUSHIGE ICHIHASHI
市橋勝茂
(スケートボーディング愛好家・翻訳家)
ドイツ・ハンブルグ生まれ、大阪育ち、東京在住。デッキに乗ってる時間よりもスケートボーディングを観たり、それについて調べたり、書いたり、翻訳したりする時間の方が長くなってしまった不思議な人。Luecke(リュケ)というブログもやっています。

LONG LIVE SOUTHBANK

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2014年9月18日、ツィッター上で信じられないニュースを目にした。”Southbank is saved”。そう、ロンドンを代表するスケート・スポットのSouthbank(サウスバンク)の存続が保証されることになったというニュースだ。

Undercroftともよばれるこの空間はQueen Elizabeth Hallという格式高いコンサート・ホールの下にあり、そのホールとRoyal Festival Hall、Purcell Roomといったホールや Hayward Galleryを含む文化の中心地として建設された施設がSouthbank(スポットの名前はあのバンクから来ていたわけではなかったのだ)。その改築工事にともなって施設を管理する団体は現在スケート・スポットとなっている空間にテナントのお店を入れる計画をしていた。そこに集まる観光客を目当てにしたわけであるが、その集客の大きな要因はそこが有名なスケート・スポットであるから、というのも実に皮肉な話だ。委員会はスケーターたちにすぐそばのHungerfold橋の下に新たなスケートパークを作る計画も提案してみせたがハードコアなSouthbankのスケーターたちがそんな子供だましに応えるわけもなく、今回の計画が明るみに出た2013年の3月から改修やスポットの封鎖に反対すべく即座に動きだし、4月にはLONG LIVE SOUTHBANKというグループを結成、”you can’t move history(歴史を別の場所に移すことはできない)”というスローガンを元に活動を開始。6月時点でオンラインでの賛同票40.000人を集め、7月には実際の署名14.000人分を地区を管轄するLambeth市役所に「スケートボードに乗って」届けた。その様子を含む映像がこちら、

このようにしてLONG LIVE SOUTHBANKはfacebook、twitterやホームページ、売り上げがそのまま活動費に回されるTシャツ、新聞や雑誌と実に様々なメディアを効果的に活用してSouthbankの現状と迫りくる危機、そしてそれにあがなうスケーターやこれまた様々な分野の人たちの姿を全世界に知らしめた。またスポットの前には毎日、署名用のテーブルが設置され直接その場を訪れる人たちにも署名を呼びかけていった。

スケート業界の凄腕フィルマー(Henry Edwards-Wood)による美しい映像と瑞々しい若者たちの姿は非常に印象的。そしてそんな若者たちを見守る大人たちの成熟した「市民感覚」や当然のように政治、それも身近なできごとに関心を持ち積極的に参加する風土があるからこそこういった運動が今回のように実際に実を結んだのだろうと推測するのだが、若い人たちにとって自分たちに降り掛かった問題を自分たちの力で動かすことができるという経験はスケートボーディングにとどまらず、きっとこれからの人生の大きな糧になるだろう。日本みたいな国に住んでいるとただひたすらにうらやましい。

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そしてこの運動から生まれた嬉しい副産物がこのスポットの歴史をまとめた本『 LONG LIVE SOUTHBANK』。タイトルもそのまんま、コンクリートの柱か壁をそのまま装丁にしたような無骨な作りで大判な上に408ページもありものすごい重量感、そして内容も濃い。それこそこの施設Southbankの建設の歴史、スケーターと同様に70年代以降にただの通路として作られた広大な空間Undercroftを自分たちのスポットとしたBMXやローラースケートのライダー、グラフィティ・アーティスト、そして80年代の社会状況に翻弄された数多くのホームレスの人たちまで含めてこの空間の「住人」となった様々なシーンを追った克明な記録にはうならされた。そしてSouthbankの歴史を網羅することで必然的にイギリスのスケート史の大部分をカバーしているとも言えよう。かなり後乗りの自分にとってはHeroinやBlue Printのビデオ(DVD)が原体験なのだが、80年代や90年代からどっぷりとスケートにハマっている人にも懐かしいショットが多数あるはず(Mark GonzalesやTom Pennyの姿もあり!)

http://www.llsb.com/shop/

その本の中ですでに80年代からスケーターを排除しようとする動きがあったり、90年代には夜間に照明を消すことでスケーターを追い出そうとしたり、2004年のRoyal Festival Hallの改修にあたってUndercroftの大部分を封鎖して資材置き場や事務所として長期間利用し、工事が終了してからも結局はそれらの空間がスケーターたちの手に戻ることがなかった経緯も記されており、さらに工事を押し進めて自分たちが追い出されることを恐れたスケーターたちの反対運動が2008年にも大きな盛り上がりをみせていたことを知った(4.000人の署名を当時の首相ゴードン・ブラウンに手渡したそう)。今回の反対運動がここまで組織的かつ効果的に展開された背景にはこういった経験が下敷きになっていたことを知り、再度感銘を受けた。

ホールの下部に位置する空間には耐久性の問題もつきまとうだろうが、これから先もできるだけ長くこの空間が存続できることを願うばかり。いつか自分も行ってみたいですからね!

こちらは勝利宣言が出たあと、署名集めの最終日となった日にテーブルなどセット一式を押して帰るスケーターの姿。美しいではありませんか。

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そして活動をまとめたクリップ。

http://www.llsb.com/

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Photograph of the Undercroft by Sam Ashley

Nixon x C.R. Stecyk III
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