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 REAL TOUGHNESSに行くことができるのか!?  埼玉県三郷…
──第6回:ひとりタフネス(中編)

2013.05.17

 REAL TOUGHNESSに行くことができるのか!?

 埼玉県三郷市にある緊急病院に運ばれたのが夜中の24時30分。ストレッチャーで診察室に運ばれたオレは、痛みは続くものの病院に到着した安堵感もあり、ナースに状況を話す救急隊員に感謝の言葉を述べる程度には冷静さを取り戻してきた。
 ナースも夜中の緊急患者に対する対応としては優しい。ホッとしながらもベッドに寝たきりのまま医者の登場を待った。

 ガラガラガラ…医者登場。眠そうな顔して、頭を掻きながら

医者 「ハ~~ で、どんな感じなの?」
ナース「腰椎全体に痛みを…」
医者 「だから~、しゃべれるの相手?」
ナース「はい。受け答えできます」
医者 「あっそ」

スクエアレールの角部分がくっきり残るそのポイントから身体中に炎が駆け巡った。

スクエアレールの角部分がくっきり残るそのポイントから身体中に炎が駆け巡った。

 オレの頭は爆発モードに変換。患者という漢字は、心に串が刺さってる者と書いて「患者」。それを取り除くのが医者。こいつはさらにブッ刺してる。
 「瞬殺してやろうか!」と言いたかったが、なぜか超冷静なオレ。
 理由は「REAL TOUGHNESSに行かなければならない」から。ここで喧嘩して、病院を後にすることはできたかもしれないが、それでは腰がどうなっているのかも分からずじまい。ただの無駄足になってしまう。ここはぐっと堪えて下手にでるしかない。
 とりあえず無駄口を叩かずにオレは医者の言いなりになった。

医者 「スケボーでやったの? へ~こんな夜中に。起き上がれないんでしょう? で、痛みは酷いの?」

 「痛ぇから救急車できたんだろうがぁ~このボケ」と思いながらも、ハイハイ受け答えする。

医者 「まぁ折れてるだろうけど、レントゲンを撮ってきて」

レントゲン撮影後…

医者 「はい腰椎横突起骨折。横突起の2番3番が折れてるね~。じゃあ入院ということで」

 「先生すいません。申し訳ないですが、入院ができないんです。明日どんなことがあっても絶対に行かなければならない仕事があるので、このままどうにかして帰ることはできないでしょうか?」

医者 「はぁ? キミのそんな安っぽい責任感なんて僕は知らないよ。何言ってんの!?」

 「おっしゃることはよくわかるんですけど、本当に僕が行かなければならない仕事なんです。どうにか帰らせてください」

医者 「あのね。夜中に救急車で運ばれてきて腰の骨折となると、医者としては入院させなきゃいけないんだよ。わかる? 内臓などの損傷もあるし、この時間は精密検査もできないからね…わかる? とにかく入院しなきゃいけないの。なにいってんだかキミは…。はぁ~ はぁ~」

 文字にするとそれなりのやり取りに見えるが、実際はもの凄く嫌味な言い方。オレの怒りがマックスになってきているのを感じた多根くんがすかさずフォローに入る。

 「先生、実はこの人は六本木ヒルズで行われるCASIOのイベントで司会をするんです。とても重要な役割であり、この人しかできない仕事なんです。どうにかしてあげられませんか?」

医者 「六本木ヒルズ ? 僕だって昔は六本木ヒルズで働いてたんだ」と謎のことを言い出す。

 「へぇ~そうなんですか、ヒルズでお医者さんか~すごいですね!」と返すオレ。

医者 「まあね」

 そこからヨイショ開始。チャンスとみるやオレのMC魂が火を吹く。
 気を良くしたのか医者は「じゃあCTスキャンとりあえず撮ってきなさい」との指示を出す。

 ここで多根くんがさらにいい仕事を! CTスキャンを撮ってきてる間に、オレの明日の仕事内容やスケートボードの世界のことを細かく先生に話してくれたらしい。

 CTスキャンから戻ってくると、CTの画像を見ながら医者が「とりあえず内部の出血などはないからどうする? 本当は入院させなきゃいけないんだけど、誓約書にサインすれば、しょうがないから帰らす方向でいくよ」。

医者 「ただね、もうこっからは知らないよ」

ナース 「 ええっ! 帰らすんですか?」

医者 「だって帰るってんだからしょうがないじゃん」

 てな訳で、六本木ヒルズのワードからのヨイショで夜中の2時半に帰宅OKをもらう。

 そうと決まれば医者もナースも早く寝床に戻りたかったのか、ちゃちゃっとコルセットと痛み止めを用意。痛み止めに関しては座薬を処方。医者いわく「相当痛みが取れる座薬を用意した」とのこと。

医者 「これはね~すんごく効くよ! 点滴に入れるヤツより凄いんだから」

ナース 「今入れてあげようか?」

 「いいです…」

人類の進化とともに退化していった骨がこの横突起骨。バッチリ2本折れてました。

人類の進化とともに退化していった骨がこの横突起骨。バッチリ2本折れてました。

 VHSMAG の読者にこのくだりは長文だったかもしれないけど、スケーターは怪我で病院に運ばれた時、医者の対応でむかつく時が多々あると思う。そんな時の状況打破は、悲しいがワッショイ・ヨイショが一番なんだということを伝えたかったのです。
 もちろん人の身に、患者の身になってくれる優しいお医者様も沢山いるけど、なかにはそうじゃないケースもあります。その時は…頑張れ!

 めでたく腰椎横突起骨折の診断をもらい、痛みが続く中、多根くん&松金くんに送ってもらい帰宅。妻に会わす顔がないと思いながら帰宅するとリビングには布団が用意されていた。妻は帰宅したオレに「今日はいけるの?」とREAL TOUGHNESSの心配をする。さらに、友人ふたりに「本当にご迷惑をおかけしました。いろいろごめんなさい」と謝罪。
 おお~妻、なかなかやるじゃないか…。

 ここで多根くんは帰宅。真夜中の3時。多根くん本当にありがとう。

 布団に入りながら考えるオレに、体を動かすたびに襲いくる痛み。ましてや怪我をした場所から自宅までの間に飛び込んできた景色は救急車の中、病院の中、そして自宅のリビング。
 言うなれば、諦めてしまいたくなるネガティブな空間の中にしかオレは身を置いていない。

 コルセットをキツく巻き、部屋の中で松金くんに支えてもらいながら立ち、声を出してみたがすぐに腰砕けになり彼にもたれかかる…。気持ち悪くなる…。無理かもしんね…。
 この時点でオレのモチベーションは下がってしまっていた。気合いを入れてもどうしようもないのか? やはり無理か?
 そうなると早い段階でVHSMAGのスタッフふたりにこのことを伝えなければと思い電話するも、さすがに夜中の3時に出るわけがない。

 ここで妻が「あなたしかできる人いないんでしょ? 無理はしてほしくないけど、あなたいつもギリギリのことばかりじゃない。今は無理してどうこう考えるよりも朝まで少しは時間があるんだから寝なさい」。

 ですです。寝ます。でも寝れるのか? 寝れました。3時間。
 朝の光を見ると少し気分が変わっていた。痛みはもちろんあるが、3時間前とはモチベーションの違いが感じ取れた。

 この日に賭けるVHSMAGのスタッフやREAL TOUGHNESSの関係者、オレがMCということでアガってくれた松尾裕幸や謝花明徳の顔が思い浮かんだ。なにより前日に怪我をする自分のふがいなさに恥ずかしさと怒りをおぼえたほか、プライドをなぎ倒してまであの医者にヨイショした自分のREAL TOUGHNESSに対する思いがこみ上げてきた。

 しかし腰は痛ぇ~。でも行ってみなきゃわかんねぇ~。ここでケツに座薬をぶっ込む。通常1個のところ2個ぶっ込む。誰にぶっ込んでもらったか? 妻に2個ぶっ込んでもらう。

 その後は、夜中にレンタル車椅子を調べてくれた妻が、朝イチの電話で車椅子のレンタルを申し込む。
 1時間後に車いすが到着。
 オレの包帯コレクションの最上級の幅広包帯で腰をがっちり巻く。その上にコルセットを思いっきり巻く。
 セット完了。

 「やるだけやってみる。現場に行かないで枕濡らすより、現場で諦めて泣いた方がまだましだ」。そう心に決め、松金くんに助手席に乗せてもらい、前日オレのせいで最高級極上スポットをわずか5分で終了させられた松金 暁がオレの車のハンドルを握り六本木へとアクセルを踏む。

病院内で車椅子に乗るオレは痛みと戦っていた。何としても六本木に向かわねば…。

病院内で車椅子に乗るオレは痛みと戦っていた。何としても六本木に向かわねば…。

 六本木に到着。コインパーキングから六本木ヒルズまで上り坂が続く。松金 暁は車椅子のオレを気合いで押してくれる。本当にありがとう。

 メイン会場に車椅子で到着したオレ。

 そこは数時間前までのネガティブな景色とはまったく違っていた。都会的最先端の空間、いったいどれだけ費用がかかったのであろう素晴らしいステージ、それぞれの持ち場で朝から頑張るスタッフ、すでに練習を開始しているライダーたち…。

 「腰の痛みは?」 自分自身に問いかける。力を入れる。やっぱ痛ぇ…。
 でも、ゴゴゴゴ ゴゴッゴゴー グウォーーー。力が漲ってきた。少しの時間、いや一瞬「痛みを忘れられるのではないか」と思える力が漲ってきた。

 やるしかねぇ。やってやる!

後編に続く。

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