VANS Skateboarding - The Lizzie

フランス・ボルドーを拠点にユニークな視点と発想でスケートと向き合うMagentaの顔役レオ・ヴァルス。スケーターが共生できる街づくりへの取り組み。
──LEO VALLS / レオ・ヴァルス

2022.02.09

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos_Clement Harpillard
Special thanks_Kukunochi

VHSMAG(以下V): お久しぶり。娘さんが生まれたそうで、おめでとうございます。IGを見たところアメリカに行っていたみたいだね。パンデミックでまだ世の中は元通りじゃないけど最近はどうしているの?

レオ・ヴァルス(以下L): ありがとう。生まれたばかりの娘とSFやLAの友人・家族を訪ねていたよ。ようやくボルドーに戻ったところ。この2年間はパンデミックに翻弄されて大変だったけど元気にやっているよ。

V: パンデミックによって渡航制限が余儀なくされたけど、レオのスケートに影響はあった?

L: 2年前にパンデミックが始まった頃、実は妻と3ヵ月間いろんな国や都市を旅していて、ボルドーに戻ったと同時にフランスは1年間完全にロックダウンされてしまったんだ。だからその1年はずっと地元のスポットでビデオパートを撮影して、新しい視点でスポットを捉えようとしていた。ロックダウン中の街は滑りやすかった。人通りも少なくてメインプラザにはテラスも出ていない。でも10年以上スケートしながら世界中を旅することができたからそれはそれで良かったと思う。残念なのは日本に行けないこと。日本の仲間に会いたいし、日本でスケートをしたい。この2年間、何度か日本に行く予定があったんだけど、その度に国境が閉ざされてしまって。

V: レオにとってスケートで旅することの醍醐味は?

L: 街を体感して新しい人と出会えること。それが間違いなくスケートそのものの醍醐味だし刺激にもなる。いろんな国や街のストリートで何時間も過ごすから、それぞれの文化を知ることができる。

V: 旅で一番良かったと思う体験は?

L: 新しい人と繋がって一緒にプロジェクトを作り上げたこと。それが一番楽しいね。

V: パンデミック中に取り組んだことは? パンデミックをきっかけに始めたことはあった?

L: 妻がヨガのインストラクターをしていて、いつも「ヨガを本格的にやる」って約束していたんだけどなかなか時間とやる気が出なくて。でもパンデミックをきっかけに、ヨガ、ストレッチ、呼吸法を毎日やるようになった。数ヵ月後には体の調子も良くなってスケートにも役立つことがわかった。そこでスケーターに特化したヨガのクラスとトレーニングを始めることにしたんだ。Namaskateといって、オンラインで受講することがでる。

 

スケートはストリートにあるべきもので、街の発展や若者のために有益である

V: 先日、IGで「アメリカにはスケートストッパーが多くて驚いた」って投稿していたよね。レオはここずっとボルドー市と協力して街をよりスケートに適した場所にするための活動をしているけど、そもそもそのプロジェクトはどのように始まったの?

L: 5年前のボルドーはスケートに対してかなり抑圧的だった。街にはスケートストッパーが次々と付けられて、ストリートスケートをしていると警官に止められて罰金を課せられたりもしていた。そんなときにテレビのニュース番組でこの問題について話す機会があったんだ。それで市長と役所の人たちから連絡があって話し合いをする機会を設けてもらうことになった。最初は大変だったけど、スケートはストリートにあるべきもので、街の発展や若者のために有益であることを説明することができた。地元の美術館でアートショーを開いたり、市の役員やスケートを好まない住民と何度もミーティングをしたりと時間も労力もかかったけど、やる価値は確実にあった。ストリートスケートは多くの街でネガティブなものとして捉えられがちだけど、オレは今こそシフトが起きるチャンスだと思うんだ。ボルドーだけでなく北欧の街でも変化が起きているからね。スケートはエコな交通手段だけでなく、社会的・文化的な活動でもある。それに犯罪抑止とか公共の場で起こるさまざまな問題を解決することができるはずなんだ。そこで3ヵ月間、スケートが禁止されている場所をある一定の時間帯だけ開放してスケートを許可する実験を行った。その結果が良かったから、文化的なイベントの開催や、街中の新旧の建築物にスケートを取り入れる手助けをするように市から依頼されることになったんだ。

 

V: Skaturbanism(スケーターバニズム:スケートと都市開発を組み合わせた造語)について説明してもらえる?

L: これはスケーターと街が相互に利益を得ることができる方法で、公共スペースの一部としてスケートを捉えることを意味している。TF(東京の田町やNYのトンプキンスのようなスケートが許可された公園のような空間)やスケートパークではなく、スケートがさりげなく街の公共スペースのデザインに取り入れられている状態。つまり街のさまざまな用途と調和する形で、スケートが都市空間を発展させるポジティブなツールとして理解されること。今後、スケートはスケートパークに収まらない自由で都市的なアクティビティであり、公共スペースに正しく応用されれば誰にとってもプラスになるということを多くの街が理解し始めると思う。

V: 市とのやり取りで大変だったことは?

L: すべての人を巻き込んでみんなの意見を聞くこと。ボルドーの街でスケートを全面禁止にしようとする金持ちの住人や資産家などヘイターもいたけど、前向きなコミュニケーションと街を共有するという考え方があったから、スケーター側のメッセージが伝わったんだと思う。

V: スケートをまったく理解しない人たちをどうやって説得したの?

L: スケートを文化的な文脈で説明したんだ。スケートを理解していない人たちをストリートスケートの芸術的・文化的側面をテーマにしたアートショーに招待することで、少しでもスケートを理解してもらおうとした。スケートとは経験を共有し、旅をし、撮影し、写真を撮り、デザインすることでもあることを多くの人が知れば、スケートの見方も変わると思うんだ。ボルドーの街角で展示したスケート用のパブリックスカルプチャーも役に立ったと思う。大切なのは伝え方だと思う。

 

V: ディフェンシブ・アーキテクチャーについてはどう思う?

L: 一部の人を排除して公共スペースの意味そのものを変えてしまうから存在すべきではないと思う。公共スペースはすべての人のためにあるべきだ。そうでなければ公共じゃないからね。だからこそ公共スペースは万人が使えるようにもっといい感じにデザインされなければならない。

V: スケートストッパーの専門業者があるのも異常だよね。スケートストッパーは公共スペースにどのような影響を与えると思う?

L: こういう民間企業は、スケートや街で遊ぶことは危険でネガティブなことで止めるべきだということをPRしている。スケートストッパーは、スケートや街で自由に遊ぶという行為に対して一般の人たちにネガティブなメッセージを送っているんだ。ディフェンシブ・アーキテクチャーは、街はAからBに行くため、そして消費するためだけにつくられていて、お金をかけずに街を使って自由に楽しむことはマイナスだというメッセージを発している。それにスケートストッパーは高価なんだ。そんなものに税金を使うんじゃなく、スケーターやすべての人が使えるものを街につくったほうがいいじゃないか。解決策はいくらでもある。たとえばベンチのスケートストッパーに使うお金で、その同じベンチの素材や色を工夫して座るだけじゃなくスケートもできるようにするとか。

V: オーシャン・ハウエルも過去にスケーターの視点からディフェンシブ・アーキテクチャーについての論文を発表したりしていたよね。彼から何かアイデアやインスピレーションを得たりした?

L: オーシャンは最高だね。一緒にパネルディスカッションで会って話したこともある。スケーターとしてもレジェンドだけど、かなりの紳士だった。スケートや公共スペースについてよく話すことができた。彼の都市史やジェントリフィケーションに関する見解もおもしろいよ。

 

V: レオたちの活動でボルドーの街は変わった?

L: 変わったね。以前はスケートを拒絶してスケーターに罰金を課していたけど、今はみんなのために解決策を見つけようとするようになった。禁止されていたスケートスポットを開放していろんな公共スペースにスケート用の御影石のベンチを設置したり、プラザも何箇所かスケートしやすいように改装することができたし。

V: 市と連携したことでスケートに対する一般人の見方は変わった?

L: そうだね。ボルドーではスケートがより受け入れられるようになったと思う。

V: 『Bordeaux Exposure 3』で滑っていたプラザもレオたちの活動で開放された場所のひとつだよね。

L: そう。このプラザは'70年代にボルドーでスケートが生まれた場所なんだ。'90年代にスケートストッパーが設置されて、その後は基本的に誰もいない不毛の地になっていた。それで昨年にスケートストッパーを撤去して地面をスムースにし、レッジを強化してスケート用に改装することができたんだ。スケートパークというより、スケーターと一般人が共有する広場のような感じで、工事費も市が負担してくれた。今ではスケーター、ピクニックをする人、ダンスをする人…いろんな人が毎日集まっている。このプロジェクトの結果には満足しているよ。

 

スケーター目線だけでなく他の街の利用者の立場になって考えなければならない

V: 特に東京ではストリートスケートが日に日に厳しくなっているような感じがする。オリンピックでスケートに注目が集まったこともその一因かもしれない。ストリートで苦労しているスケーターにアドバイスを。

L: 実はオリンピックについても考えていたんだ。はたしてストリートスケートにとってプラスに働くのか、マイナスになるのか。スケーターが共存できる街づくりが始まるのか、それともスケートパークにスケーターを閉じ込める風潮が主流になってしまうのか。でも確実に言えることは、大多数のスケーターは何があろうとストリートで滑るということ。自分の街でスケートを楽しみたいと思うスケーターにアドバイスするとしたら、スケーター目線だけでなく他の街の利用者の立場になって物事を考えなければならないということ。そして必ず正しい形でスケートカルチャーを表現することを学ぶ必要があると思う。まずはそこから。それが街と一緒により良いものを作っていくための鍵になると思う。

 

V: スケーターにやさしい街づくりのプロジェクト以外で予定されている活動は? Magentaもかなり活動的に動いているよね。

L: そうだね。進行中のプロジェクトだらけだよ。今年中に公開する予定のビデオパートに取り組んでいるんだ。先月はカリフォルニアでDCと一緒に新しいショートドキュメンタリーを撮影したばかり。MagentaのUSライダーたちとも一緒にLAでビデオも撮ってきた。楽しかった。いい感じだね。

V: では最後に一言。

L: アザス! 今年は日本の仲間と再会したいね。みんな健康に気をつけて!

 

Leo Valls
@leovallsconnected

1986年生まれ、フランス・ボルドー出身。MagentaやDCに所属し、パワースライドを駆使したスケーティングに定評のあるストリートスケーター。スケート可能な街づくりを実現する活動家としても知られている。

 

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