とあるブランドのプロモーション動画撮影のために、ボックスを1個作ったんですよ。ベニヤ板1枚弱、高さは25cmのいたってシンプルなボックス。都内の某繁華街、狭い空間でその撮影は行われました。その撮影のために集まった数名のスケーターも各々無事にクリップを収録でき、近いうちに公開されるとのことです。その一部始終を眺めていた自分としては、撮れた映像がどう調理され公開されるのか、ニヤニヤして待つばかり。
さて使用されたそのボックスは、翌日からすっかり僕らのオモチャとして立派な役目を果たしてくれています。思い返すとそんな小ぶりなサイズ感のボックスを執拗に攻めるのっていつぶりのことだろう。あちらこちらのパークやスポットに滑りに行き、軽く当て込むことはあっても、やり込むことってそう多くないんですよね。やっていて思ったことは、なんとも懐かしいこのサイズ感。というのも、自分がスケートを始めた頃ってのはそこまでパークもなかった時代。代わりに、だいたいどこの市町村にも1、2ヵ所くらいはスケーターが集まり、勝手にセクションを置いて滑っているってのが当たり前の世の中でした。そしてそんな場所に行けばだいたい置いてあるようなサイズ感のボックスを今回僕らが作ったので(そこ狙ったわけじゃないはずだけど)、それはあの時の空気を思い起こしてくれるものだというわけです。
そんな時代の、そこらに置いてあるボックス。だいたいそこらの工事現場から勝手に持ってきたような資材で、今思うと素人が見よう見まねで作ったようなものばかり。誰が作ったのかもわからないそんなボックスをはじめとしたセクションがどこぞのスポットに置いてあって、そこにローカルが集まっているって噂を聞いては恐る恐る足を運んでみたものです。自分が放課後に足繁く通っていた公園の駐車場スポットにもそんなボックスのひとつやふたつはあったもので、そこで仲間たちと次々新しいトリックを習得したものです。
パークに当たり前にアクセスでき、立派なセクションを楽しめる時代になり、逆にそんな小さなボックスでバリスケするという機会を忘れていたこの頃。まさに原点回帰といいますか、フレッシュな気分でボックスセッションを楽しんでいるこの頃です。長いことおざなりになっていたトリックをやり直したり、うれしいニュートリックをゲットしちゃったり。自分の中ではレッジトリックは「田町の40cmくらいのコンクリート製ボックスでメイクができてようやくものにした」という基準を設けているのですが、なにも最初からその高さでトライすることはないんだよな…とあらためて。まずは小さなところでしこたまやって大きくしてけばいい、そうやって上達してきたはずだ。そんな当たり前のことを無言で訴えかけてくる小さなボックスなのでした。ありがとう、某ブランドのディレクターさま。
—Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)








