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後世に伝えるべきフィリーの伝説
──MATT REASON

2014.10.24

 '90年代、東海岸が牽引する新しいストリートスケートシーンの幕開けをフィラデルフィアでリッキー・オヨラと共に支えたマット・リーズンの訃報はあまりにも衝撃的で、当初はここで彼について書くことをためらいましたが、やっぱり書くことにします。

 思えばここVHSMAGから、少し前の時代の出来事を取り入れて週に1回、映像とそれにまつわるエピソードを交えた企画を任され、2012年6月の第1回目で取り上げたのが彼でした。一番のスケーターをひとり選ぶのには思うところがあり、一番好きなひとりは挙げない主義ですが、彼は僕の本当に大好きなスケーターのひとりで、まだ彼の魅力を知らないスケーターがいたら常に教えておきたいと考えていましたし、僕という人間を知ってもらうとき、「こんなスケーターが好きです」と、時には名刺代わりに彼の魅力について語ることもありました。

 彼からは本当に多くのことを学ばせてもらいましたし、ここまで大きく影響を受けた人間もあまりいないように思います。それはローカルショップを持つことの意味とその魅力、そこに集まる仲間たちで路上をヒットすることの楽しさ、街のプラザでスケートする気持ち良さ、寒くても外でスケートする方がかっこいいこと、長髪でスケートすること、流行のトリックに流されすぎないこと等々、挙げたらキリがありません。スイッチウォールライドやレッジでのフィーブルグラインドなんかは、彼がやっていなければ今現在定着していなかったかもしれませんし、Vansのランピンはもはや僕の中では彼のシグネチャーシューズです。その証拠に、彼の姿を見なくなったのとほぼ同時期にラインナップから消えました。もっと言ってしまえば、Adrenalin Skateboardsがかっこよかったのも彼がいたから、今も僕がThunderのトラックを使う理由は機能性云々よりも実は彼が使っていたから。

 今回彼について書くにあたり、僕の記憶が曖昧になってしまっていることも多く、改めて少し調べる中で知らなかったことを知る機会がありました。それは彼の生年月日が1973年4月18日だったということです。それは僕が生まれる4日前です。
 彼は先に逝きましたが、僕は僕が生まれる4日前に、スケートボードの母国アメリカで生を受け、その後のスケートシーンと僕に計り知れない影響を与えた同級生の、超イケてるスケーターを決して忘れません。

P.S. 日本を代表するスケートメディアであるここVHSMAGが現時点においても彼の訃報を伝えないことは、僕に彼のことを書く機会を与えてくれたのであると勝手に解釈しました。
 ありがとうございました。

--TH (Fat Bros)

 

 
 



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