STORE
VHSMAG · VHSMIX vol.31 by YUNGJINNN

POPULAR

KOYO HONDA / 本田航瑶

2024.04.24

ZUSHI BEACH FILM FESTIVAL 2024

2024.04.22

AROUND CUP 2024

2024.04.23

SUBLIME

2024.04.23

JOHN CARDIEL

2024.04.22

木まずい話

2024.04.26

SLS 2024 SAN DIEGO

2024.04.21

SPITFIRE - SAN FRANCISCO 93S

2024.04.24
  • G-SHOCK

SKATE SHOP VIDEO AWARDS 2023
SKATE SHOP VIDEO AWARDS 2022
Maite Adimatic Mid - adidas skateboarding

さっさと引っ越ーし シバくぞ♪
──第30回:チュワ〜ッス

2019.05.08

 完全に春です。浮かれます。脳みそが溶けそうです。寒い冬を乗り越えたからこそ感じるこの喜び、夜ストリートに出てももうそんなに死ぬ思いをしなくて済むっていうのはスケーターにとっては最高です。ビール片手にストリートの季節到来!
 春で思い出すことはたくさんあるんですが、中でも僕が思い出すのは引越し屋さん。高校生の頃、初めてに近いアルバイトが引越し屋でした。春になると引越しシーズンで大忙し。仕事は山ほどあります。当時はサクッと高い日給を稼ぎ出せるバイトの定番だったような気がします。それよりサクッと行けるのは身体を壊すとか法律に触れるとかやばい人を介さないとたどり着けないとかそっち系になっちゃうので。
 引越し屋のいいところは早くやれば早く終わる。日給は変わらず。よってほとんどの現場責任者は「早く終わらせる or DIE」 のような考え方なので死ぬほどピリピリしています。特に僕のような高校生の入りたての雑魚はゴミみたいな扱いをされます。とにかく動いていないと怒鳴られ、わからないことを聞いても睨まれます(でも聞かないで何もしないよりはマシ)。1分1秒でも無駄にはできません。手ぶらで歩いていても怒られます。「こっち来るんなら台車でも資材でもゴミでもなんでもいいから何か運べ! 手ぶらで歩くんじゃねーぞ!」とよく言われたものです。物を運ぶ仕事なので、運ばずに移動するだけでもう罪、ギルティー! 本当にバイトしてすぐの時は怒られまくるし、友達もいないし、どこだかわからない引越し先のマンションの階段の踊り場で思わず泣いてしまったことすらあります。
 我々の仕事の速さを持ってしてもどうしようもないことがひとつあります。お客さんの事前準備です。「細かいものはダンボールに入れておいて下さいよ」という条約で行くわけですから違反はいけません。しかしやはり朝イチお客様の家に行くとまったく何もしていない人もいらっしゃるわけです。「テメ~、まじ…。もう引っ越すのやめてGo to hell!」とか思いながらお皿とか文房具とかをダンボールに詰めた経験が何度もあります。最悪のパターンですね。これができないお客様はまるごとパックとか高額オプションサービスの依頼が必要です。梱包専門のおばちゃんたちを引き連れて現場に向かうのです。
 若い頃に4年ほど引越し屋を続けたおかげで要領や段取りは完璧なはずの僕でしたが、そこは宮島クオリティ。シーズン到来の春にいざ自分の引越しになるとなかなか準備ができず当日の朝を迎えてしまったのです。もちろん朝来た引越し屋さんのリーダーの顔は曇りまくりで、あからさまに嫌そうなオーラ全開。やばい、これは自分に引越し屋の経験があったなんて言ってしまったら「んじゃなんで準備やってねーんだおいっ」と火に油を注ぐ羽目になると思い、経験者ということを隠して知らんぷりをキメ込むことにしました。「いやぁすいません、引越し屋さんにお願いするの初めてで…子供がすぐ散らかすからなかなか準備が…」。リーダーはほぼこちらを見ずに「はい」と言いながら無茶苦茶なスピードでそこら辺にあるものを箱に詰めまくっています。
 気まずい雰囲気は続きリーダーはピリピリ、若いバイトは怒られまくっています。まだこの文化は終わっていなかったのか…と思いながら少しでも手伝えることを探し家を空っぽにしました。しっかりと大きな家具を最後に積んだトラックの扉を閉め新居に向かい、トラックを待っていると到着したトラックからスポーツウェアを着た黒人さんが降りてきました。「はて、誰だ?」と思っていると黒人は僕に「チュワーッス」と軽く頭を下げ家具を運び出しました。僕がキョトンとしているとリーダーが一言「すいません、さっきの若いの昼飯の時に飛んじゃって…」。どうやら作業着を着たまま逃げ出してしまった様子。OH メ~ン、若者よ。僕のせいもあるけどもう少し頑張ろうぜ。
 そこからの作業は自分も入り手伝いながらダンボールのバケツリレー大会に参戦。ダンボールはお互いが決まった持ち方をして向き合って渡すと相手の手を間違って触ってしまうなどのミスがなくスムースに進みます(異性同士で不意に手と手が触れちゃって「あんっ!」ってなるあの瞬間の気持ちを一部ではチョメスというらしい)。前の人からダンボールを受け取りすぐさま次の人に渡す、その時にリビングだの寝室だのダンボールの行き先も伝えリズムよく、はい! はい! はい! 
 「おおなんだかこの作業」
 はいっ! はいっ!
 「ああ、懐かしい!」
 はいっ! はいっ!
 「まるで若返ったようだ!」
 稼いだ金を貯めてアメリカにスケボーしに行くぞ! という当時の気持ちが蘇ってくると僕の動きはさらに良くなります。はい! はい! はい!…リーダーが僕の動きを見ながら、「なんか動きが慣れてますね? 経験者ですか?」。とっさに嘘がつけない僕は「ああ、あ、いや、すごい昔にちょこっと…」と返すのが精一杯でした。
 そういえば春で思い出すことがもうひとつあります。10年くらい前の春、池袋のスケーターでここのコラムも担当する弟子 (大本芳大)から「とても重要なことを伝えなくてはいけないから今夜銀行前(池袋のOGスポット)に集合してくれ」と池袋スケーターみんなに連絡がありました。LINEとかもない頃だったのでどのような連絡網だったかは忘れましたが、片っぱしからみんなに連絡してそれを伝え、そのうち数名のスケーターがその夜銀行前に集まりました。みんなを前にした弟子は重要なことを今から伝えると改めてかしこまり、大きく息を吸い「春が来たぞーー!!」と叫んだのでありました。そういえば弟子は元気かな? 春っていうのは変な人も増えるので気をつけたいものですね。

Daisuke Miyajima
@jimabien

M×M×Mの敏腕スタッフにして自称映像作家のジマこと宮島大介。伝家の宝刀Fs 180フリップをなくした今、どこへ向かっていけばいいのか迷走中。本能の閃きをたよりに書き綴る出口なしコラム。

  • NB Numeric: New Balance
  • etnies Skateboarding