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大村スケートパーク セクションデザイン編
──女性目線のインプット

2022.08.11

 今年11月に長崎県大村市のボートレース大村にオープン予定の「大村スケートパーク」シリーズ企画の第3弾。今回はパークセクションの土台作りを担当したNIGOこと足立 梓。主宰するSKATE GIRLS SNAPなどの活動と併せてパーク建設の初期プロセスをご紹介。

—MK

 

 

VHSMAG(以下V): まずスケートを始めたきっかけからお願いします。

NIGO(以下N): スケートを始めたのは2017年の5月くらい。駒沢のスケートパークにずっとBMXしに行ってて、気づいたらスケートボードに乗ってたって感じです。

V: 今でこそ女性スケーターは珍しくなくなったけど、当時のイメージはどんな感じだった?

N: みんなだいたい同じ格好をしてるなって感じでした。スキニーパンツ、白Teeにキャップやニットとか。そういうイメージ(笑)。

V: 当時と比べて女性スケーターのイメージや人口は変わったと思う?

N: だいぶ変わったと思います。ファッションもそうですけど、上にも下にも年齢層が広がってて。スクールやイベントを見ても女性スケーターが増えた印象があります。2016〜'17年頃にストリートファッションが流行ったのと、オリンピック競技に決まったのが大きかったと思います。あとはファッションも'90年代のブームが来たりして、スケートを始めたいと思う女の子が増えたんじゃないですかね。競技とファッションがちょうど合わさったというか。

V: Nigoちゃんはフォトグラファーとしても活動してるけど、現在手掛けてるプロジェクトについて教えてください。

N: 今やってるのは、Skate Girls Snap(https://skategirlssnap.com/)というウェブサイト。ガールズスケーターの写真を載せて、そのスケーターの好きなブランドだったり、ファッションだったり、デッキのセッティングを紹介してます。女の子のスケーターが少なかったときに、「女の子ってどういう板のセッティングがベストなのかな」って考えたんです。でも検索して出てくるのは、セッティングもファッションも男の子目線のものばかり。だから女の子が参考にできるものが欲しくてこのウェブサイトを作りました。リアルな女の子の今の姿を見れる場所です。

V: たしかに女性に特化したウェブサイトはなかったよね。

N: 私は写真を撮るのが好きだったんです。それで撮りまくってたら、他にこういうことをやってる人はいないと思って。映像を作ってる人は女性でも昔からいるじゃないですか。でもちゃんとした機材でスケートをしてる姿を撮って写真を発信してる人はいなかった。スケートスキルはまだ男性に追いついてないかもしれないけど、日本にはガールズスケーターが実際に存在してるんです。それならやっぱり発信しないともったいない。そう思ってインスタにずっと投稿してたんですけど、まとめてウェブサイトで発信したら面白いんじゃないかなと思って。

V: これまで撮った写真で印象に残ってるものは?

N: 関西が地元ということもあって関西の方にも行くんですけど、逆に関西の若いガールズスケーターたちが10人くらい神奈川に来てくれたんです。そのときにうみかぜで一緒に滑ったんですけど、その日に撮った写真がすごい記憶に残ってて。そのときはひとりがメイクするまで10人くらいが後ろから追いかけて撮ってたり、見守ってたり、応援してたりしてたんです。それでメイクした瞬間を撮ったら、全員が「わぁーーーー!!!」みたいな。何だろう…「これがスケートボードだ!」っていう瞬間を撮れたのが印象深かったです。




V: 写真を通して伝えたいことは?

N: 女性目線になっちゃいますけど「女の子でもスポットで何かを残せる」ってことだったり、さっきも話した通り「日本にこういう女の子のスケーターがいる」っていうこと。規模が大きくなっちゃいますけど、日本だけじゃなく世界に向けてちょっとでも知ってもらえたらなっていう。みんな楽しいからスケートしてるんで、その楽しさが伝わればいいかなって思います。

V: ではこれまで行ったり参加したプロジェクトで印象深いものは?

N: Nike SBの“Japan Diary”ですね。私を含めて4人のスケーターの女の子を自然な形でフォーカスしてくれました。だいたいミュージックビデオとかプロモーション映像とかの撮影って、そのブランドに染められちゃって台本があって…という感じなんですけど、このプロジェクトは私たちのそのままの姿を撮りたいってことでした。クルーがほぼ海外の人で、移動もでっかいロケバスにスタッフ用の乗用車。あと私が運転して移動するカットも撮りたいということでそれ用の車も用意してくれました。さらに消毒とか検温とかする白衣着たお姉さんもいて。でも撮影日は全部雨(笑)。雨で路面が濡れてるなか滑ったり、ポートレート撮影をしたり。

V: あの動画が出たあとは反響が大きかったんじゃない?

N: 反響はめちゃめちゃ大きかったです。動画がNike SBのインスタで出たときはたまたま帰省してたんですよ。昼に起きたらインスタの通知がえらいことになってて。さらにNikeのスケートだけじゃない他のカテゴリーでも発信してもらえて。振り返るとそれがきっかけでいろんな話も来るようになった気がします。最近も『GENIC』っていう写真雑誌から仕事のオファーが来たり。オファーが来る度に聞くんですけど、Nike SBの動画を観て私のことを知ったっていう人が結構いました。あの動画が勝手に私の名刺代わりみたいな感じになってて、そこからお問い合わせをいただくようになりました。

 

V: ちょっと話は変わるけど、男が知らない女性スケーターならではのあるあるみたいな話があれば是非。

N: 何だろう…。股に板が刺さったら男の子は痛いですよね。女の子も板が刺さると股間がめっちゃ腫れて、テニスボールくらいの金玉みたいなものができるって言ってました。その写真も見せてもらったんですけど、紫色の玉ネギみたいなの付いてて。手術で切って、血を抜いて、安静にするっていう。そうなった女の子を3人知ってます。女性ならではというか、女性も結構つらいよっていう。

V: おお…それはつらい。ではそんな大変なこともありながら、Nigoちゃんにとってスケートボードの魅力ってどんなところ?

N: スケートボードって部活がないじゃないですか。野球、サッカーとかテニスっていうスポーツは部活があって、上下関係あって、怖い先生がいて、親からのプレッシャーとかがあって…。でもスケートは自由に滑ってみんなで高め合うんで、上下関係はほぼないと思ってます。だからオリンピックでもメダルを取った子も取れなかった子もみんな仲良く称え合ってて…。いい意味で上下関係のない環境で育ってきたから、そういうのがいいなって思います。みんなが自由でいられるスポーツ…。いや、スポーツじゃないな。遊び。遊びですよね。自分の好きな格好でいいし、自分の好きな滑り方でいいと思うし。

V: では今回、長崎の大村市のスケートパーク建設に携わるようになったわけだけど、その経緯を教えてください。

N: 長崎県大村市に初心者や女性に向けたスケートパークを作ることになって、女性スケーター目線のアイデアを取り入れたいということでお手伝いさせていただくことになりました。

V: その最初のプロセスも結構面白かったよね。

N: そうですね。山中湖に打ち合わせでお邪魔したら…いきなり粘土をこねることになりました(笑)。粘土とか木べらとか、小学校の図工の時間以来初めて見るセットが出てきて。「粘土で模型を作る?  え?」って。「完成するまで帰してくれないなー」って思いつつ(笑)。私はスケートパークを作ることに関しては素人なので、とりあえず自分が「あったらいいな」って思うセクションを粘土で作って模型に置いていきました。しかも実際のパークがイメージできるようなものを作らないとだめだったんで、完成するとリアルな感じで楽しかったです。

V: あの日はどんなイメージでセクションを考えていったの?

N: 初心者と女性目線っていうのを最初に聞いてたんで、私がスケートを始めた頃にあってほしかったものをイメージしながら作りました。たとえば初心者でも挑戦したくなるようなセクション。スケートパークで50-50の練習をしたいと思っても、大きいセクションしかなかったら無理じゃないですか。それよりも初心者や女性がやってみたいと思えて、徐々にレベルアップしていけるようなセクション。でも同時に上級者でも楽しめるような仕掛けというかセクションもあったほうがいいと思いました。

V: 思い入れのあるセクションは?

N: 変形のマニュアル台です。ただのマニュアル台はどこにでもあるけど、いろんな要素を合体できたらそのときの発想次第で面白いことができそうっていう。海外のスケートパークで面白いセクションを探してたら、そういう感じのものがあって参考にさせてもらいました。私はウォーリーが好きなんで、そういう動きもできるようになってます。

V: ではNigoちゃんがスケートパークに求めることは?

N: 単純に毎日行きたくなるような場所。それはセクションだけじゃなくて集まる人もそうなんですけど、上手い人しか来ないパークだと初心者は入りづらいかもしれない。スーパーキッズばかりでもそういうコミュニティだけになってしまう。老若男女問わず、上手い人も、初心者も、大人も子供も、いろんな人が集まって、それぞれがちゃんと自分のスケートができるパークがいいなって思います。

V: ボートレース大村のパークもそういう場所になればいいね。

N: 実はそう思うようになったきっかけがあるんですよ。先日、関西に新しくできたパークに行ったんですけど、ローカルスケーターがいなくてほぼ子供ばかりだったんですよ。荒れ放題っていうか…。キックボードやブレイブボードとか、ただ走り回ってるだけの子がいたり。スケートパークというより子供用の遊具みたいな感じでした。そういうスケートパークとして機能しない無法地帯を見て、こういう空間になったら怖いと思いました。だから長崎のローカルスケーターのみなさんともそういう点について話せる機会があればと思ってます。あとは実際にセクションを作っていく現場でローカルスケーターのみなさんの意見も反映していただきたいです。やっぱり地元の人が楽しめるパークになるのが一番なので。

V: ではパークが完成したらどんなふうに滑ってみたい?

N: ひとつひとつのセクションを粘土で作ったあのときの感じを思い出しながら滑りたいです。「このレールは粘土を細く丸めて作ったな〜」とか(笑)。噛み締めながら滑りたいです。

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