Special columns written by skaters
スケート識者たちが執筆するスペシャルコラム
DAISUKE MIYAJIMA

M×M×Mの敏腕スタッフにして自称映像作家のジマこと宮島大介。
伝家の宝刀Fs 180フリップをなくした今、どこへ向かっていけば
いいのか迷走中。本能の閃きをたよりに書き綴る出口なしコラム。

第22回:リアルカスです

 何をしているときかは忘れましたが、不意に電話が鳴りました。お相手はいつもお世話になっているこちらVHSMAG様。7月8日に行われるG-SHOCKのREAL TOUGHNESSでMCをやらないか…と。かなり大きなイベントだとはわかっていましたが、家庭の事情やら仕事の都合などを確認した上で「よろしくお願いします」と答えました。今思えば、この時点で相当調子をこいていた自分に一発屁でもかましてやりたい気分です。

 自分がこの時どの様に調子をこいていたかと言いますと、自分に対する過信です。元々結構な緊張症の僕ですが、何年か前に初めてMCをやった時に割と大勢の前で特に緊張もなくMCをこなすことができて「あれあれ? もしかして僕イケちゃう感じ?」と思ってしまったのがきっかけだったのかもしれません。勘違いをしたまま、ここまで来てしまったのです。

 イベント当日、金曜夜のイベントだったため会社を早めに上がらせてもらい、電車で目的地の東京ドームシティーホールに向かう途中、乗り継ぎのために飯田橋の駅のホームで電車を待ちながら「イベントが始まったら自分が登場する瞬間何をしゃべろうかな? 『みなさんこんばんは~~!』ってやっぱこれか? どんなパフォーマンスをしようかな?」などと考えながら来た電車に乗り込こみドアが閉まった瞬間に気がつきました。目的地の水道橋とは逆方面に電車がフェイキーしています。「OH SHIT….」。 ふとポッケに突っ込んでいた手がおかしいことにも気がつきました、妙に濡れています。て、手汗が半端ねぇ……。あれ、もしもし? もしかして僕、めちゃくちゃ緊張してる?

 急いで戻りなんとか現地へ着。軽く必要事項を確認しながら軽食を済ませ、会場にインすると大勢のスタッフが忙しそうにワサワサ動いています。いや、イヤイヤ、わかっていたよ!? 今までに僕がMCまがいなことをしていたイベントとは訳が違うってことくらい知ってたさ。ここのコラムでも前にMC務めてた上田 豪くんがどんなイベントか書いてたじゃん。実際前回のイベントだって見に来たし知ってるってば!

 誰を相手に言い訳しているかわからない僕の心の叫びとは真逆に、僕の手汗の量は増える一方。リハーサルで細かく指導してくれる予定だった舞台責任者の説明は北斗の拳の「アタタタタ」にしか聞こえない。予選の感じはちょっと掴めたが「決勝はどうするんですか?」と聞くと「ほとんど一緒! 台本どうりっ」。ニコっと笑顔を見せて去って行ってちゃうじゃん。「えーとねぇ、はッ?」。頭の中の天使の僕が「ガンバレー」と叫ぶ中、もうひとりの悪魔の僕は「お前はすでに死んている」とニヤニヤしていた。完全に悪魔の方の僕が正解ですね。

 控え室に戻り食欲もあまりない僕の横で、ジャッジで参加する村岡洋樹が支給された弁当をバクバク食べている。よくわからないムカつきを覚えながら、何日か前に自分が嫁に言った言葉を思い出す。「僕さ、なんかMCの時ってあんま緊張しないんだよねっ」…。とてもバカですね。

 ついに時間になりステージに上がる瞬間が来る。名前を呼ばれ飛び出す。ライトが眩しくて観客席はほとんど見えない。どこに向かってかわからない自己紹介を済ませ選手を紹介する。ジャッジを紹介する。さっき弁当をバクバク食べていた村岡洋樹の緑のTシャツが見える。頭の中が真っ白になることだけをなんとか防いでいたかのような防戦一方な感じだったのを覚えています。10人のスケートボーダーの12分間のJAMセッションで5人がファイナルに勝ち上がるというルール。早速ゲームが始まったと思ったら、舞台裏で出番の直前に「めっちゃ緊張してます」と言っていた池田大亮が尋常じゃないレベルでトリックをメイクしまくっている。僕は緊張のせいで自分が持っているマイクが今にも落ちそうなほど手が震えている。若きエース堀米雄斗がこれまた異常な動きを見せている。僕はマイクと逆の手に持っている進行表の紙を緊張で震わせている。いつも撮影で一緒に動く砂川元気がここ最近磨きをかけているインバートをメイクしている。その瞬間にも逆側で外国人選手が何かをメイクしている様子。僕はキョロキョロしている。舞台後方にある時計を見るとまだ3分しか経過していない。その時思いました。「僕は今までの人生で一番緊張している…。なう」

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 その後、乗り切っているのか押し切られているのかよくわからないまま12分が過ぎ、ジャッジが集計を行いファイナルに駒を進めるスケーターの発表待ちの間を持たせるという任務もあったため、何人かにインタビューする時間がありました。僕は英語に多少の自信があったため、これまた調子をこいていたのでしょう。自分の気になっているスケーターのボビー・デカイザーに「How do you feel now?(今の心境は?)」と質問したところ「Relieved」と聞いたことあるような無いような、要するに意味のわからない答えが返ってきてしまいました。僕の頭の中は「パ、パードン?」となっていましたが、他に何か別のことを聞いて「Relieved」の方は訳さずにもみ消してしまおうと思い、「他には?」と聞くと「それだけ」と一蹴。自分の単語力のなさに嫌気が差し完全に思考が一時停止した後「何かあったらイベントメインMCの井手大介さんに振っていいよ」という舞台責任者の言葉を思い出し「井手さんRelievedって何すか?」とマイクを通し間抜けな顔をして井手さんに振る僕。井手さんはマイクに顔を近づけ「安心した」とゆっくり一言で訳してくれたのですが、安心したのは僕の方でした。おかげさまで一生、この「解放」の意味を持つ単語を忘れることはないと思います。

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 緊張や恐怖で「キンタマが縮み上がる」とはよく言ったもので、極限状態の僕はまさに12分間その状態だったのか、終わって裏に引っ込んだ瞬間全身が緩む感覚とともに、キンタマに激痛が走りました。強く握られて麻痺していたマイキンタマに感覚が戻ったような感じでした。その後のファイナルは何とか緊張も解けて、手が震えることもここに書く面白いことも無いのですが、とにかく出ていたみんなの、大舞台で次から次へとトリックを量産しまくるレベルの高さに脱帽しまくりでした。最後は大会前にオレンジジュースを飲みすぎて「腹が痛い」と青い顔していたにも関わらず、得意のビッグスピン系のトリックのレパートリーの多さと地獄のようなメイク率でゲームを支配した最年少の池 慧野巨の勝利でゲームは幕を閉じ、僕は完全に「Relieved」状態でした。 

 そんな僕の状態を見ていたのか、BMXフラットの超ドプロMCであるNobくんにその夜のアフターパーティで、MCとはなんぞや的な熱い話をしてもらいました。MCってのはお客さんとプレイヤーをより深く繋げることができる唯一のポジションである…と。確かにその通りだと思います。そして今回緊張しすぎて恥ずかしい思いや悔しい思いをしてしまったけれど、もしまたチャンスをもらえるのならいっそのことこのポジションを極めてみたいな、と強く思いましたとさ。

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