ADIDAS SKATEBOARDING

常識の外側
──コロンブスの卵

2026.05.01

 「コロンブスの卵」という言葉を聞いたことがあるかと思います。「あれ…どんな話だっけ?」という方のために説明するところから始めるとしましょう。食卓にあったゆで卵を指し、「誰かこの卵を立てられるか?」と周囲に問いかけた。誰も立たせることができないのだが、コロンブスは卵の端を軽く叩き潰すことで立たせて見せた。すなわち「誰もが知っている簡単なことでも最初にそれを成し遂げるのは難しい」「人がした後では、何事も簡単に思えるものだ」というような文脈で使われる表現であります。
 スケートボードのトリックって難しい。それがスポットレコードを更新しようとするような場合はなおさらであります。しかし思うに、スケートボードの世界にはまだまだ発見されていない、意外なトリックが潜んでいるはず。先日発表されたHeroinの『Mutate Or Die』にはそんなトリックが多く収録されていたように思います。彼らのスケートは目を疑うようなハンマーだったりテクニカルなものでもなければ、それこそ上手なプロであればあっさりとコピーできちゃうようなものかもしれません。しかしそんなドプロたちも見落としてきたような、また一般視聴者サイドから見てもイメージが及ばなかった法の抜け穴みたいなトリックやスポットの使い方をこれでもかと提示してくれている。まるでまだ名前すらないようなトリックをやらかしてくる。「人がした後では、何事も簡単に思えるものだ」を具現化しているかのようで、ついソワソワしてしまいます。いや、言うても間違いなくスケボー上手な人たちだから、簡単なことをやってるはずはありませんが。
 このビデオとともにハヤテングこと上村 颯のプロボードがサプライズ発表されたのも、ここ最近のホットなニュースではないでしょうか。個人的には某映像プロダクションでの撮影でよくスケートを共にし、関東や関西はもちろん、四国や沖縄で彼から繰り出される数々のコロンブスの卵的トリックを目撃してきただけに、喜びもひとしお。
 そうそう、そんなハヤテングの滑りに影響を与えてきた大先輩にして長年Heroinのプロライダーを務めるのはチョッパー氏。かなり昔ですが雑誌のコラムか何かで「コロンブスの卵」という表現を使ってトリックを解説していて、今回はそこから拝借させてもらったところっす。コロンブスの卵的トリックを狙って普段スケートしている自分ではないですが、時に失敗の中からそんなトリック、名前もないようなトリックが偶然生まれたりもする。スケートボードのそんなところがジワるもので、それを大事に温めたりしてるんすよねー。

—Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 




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