Nike SB dojo | スケートパーク

「スケートシューズ」というカテゴリーはスニーカー市場の中で確立されています。今は多くのスケ…
──第10回:スケートシューズ

2017.01.31

 「スケートシューズ」というカテゴリーはスニーカー市場の中で確立されています。今は多くのスケートシューズブランドがあり、どのブランドもかなり高いクオリティのスケートボードに適した靴を作っています。自分がスケートボードを始めた’80年代後半はスケートシューズブランドは数える程しかなく、スケートシューズブランドの靴の入手も容易ではなかったので、基本的には安価で手に入りやすく耐久性も高いバスケットボールシューズを履いていました。

今では絶対に考えられませんが、'80年代後半当時、ワゴンセールで¥1,980くらいで入手可能だったNikeのAir Jordan 1をみなこぞってスケートシューズとして履いていました。スケートシューズブランドは入手困難でしたが、ワゴンセール価格でAir Jordan 1を入手してスケートボードができたいい時代でもありました。当時、Air Jordan 1を愛用していたスケーターはたくさんおり、写真のナタスやTGも履いていました。黒×青のカラーリングは、残念ながら当時日本では見かけませんでした。スケーターにとってAir Jordan 1がなぜ愛されるのか書かれたコラムも発見しましたので、英文ですがもし良かったら読んでみてください。

 
http://www.modern-notoriety.com/how-the-air-jordan-1-became-significant-in-the-skate-world/

 

'80年代後半から'90年代前半までにスケート業界ではさまざまなアイデア商品が登場しました。靴に穴が空くことを防ぐラバー製のオーリーパッド、トゥキャップ、靴紐が切れることを防ぐスエード製のレースセーバー。壊れたり、穴が空くことを防ぐための原始的なシステムではありますが、スケートシューズとしては重要な点をおさえており、デザインも今となっては逆に新鮮さを感じるAIRWALKが'87年にリリースしたVicモデル。

 

 スケートシューズの品質が今のレベルになるまで、さまざまな過程があったと思います。特に'90年代後半からスケートシューズの進化が一気に加速したと自分は考えています。2000年初頭までに国内外でたくさんのブランドが立ち上がり、今も展開しているスケートシューズブランドの多くがこの頃に立ち上がりました。自分も2000年にTransmitというドメスティックスケートシューズブランドに携わっていたことがあり、当時のことをよく覚えています。

 

2000年頃に自分が運営していたアパレルブランドRGOAとスニーカーブランドPRO-Kedsさんとの共同開発で立ち上げたTransmit Skate Shoesのツアー動画。'00、'01年に行われた2回のツアーは全編PossessedのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。スケートスキルが高く勢いのあるチームライダーたちがみな素晴らしいライディングを披露しています。

 

 現在はヴァルカナイズドソール(※注1)がスケートシューズの流行になっていますが、2000年頃はカップソール(※注2)のスケートシューズが主流でした。その頃、ストリートカルチャーが世間でクローズアップされており、スニーカー自体流行のひとつでもありました。当時Hip-Hopの影響からファッションもスポーツテイストのものが多く、スニーカーもバスケットボールシューズやジョギングシューズが人気でした。スケートシューズもこれらのデザインを取り入れたアイテムを多くのブランドが発売しました。靴の構造はカップソールメインで、デザインもゴツゴツしたイメージが多かったです。当時流行っていたアウトソールにエアーを入れて衝撃を吸収させる機能を搭載したスケートシューズもありました。スケートシューズブランドの多くが最先端の機能を求めデザインを追求する傾向があったと思います。しかし一方では、デザイン性を追求したばかりに機能性が損なわれるようなこともありました。一時スケートシューズで流行し、ほとんどのスケートシューズブランドが採用していた分厚いシュータンがいい例です。これはスニーカーにボリューム感を出すためにはいい方法でしたが、実際には足の甲を圧迫してしまい履き心地は決していいとは言えませんでした。

 

他のブランドとは一線を画すブランドイメージで人気だったI-Path。ヘンプ素材を使用した独特なデザインは他のブランドにはありませんでした。そんなI-Pathでも先端機能的デザインで分厚いシュータンのモデルがありました。ヘンプ素材を使用しトレッキングシューズのようなデザインに仕上げているところはさすがI-Pathです。

 

 見た目が機能的なデザインの流行が落ち着く頃には各ブランドはさらに独自の開発を進めました。スケートシューズで重要なことはもちろんスケートボードがしやすいことですが、壊れにくいことや衝撃から足を守ってくれることも重要です。スニーカー本体の強度を上げるために丈夫な素材を使用したり、壊れにくい構造を考案し、衝撃吸収性を高めるためにインソールに着目して開発に力を入れるようになりました。構造が比較的にシンプルなヴァルカナイズドソールのスケートシューズが現在主流になっているのは、インソールテクノロジーの発達が大きな要因だと自分は考えています。大手のスニーカーブランドに引けを取らないアイデアや技術をスケーター目線で開発したからこそ、多くのスケートシューズブランドがビジネス的にも成功したのではないかと思います。Vansはもちろん、DCやLakai、DVSはそのいい例だと思っています。特許を持っているスケートシューズブランドはたくさんあるのではないでしょうか。
 Transmitでスケートシューズの開発の携わった経験をもとに、最近自分もPossessed Shoeというスニーカーブランドを始めました。2000年当時自分はTransmitのラインナップの中でもシンプルなデザインの靴を担当していましたが、今現在自分が作っている靴と比べるとかなりのボリュームにびっくりします。もちろんカップソールとヴァルカナイズドソールの構造上の差もあると思いますが、それでも当時は自分なりにかなりシンプルなデザインにしたつもりだったで、型や構造の違いがあれど同じサイズの靴でここまでボリュームが違うと衝撃的です。

 

TransmitのチームモデルT-1とPossessed ShoeのSlappy。カラーリングと靴のシルエットに時代を感じます。

 

 スケートボードは2020年開催の東京オリンピックから競技のひとつに採用されたので、より一層競技化が進むと思われます。競技になったことでトリックの難易度や完成度がどんどん上がっていくと思うので、楽しみでもあります。例えるならば、技の難易度と完成度を競うフィギアスケートや新体操のような競技と同じになると考えています。それに伴い競技用の道具も進化し、より機能性を重視したデザインのアイテムが増えるでしょう。大手スニーカーブランドも本格的に参入してきているので、今後のスケートシューズの進化はかなり期待できると思います。しかし、スケートボーダーはスケートボードのバックグラウンドカルチャーを重んじるため、オリンピック競技に採用になるまでに業界内で慎重に根回しをするような動きがあったと聞きました。自分の中ではスケートボードは生活の一部だと考えています。スケートボードをすること自体もそうですし、ファッションも重要な要素です。自分が普段好きで着ている服のままスケートボードをできることが大前提と考えています。その一方で、競技としてのスケートボードが進化し、それに伴って驚くようなテクノロジーを採用したスケートシューズが登場するのも楽しみにしています。
 '80年代後半、'90年代のスケートシューズ市場はスケーター自身でなければ分からない特殊なものであったが故に、大手スニーカーブランドは業界へ参入することができずにいました。しかし今となっては時代も市場も変化し、大手ブランドの勢力が主流となっています。これからオリンピックがスケートボード業界にとってビジネスチャンスになるのであれば、スケーター自身が考案し、スケーターならではのアイデアを盛り込んだ商品を作るブランドが成功できるチャンスではないかと考えています。今後はもっとスケーター自身が業界を引っ張っていくようになることを願っております。

 

※注1:ヴァルカナイズドソール スニーカー本体とソールを接着する際に使用するゴムを化学反応によって硬化させる製法のこと。ソールと本体の境目にラバー製のフォキシングテープが巻かれているのがデザインの特徴でソールが剥がれにくいとされています。
※注2:カップソール スニーカー本体とカップ形状のソールを縫製や接着で組み合わせたソールのことです。ソールの形状を自由に変えることができ、ヴァルカナイズド製法のように化学反応させる工程がないため、使用する素材に制限が少なくデザインの幅を広げることができます。

 

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