つい数時間前、アメリカ人ふたりを成田空港へと送り届けた―――。
怒濤の1週間。実り多き1週間。そして疲労困憊した1週間。1日、1日があっという間に過ぎ去り、気がつけば来訪者は帰国。久々にオフィスに顔を出せば、ホコリがうすく広がるデスクの上には書類や郵便物の小さな山ができていた。
今回日本でアテンドした彼らは、スケートとはまったく別のプロジェクトでボクと関わるアメリカ人。どちらかといえばアクティブな思考ではなく、家で静かに過ごすのがお好きな人たちのようだ。料理、読書、そして掃除。日常のごくありふれた行動の中に美意識を見出し、広く浅い交友関係よりはごく親しい友人との密接な関係を重んじている。これまで数々会ってきたスケーターやバイカーなど、パンチの効いたアメリカ人とは相対するところに位置する、優等生タイプというところだろうか。
そんな彼らゆえにスケートについても興味がないだろうと、あえてそのカルチャーについての話はしなかったのだけれど、ボクがスケートの雑誌を作っていると知ると、彼らは意外な食いつきをみせてきた。 「スタンスは? パーク派orストリート派? 好きなスケーターは?」などなど。ありふれた質問ではあるけれど、こちらが答えればフムフムと、それなりのリアクションを返してくる。時には「あのオブジェはスケートフォトグラフィにいいんじゃない!」 なーんてスポットシークまでしている。いやはやこれには驚いた。だってあなたたちTシャツ・インの7:3分けコンビでしょ。そんなあなたたちとまさかスケートの会話をするなんて思ってもみなかったよー。
てな具合に自分の驚きを彼らに伝えたところ、彼らはニヤニヤしながらこう応える。「ボクたちアメリカ人だよ。スケートの基本的なことくらい、小さいときに身についているさぁー」。
ほうほう。さすがはアメリカ人。ボクら日本人男性が野球についてのそれなりの経験と知識を持つように、アメリカ人であれば、スケートの“い・ろ・は”は誰でも心得ているということらしい。そう、それが例えTシャツ・インの7:3分け優等生タイプであってもだ。
帰りがけの空港で7:3分けコンビのひとりが、サヨナラの挨拶の中で、アメリカの自宅にはGirlのステッカーセットを保存してあるから、それをすぐに送ってくれると約束してくれた(笑)。別に欲しくはなかったけど、「本当にありがとう!」と感謝を伝える。すると彼はまんざらでもない顔で、旅行客の渦の中へと消えていった……。
それにしても恐るべしアメリカ。今回ほどアメリカン・スケートカルチャーの大きさと偉大さを感じたことはなかったと思う(笑)。
――Kota Engaku