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プラスアルファ
──ツマミ話

2023.03.10

 スケートボードは残酷だ。「初めてスケボーに乗ったときに転んで骨を折った」なんて話も聞いたことがあれば、ドプロだってなんてことないタイミングで大怪我をしてしまい、長いこと滑れなくなってしまうこともあるのです。頭や顔面をぶつけては血まみれ…なんてグロ映像だって少なからずのスケートビデオに映し出されます。それらはあくまでも表面的な残酷さであり、身体的な痛みを伴うそれとはまた違った残酷さを孕んでいるのがスケートボードの世界かと思います。「スケボーって残酷だ…」スケート歴もそこそこ長い人が集まる酒の席では度々テーマとなっているのではないでしょうか。
 手短に言うと、「どんだけスケートが上手くても、それだけじゃ…」ってな話題。本来であればスケーターというものは滑りで評価されてもいいところ。ですが、たとえば同等なスキルを持ったAとBという上手なスケーターがふたりいたとして、Aは世間で注目される一方、もう片方Bはあまりパッとしないように思われることって多々あるのです。それよりもスキルで見ると幾分下のC、D、E…というスケーターの方が注目されることがごく当たり前に起こってもいます。それは何かというと「スタイル」「ビジュアル」「運」とかって抽象的な部分が大きいと思うのですが、それも上手く見せられるか否かも肝心になってきます。スキルだけでは説明のつかないその何かを持ち合わせてようやく注目され始めるのです。世間からの注目など気にせず自分の楽しみでスケートに打ち込む、それで結果的に注目されたのならラッキー。しかしスキルも十分、注目されたいのにどこか燻っていて上手くネクストステップに上がれない、スケーターからあまり評価されない、そんなスケーターも多くいるように思えます。
 「スポンサーや周りがイケてない」「格好がダサイ、髪型がダサい」「どこそこのローカルだ」…やれスケーターというものはスケート以外の点でディスをするという行為も好きな類であるようです。裏で言われる側の本人はどれだけ上手くとも、そんなマイナスイメージを払拭するほどの動きがなければ上に這い上がれません。そしてそれが一番難しく、時に例のAとBといったようにスケーターの明暗すら分けかねてしまうのです。
 もはや自分ではどうすることもできない運次第なところもデカい。それがスケートボードの残酷なところ。でもだから面白いんだよ、スケートボードってものは。あ、僕ですか? 大した滑りも持ち合わせていなければディスがあっても良し、みなさまのふとした酒の席のツマミ話になるんであれば、ええんやで。

─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)

 




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