Nike SB dojo | スケートパーク

社会や政治を皮肉った名作グラフィックの数々を手がけてきたトッド・フランシス。STANCEの招聘によるライブペインティングの合間に独特なアートスタイルの裏側を聞く。
──TODD FRANCIS

2019.06.19

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos_Kentaro Yamada, Special thanks_Stance

VHSMAG(以下V): まずはスケートインダストリーでの職歴を手短に。'93年にアーティストとしてDeluxeに参加したんだよね?

トッド・フランシス(以下T): Deluxeに参加したのは'93か'94年だね。'99年にSFを離れるまでDeluxeに在籍。Real、SpifireやStereoはすでにあって、オレが入った翌年にAntiheroが始まったんだ。

V: Antiheroのイーグルロゴを手がけたのはあまりにも有名だよね。

T: ジュリアン・ストレンジャーとジョン・カーディエルがAntiheroを始めたときにアートディレクターとして迎えられた。というかオレ以外にオプションがなかったから仕方なくという感じだった。とりあえずアーティストはオレしかいなくて、イーグルロゴに決定するまでいろんなアイデアを出し合った。墜落する飛行機や鳩。でも結局イーグルになった。というのも当時のDeluxeを運営していたジェフ・クリントはジュリアンたちがツアーに出るのを待って独断でイーグルに決定したんだ。ジュリアンは鳩がいいと言っていたのに。当時は'90年代半ばでスマホなんてない時代。誰にも邪魔されない状況を作って「他は全部ボツ。イーグルを描け」って。そうやってイーグルがAntiheroのブランドロゴになったってわけ。

V: Deluxeを辞めたのはSFを離れて地元LAに戻った'99年?

T: そう。LAに戻ってからもAntiheroのグラフィックは手伝っていたんだけどね。ナタス(・カウパス)とは長い付き合いでヤツは当時スケーターとしてElementに所属しながらGiant(※ディストリビューション)にいろんなグラフィックを提供していた。New DealやElementのグラフィックを手がけていたんだ。そうしてナタスを通してGiantに入った。ヤツは素晴らしい才能の持ち主だし最高の男だ。一緒にNew Dealのグラフィックを手がけていたんだけど、ヤツはQuiksilverに移籍。オレはGiantに残った。

V: でも最終的にDeluxeに戻ったんだよね。

T: そう。8年前くらいかな。Antiheroのみんなとはずっといい関係を続けてきたから。ずっと友達だったし、Giantにいながら時々グラフィックのアイデアをAntiheroに送っていたから自然の流れだった。ジュリアンとは昔から馬が合ったからいい感じだよ。

V: これまでに数えきれないほどのグラフィックを送り出してきたわけだけど、一番のお気に入りは?

T: 特にはないね。この質問はよく聞かれるんだけど、いつもこう答えるようにしている。ジュリアン・ストレンジャーのK9。警官が自分の犬に顔を噛まれているグラフィック。メッセージ、色彩、そしてジュリアンのシグネチャーということで昔から好きな作品。ジュリアンが一番好きなスケーターだからいろんな意味でお気に入りだね。

V: 皮肉的で政治的。挑発的なスタイルになった経緯は? 昔からそのスタイルだったの?

T: どちらかと言えば最初からかな。このスタイルこそジュリアンとオレが持つ共通点なんだ。ある種の社会や政治的な声明が基盤の作品。互いに飾り飾った美しい作品は趣味じゃない。裏側にそれなりの意味があり、できれば少しでも世の中に変化を起こすことができるもの。とは言っても「立ち上がれ!」みたいなストレートな政治ポスターのようなものではなく怒りに満ちて詩的なもの。ふたりともそういう似たセンスを持っているんだ。Antiheroの初期からこのようなヴァイブスの作品を手がけていたんだけど、時間とともに良くなっていったって感じかな。初期の作品はまだ何をやっているか完全に把握できていなかったからあまり良くなかったんだ。初期のグラフィックを手がけたクリス・ヨハンソンは素晴らしかったけどね。ジェフ・ホワイトヘッドも最高だった。でもオレがほとんどを手がけるようになってからは行き当たりばったりな感じだった。

V: では中でも一番挑発的だった作品は? それによって問題に発展したことは?

T: まあ、訴えられたことはあったね。Eat Shit And Die(※クソ食って死ね)シリーズでファストフードチェーンから訴えられたんだ。あれは結構挑発的だったと思う。大企業を刺激したわけだから。他にもアメリカの一部である意味問題になったものもあった。たとえば反宗教的なもの。残虐的なジョークとかは理解されなかった。あとはウンコに特化したシリーズも手がけたけどウケなかった。だから一番挑発的というのは特にないかな。敢えて言うならファストフードの作品が一番厄介だったからそれかな。かなり金がかかったから。

挑発的な作品の目的はこの世の中に違いをもたらすこと

V: 挑発的な作品を手がける理由は? それを通して伝えたいメッセージは?

T: 一番の目的は人に考えさせること。ショックを与えたり怒らせたりするのが目的ではない。考えさせたいんだ。Antiheroの核はジュリアン・ストレンジャーであり、極めてインテリで思慮に富んだ男。基本的に哲学や目標に関してハードルを高く設定するから、オレの役割はそのハードルを超える作品を生み出すこと。だから挑発的な作品の目的はこの世の中に違いをもたらすこと。スケートショップの壁からそんなメッセージを発しているわけだからおかしな話に聞こえるかもしれないけどね。この世の中を少しでも良くして、できればその途中に笑いをもたらすことができれば最高だね。

V: 「スケートショップの壁から発信している」とは言っても、トッドの作品はPenthouse誌とかスケート以外の世界でも見られているよね。

T: そうだね。その他にもいろいろあるけどね。アートショーも開いているけど、すべてはAntiheroから派生したものなんだ。スケートグラフィック以外のオレの仕事のバックボーンはAntihero。1日の大半をAntiheroのグラフィックを手がけたり考えたりしながら過ごしている。アートショーとかもすべてAntiheroとかけ離れてはいない。オレが手がけるどんなものにもAntiheroの作品と同じようにメッセージと笑いが込められてるんだ。

V: Penthouse誌の仕事はどうやって舞い込んできたの? どうやってスケートコミュニティの枠組みから飛び出したの?

T: ありがたいことに飛び出す必要がなかったんだ。向こうから連絡が来たから。当時のPenthouse誌の編集長がオレの作品を知ってくれててね。ストリートウェアやスケートカルチャーに精通していたんだ。突然連絡が来て「Penthouse誌の編集長だけど、弊社にキミを迎え入れたい。作品が好きなんだ」って。だからすべてスムースに進んだ。

V: スケート以外の世界での仕事はどう?

T: まずスケートコミュニティでは殺人のグラフィックを手がけても問題にならない。特にAntiheroではやりたい放題できる。時々、外の世界でそれが通用しないことを忘れてしまうことがある。スケートやストリートウェアに無関係の人から仕事のオファーももらってアイデアを伝えると引かれることがある。

V: 面白いね。

T: みんな節度があるんだよね。アイデアを出す度に周りから頭がおかしいと思われるんだ。怪物を見るような目で見られる。「面白いですね。でもやりすぎかな。他のアイデアありませんか?」って言われることもある。でもオレは気が狂っているわけじゃない。娘も育て上げているし、やりすぎならそれを抑えることもできる。でも最初のアイデアは飛び抜けてクレイジーじゃないとダメなんだ。それで周りから温度を少しずつ下げられるという感じかな。


 

V: 今回はStanceで来日したんだよね。Stanceとタッグを組むようになった経緯は?

T: 運が良かったということかな。オレの人生はずっとそんな感じで流れている。Stanceのファウンダーのひとりがライアン・キングマンという男でElementのキーマンだったんだ。Elementのチームを組み立ててマネージメントをしていた。しかも20年来の仲。一緒に仕事するのが楽しいし最高のヤツなんだ。そんなライアンがStanceを手がけるようになった。そうしてオレと付き合うはめになったってわけ。

V: Stanceで思い入れの強いプロジェクトは?

T: もちろんコラボソックスを手がけたことが一番。日本に来てこのようなプロジェクトに関わることができるのも最高だね。昨年はブラジルにも行けたし。人生の大半を創作に充ててそれが商品になっているのも光栄なことだし…。でも世界を旅して新しい人と出会い、違った環境で仕事をしながら異文化を体験する。このような冒険が一番。

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V: 挑発的な作風を見ると明らかにパンク精神を持っているのがわかるけど、今日のスケートにその精神はまだ見られると思う?

T: どちらとも言えないね。でもスケートそのものがある意味違法なものだから。器物を破損するわけだし。それ以上にパンクなことなんてないだろう? それにスケーターは多数派とまったく異なるライフスタイルを送っている。毎朝決まった時間に起きて出社するような生活をしていない。そういう意味ではパンクだよね。でもそれにもいろんな度合いがある。とりあえず他の人種とはまったく違う。それがスケーターなんだと思う。

創作で得られる感覚や反応を見るのがたまらない

V: ずっとスケートコミュニティに居続ける理由は?

T: 今の仕事が好きだし、新しいアイデアを生み出す難しさが最高だからかな。それにジュリアンとの仕事は何ものにも代え難い。ジュリアンと互いを笑わせようとしたり。ふたりとももう若くないけど、創作で得られる感覚や互いの反応を見るのが今でもたまらないんだ。若いライダーもグラフィックを気に入ってくれている。若い世代と同じ目線で話すことができているから、ふたりともまだ心が子供なんだ。脳が若ければ希望はある。あとはまだキックアウトされていないからスケートコミュニティに居続けられているのかな(笑)。

V: では今後の活動予定は?

T: たくさんあるよ。次の数ヵ月の間にAntiheroのボードシリーズが3つリリースされる予定。Antihero絡みの仕事は絶えない。VansやStanceともプロジェクトを控えているし、アートショーも予定している。ポロウス・ウォーカーと“FOOLS”というアートショーを終えたばかりなんだけど、このコラボもこれからも続いていくと思う。楽しみにしていて。

 

トッド・フランシス
@toddfrancisart

ロサンゼルス出身。'90年代初頭よりスケートインダストリーでアーティストとして活動。社会/政治的メッセージを込めた過激かつユーモラスな作風で知られる。現在はAntiheroのアートディレクターを務める傍らStanceのアンバサダー、Punk & Poetとして活動中。

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