VANS - Jackson Pilz Sk8-Hi Pro

4文字のアルファベットによる視覚言語。ストリートを舞台に行うイリーガル&ヴァンダリズムの表現。
──TECK

2021.06.04

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Photos courtesy of TECK

VHSMAG(以下V): まずは話せる範囲で自己紹介からお願いします。

TECK(以下T): タグネームはTECK。グラフィティライターとして活動をしています。

V: そもそもグラフィティとの出会いは?

T: もともとスケートボードをやっててタグとか見たりはしてたんですけど、毎日滑ってたスポットにいきなりスローアップが描かれたんですよ。それはその辺にタグがいっぱい書いてあったREIって人のスローアップ。もともとREIのタグが気になってたんで手探りで調べたんですよ。SNSなんてない時代だったから。そしたらそこに写真を撮りに来てる人がいて。それで話しかけたらその人がREIだったっていう。それがきっかけでグラフィティに興味を持ちました。

V: それはいつの話?

T: 中2の頃です。父親が神奈川、母親が東京に住んでたんですよ。それで当時は月イチで父親と母親の家を行き来してたんですけど、その道中に車からめちゃくちゃグラフィティが見えて。神奈川に行くときはKANE、AMES、BASK、MAKE。東京に戻るときはQP、EKYS、SPTE、SECTとか。REIを知ってグラフィティと出会った後だったんで、そういうのを見て「すごいな」って思って。ある意味、’90年代後期から2000年代初期の黄金時代。SNSがなくて、本当にストリートに出てやってた人がぎりぎりFlickrとかで写真を上げてたような時代。そういうものを見ながら実際にグラフィティやってる人にいろいろに教えてもらいました。その頃からTECKっていう名前ですね。

V: 中学生の頃からTECKだったんですね。名前の由来は?

T: 後々その人もスケーターだったって知ったんですけど、ECNっていう人が中野を中心に東京でボムしまくってたんですよね。ECNの「E」と「C」のレタリングのラインがすごく気持ちよかったんで、自分も「E」と「C」を使いたくて。さらに「T」も好きなラインなんですよね。それで最後に「K」が来ると締めやすい。だからデザイン要素とリスペクトするライターの名前に含まれた文字が由来です。

V: 活動を始めた頃はどんな感じでしたか?

T: やりながら覚えていったんですけど、グラフィティをやってると他のライターと店とかで偶然会うようになるんですよ。そこで情報をもらったり、一緒に描きに行くようになったり。スケートと似てると思います。スポットでスケーターと出会ってネットワークが広がっていく。街の見方とかもそう。普通に歩いててもスポットを探すじゃないですか。だからスケートとかなり近いと思います。

V: 現在のスタイルに辿り着くまでは?

T: 自分の場合は数ですね。数と範囲を意識してました。最初はどこでも描いちゃってたんですけど、やっぱり家の近所でずっとやっていく訳にもいかないから地元を離れた場所に行くようになっていきました。スケートもそうだと思うんですけど、グラフィティはトラブルがさらに多いんで。そうやってひとりで知らない街に行くようになったんですよね。それで気づいたら活動範囲がめちゃくちゃ広がってたっていう。

V: 活動範囲は無限大ということですね。

T: でも描きに行くっていうよりも、自然と遊んでる場所に増えていく感じですね。「描きに行かなきゃ」とか「描きに行こう」っていうのより、「遊んだついで」っていうのが自分のスタイルかもしれないです。ミッション的な動きはあまりしてないっていうか。自然に描いてますね。

 


V: さっきもいろいろ名前が挙がりましたが、影響を受けたライターは?

T: 東京でスロ―アップを描いてる全員に影響を受けてます。QP、EKYS、VIN、SPTE、ECN…。神奈川ならKANE、AMES、BASK、MAKE。そういう人たちの作品が増えたり減ったりするのを生で見てきたんで。現れたり、消えたり。そういう生きてる感じ。街で動き続けてる人たち。街を攻めてるスケーターのヴァイブスにも影響を受けます。

V: 所属するクルーみたいなものは?

T: まあ、クルーっていう感じじゃないですけど、TPAって描いてる友達とよく遊んでます。それをメインで推してます。

 







タイミングもスポットも見極めが大事

V: グラフィティはかなりハードですよね。スケートより通報されるリスクがあるだろうし、警察に捕まるリスクもある。ボムするときに気をつけることは?

T: スケートとかもたぶん一緒だと思うけどやっぱ攻めるじゃないですか。その引き際のセンスが大事ですね。どんなに楽しいことでもやり過ぎちゃダメじゃないですか。その引き際のセンスがあるかないかでグラフィティを長く続けられるかっていうか。引き際が悪い人がパクられますよね。スケートも同じでメイクするまでやるのももちろん大事ですけど、その結果ケガしちゃうこともある。でもやらないと結果を残せないし。そこを試行錯誤する毎日って感じですね。

V: 引き際のセンスは経験値ありきですね。

T: そうですね。自分の直感もあるし、街の空気とか。それこそ攻めるセンスも大事なんで。人に見られてても「あいつは大丈夫でしょ」っていうときじゃないとシティではキメられない。ギャルだったら「言わないでね」くらいでずっとやっちゃうこともあるけど、見た目がスケーターっぽくてもポリスである可能性があるし。そういうのを見極めるセンスも大事ですね。基本的に自分は街に溶け込んで描いてる感じです。服装も普通で目立たない感じ。でもグラフィティしてると一瞬、時が止まるっていうか。渋谷とか新宿とかでも行けちゃうタイミングっていうのがあるんですよ。「今だ!」みたいな。タイミングもスポットもすべて見極めが大事です。いろんな人のタグが描いてあるところに上から描くときとかは、その昼間に誰のタグがあるか事前に確認するし。見極めが甘くて怖い人や亡くなった人のタグの上に描いちゃったりするのはまずいから。上からスローアップを塗って他の人のタグを消すのはグラフィティのルールではOKなんですけど、やっぱリスペクトしてる人のタグは残したい。ダサい人のスローアップだったら上から塗りますけどね。

V: これまでにグラフィティでトラブルが起きたことは?

T: クラブのパーティでゲストに入れてもらったんですよ。そのゲストリストの名前がTECKになってて。しかもそのクラブの店長さんが自分を探してたみたいで…。ノリノリで最前列で踊ってたら「オマエがTECKか」って連れていかれて(笑)。でも向こうの言い分が正しすぎるんですよ。だってそうじゃないですか。グラフィティの特性上、やっぱり人のものに描くから…つまり、そのときは自分の見極めができてなかったっていう。やっぱりそういう場所でも悪気なく「TECK」って呼んじゃう人がいるっていうか。それでバレちゃって。そういうときはちゃんと謝るんですけど…謝っても済まないんですよね(笑)。結局、許してくれてどうにかなったんですけど、それも紙一重っていうか。それもトラブルのほんの一部でここじゃ言えないこともいっぱいあるし。グラフィティでもスケートでも大事なのはやっぱり見極めです。特にライターの場合は金銭やバイオレンスに発展しちゃうんで。見極めを間違って人生変わっちゃう人もいますから。

V: 恐ろしいですね…。

T: 今はスケートもラップも流行ってるというか、ライトな人が増えてきたじゃないですか。グラフィティもそうなんですよ。Instagramとかでいろんなグラフィティを簡単に見ることができるようになって、スキルのレベルは上がってるんですけど、カルチャーへの理解は超ライトになっちゃってると思うんですよね。それが心に響くかはひとまず置いといて、スケートやラップはライトにやっても大丈夫かもしれないですけど、グラフィティをライトにやっちゃうと食らう部分が大きすぎるんで。自分で責任を取れないんだったら、軽々しくスプレー缶を持って壁に描かない方がいいと思いますね。一応犯罪だし、その中での表現であるわけだから。マジな人が多い世界だから、軽々しくやる前にちゃんと冷静になった方がいい。グラフィティは絵じゃないんで。

 






V: ではグラフィティでのタブーは?

T: ピーススポットっていうのがあるんですよ。それは自分たちみたいに街で描いて消されてを繰り返すんじゃなくて、伝統的に大御所の人たちがゆっくり時間をかけて描ける場所。そんなスポットがまだ日本全国にあるんですよ。描きもしないヤツらがそういう場所の写真を軽々しく撮って、位置情報をつけてInstagramに上げてるのを見ると本当にわかってないなって思っちゃいます。誰でも発信できる時代だからこそ、そういうモラルが大事。プライベートのアカウントにライターのネームをタグ付けしたり。グラフィティには争いもあるんで、それを煽るような内容をSNSにアップしたり。スポットを晒したり。スケートが流行ってマナーの悪いスケーターが増えたことでスポットが潰れるのと似てますね。流行りすぎるとそういうことが起きるじゃないですか。進化してる途中なのはわかるけど、だからこそちゃんとやっていきたいって思います。

V: スケートの場合はスポンサーから給料がもらえたり、それこそオリンピックを目指したりできるじゃないですか。コンテストに勝てば賞金も出る。つまり流行ったことで締め付けが厳しくなっても、それなりのバックが見込める環境になる。グラフィティの場合、人口が増えることで恩恵を受けることはありますか?

T: ありますね。ライターとしての経験やプロップスを使って成り上がる方法はあります。個展をやったり、デザインを依頼されたり、お店を開いたり。ライターとしてそこまで行けたとして、どうするかも見極めなんですけどね。仕事にするってことは自分を売るってことに近い。やりたい放題やった結果、金になるんだったらいいですけど、仕事だったら折れなきゃいけないところもきっと出てくる。金をもらわないで一生やる人もいるし、金が欲しくて仕事にする人もいる。そこに行こうとしてストラグルしてる人もいる。自分も仕事としてデザインを頼まれたこともありますけど、「お金いらないから好きにやらせてよ」っていう形を取ってるし。だからグラフィティが金になるかって聞かれたら、「やり方によってはなります」って答えになります。ただ、それは今の自分がやりたいことじゃないし、金にしたいんだったらこのやり方でやってないですね。

 







シンプルに、難しいことをしないでかっこいいっていうのを目指してます

V: グラフィティではストリートでのプロップスが重要だと思いますが、個人的にイケてるライターの基準は?

T: タグとかスローアップで人柄や思想を表現できてる人。ウソがないものを描いてる人。壁からヴァイブスが出てる人はイケてますね。それこそスケートと似てて、必ずしも難しいことをしなくてもいいんですよ。オーリーだけで映える人もいるわけじゃないですか。でもそれはその人がやるから成立するわけで。その形だったり、スタイルだったり。スキルだけじゃなく、生き様を感じられるものを街に落としてる人がイケてると思います。上手い下手だけじゃないんですよ。イケてるライターの作品からは何かが滲み出てる。

V: では自身のスタイルを敢えて言葉で表現するなら?

T: やっぱり難しいことをしないで「かっけぇ!」って思わせてる人がかっこいいと思います。だからこそ、自分は金のかからない銀と黒っていう色を使ったタグとスローアップで勝負してます。大して難しくないことで人を感動させるのが一番難しいじゃないですか。金をかければいくらでもきれいなものを描けますけど、シンプルに、難しいことをしないでかっこいいっていうのを目指してます。「オーリーとフリップだけでいいです」みたいな(笑)。

V: 中2から一心不乱にグラフィティを続けてきたわけですよね。

T: いや、でも高校のときに一度ゲームにハマったんですよね。それでゲームで全国1位とかになっちゃって(笑)。ちなみに『鉄拳』ですね。ゲームでプロ並みになっちゃったんですよ。『鉄拳』っていう格闘ゲーム界で自分のことを知らないって人がいないってくらい有名になっちゃって。今でもYouTubeに自分のプレイが上がってます。でもゲームは誰かが作ったものなんで、限界があるんですよね。たとえばそのシリーズが変わったらまた初めからやり込まなきゃいけないとか。さらに枠が決まってるからクリエイティブにできないんですよ。挙句の果てにはどんどんシリーズが新しくなるから「あ、これ無理だ」ってなって(笑)。そんなことを4、5年やってました。だからその期間はライターというよりゲーマーでしたね。

V: 凝り性(笑)? では敢えてイリーガルなグラフィティを選んだ理由は? つねにリスクがあるだけにメンタルを保つのが大変なような気がしますが…。

T: それを考えすぎると逆に続けられないですよ。だからイリーガルっていうことを頭の片隅に置きつつやり続けるっていう。今は楽しいから続けてる感じですね。イリーガルだから、危険だからやりたくないっていう気持ちは本当になくて。逆にこれが楽しくないって思ったらやらないです。そういう瞬間が来たら他の楽しいことを見つけてそれに熱中するだろうし。金もいらないし。子供が鬼ごっこするのと近いというか。たとえ意味のないことでも、本当に楽しいからやってますね。

 







V: ではグラフィティは一般社会と共存できると思いますか?

T: 共存できてるんじゃないですかね。だって街を見てもグラフィティが残ってるし。自分が狙うスポットは、遊んでる場所っていうのはもちろんなんですけど、なるべく残りそうな場所を狙うんですよ。人目につくところ、残りそうなところ、自分のいる場所、歩いてる場所。自然と息をするかのように。消されないってことはきっと共存してるのかなと思うんですね。でもグラフィティが嫌いない人も多いと思うんで、そういう人には…なんていうか…「本当にごめんなさい」って(笑)。

V: その辺はスケートと同じ感じですね。

T: そうですね。プッシュしてるだけで通報されるなんて意味がわからないじゃないですか。自分は自転車が好きなんですけど、スケートスポットでスケーターがキックアウトされてる横でウィーリーを練習してても何も怒られないんですよ。「スケートボード禁止」だから怒って、プッシュよりも危ないウィーリーを怒らないってことは、そいつらは単純にそういったルールの上でしか生きてないってことじゃないですか。見極められてないわけじゃないですか。そこに「スケートボード禁止」っていう看板しか立ってないからBMXは怒られないんですよ。でもそこに「BMX禁止」の看板が立った瞬間からルールが変わる。そんなルールの中で自分は生きてなくて。だからグラフィティがダメかどうかなんて…そりゃあ、ダメなんですよ(笑)。でも自分は自分で判断して描いてる。本当にダメかOKか、共存できるかできないかは人それぞれのルール次第ですね。スケートが嫌いな人は「禁止」っていうルールがあるから嫌いなんじゃないですかね。そんなルールを取っ払って改めて判断してもらいたいです。

V: ではこれまで描いてて忘れられない瞬間は?

T: ありますね。ひとりで描いてたら人がやって来たんですよ。しかもその人は自分の描いてるものを知ってて「本当に応援してます」って話しかけてきたんですよね。「そういう人もいるんだな」って思ったことがありました。あと名古屋で描いてたときは逆に怖い人が来て、「俺も超好きだからさ、見張っててやるよ」って言われて(笑)。怖い人が腕組みながらコーナーに立って見張ってくれたんですよ。それで完成して「できました」って声をかけたら「実はオレもやってんだよね」って。その人は「しゃらく」だったんですよ。「しゃらく」って、2006年にJRのタッチパネルにスクラッチして捕まってニュースになった人なんですよ。賠償金が億単位。そんな「しゃらく」が見張ってくれたことがありました。ストリートでは予想を遥かに超えることが起きますね。

V: スケートだとストリートとコンテストがあるように、グラフィティでもストリートと美術館っていう選択肢があると思うんですけど、それについてはどう思いますか?

T: そうですね。美術館の場合はグラフィティではないですけどね。グラフィティっぽいものを美術館でやって「オレはグラフィティだぜ」って言ってる人と、グラフィティをリスペクトしながら金を稼ぐことを選んだ人。そこには大きな違いがあると思います。自分はそんなことはスキル的にもできないし興味もない。興味があるのはストリートだけです。

V: ストリートが活動の場だとやはりいろいろ気をつけないとですね。

T: そうですね。どうしても人に迷惑をかけてしまうんで。以前もSTEPっていうライターとボムしてたときに、そいつが移動中にスプレー缶を遠くの草むらに投げ捨てたんですよ。自分は普段からあまり怒らないんですけど、そのときはブチギレちゃって…。一緒に探して拾って帰ったことがありました。スプレー缶を捨てるなんてライター以外いないじゃないですか。街にスプレー缶が落ちてたら、確実にグラフィティライターじゃないですか。ただでさえ人に迷惑かけてるんだから「余計なことすんなよ!」って思いますね。スケーターも一緒で、街で滑ってたまって人にちょっとは怖い思いをさせてるんだから、せめてゴミを取っ散らかして帰るなよみたいな。ダサいすよね。とことん迷惑かける必要ないじゃないですか(笑)。地元のスケートパークでも、最後にゴミをまとめてるのはそこでずっと滑ってる人なんですよね。そういう人はスポットを大事にしてる。グラフィティでもぽっと出のヤツが壁を汚して缶を捨てたりとか…。ゴミを散らかしたり、SNSでスポットを晒したり。「それがライター」って思われるのがしゃくですね。だから友達でもブチギレました。STEPはスケーターでもあるんで、ヤツがまたそんなことをしてたらみんな怒ってやってください(笑)。

 









V: (笑)。では最後に今後の展望は?

T: 気分でやるのが自分のスタイルなんで、描きたいときに描く。好きなところで遊んで、好きなところに描いて。さっきも言いましたけど、グラフィティは迷惑をかけるのが大前提じゃないですか。だからなるべく迷惑をかけないように続けていきたいですね。

 

TECK

中学生の頃にグラフィティと出会い、TECK名義で国内外でボムし続けるグラフィティライター。元スケーター/ゲーマー。

 

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