そういやシャフトずれって最近ほとんど見なくなりましたね。今の若い世代や、スケート歴の浅い人からすれば「シャフトずれ」ってもはや死語だったりするんでしょうか。昔はちょくちょくあったんですよ、シャフトずれ。ある程度使いこんだトラックに起こりがちだったんですが、トリックに失敗し、デッキがアクスルナットから地面に落ちた際、シャフトだけずれてしまうっていう現象のこと。それでどうなるかというと、地面とぶつかった側のウィールはナットにロックされて回らなくなり、反対側のウィールはその分だけ遊びの幅が増えてガッチャガチャになってしまうという、非常に厄介なヤツ。ガッチャガチャになってしまった側のアクスルナットを地面に叩きつけることで元には戻るものの、それも一度なってしまうと素人には直しようがなく、症状は悪化する一方だったような。お財布空っぽなヤングマンは新しいトラックに買い替えるまで、その厄介事と付き合うしかなかったのであります。
それらシャフトずれがほとんど見られなくなったのもトラックブランド各社の尽力があってこそ。いかつい形をした金属の塊も、時代に沿ってサイズ感や仕様、軽量化などマイナーチェンジを繰り返し、現在のような質の高いものになっています。しかしマイナーチェンジひとつにしろ大がかりなプロセスが必要になるのは容易に想像できます。ミリ単位で綿密に計算されるであろうスペック、金型の製造、ブッシュやピボットの質。そして完成したサンプルをテストし、実際に良し悪しや耐久性能といった品質や機能性がわかってくるのに数週間から数ヵ月かかることでしょう。骨の折れる作業で気の遠くなる話であります。
長くスケーターに愛用されてきたIndependent、Venture、Thunderの旧来の3大カンパニーに、ファンの増加で「4大」とも言わしめるようになったAce。そしてRoyalやKrux、Filmなどに加え、昨今はSlappyやLurpivといった新生トラックカンパニーが注目を集めています。どちらもスケートシーンで活躍してきたスケーターが試行錯誤して開発しています。かつてと違い、誰でもスケートデッキが作れるようになったみたく、トラックを作る障壁も下がったというのだろうか。仮にそうだとしても、トラック作るってすごい熱量が必要な、夢のような作業だよなぁ。
—Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)