
昨年末にリリースしたSb Skateboard Journal Vol. 43。そこにあったAREthの見開き広告が印象的でした。AREthといえば、長年に渡ってパウダーやバックカントリーで貴公子のようなシュプールを上げてきた番長さん(通称でしかあえて書きません)や、京都から世界中をジャーニーするバタリティの権化のスケーター、ジャイアン(通称でしかあえて書きません)、そして戦場のピアニストならぬ路上のジャズセッションな滑りが最高で彼の撮った写真がまた最高なLUI(これでわかるでしょう)。
'90年代からシーンの片隅で転がってきたSbは、AREthのベテラン的なこの3人がすぐに浮かびます。そんな中での今回のAREthのビジュアル広告。それは、Sbの撮影クルーも追いかけたいひとり、シンザト・タカアキのライディング写真でした。彼は通称、ジュニアと言います。喉から手が出るほど欲しかったスケーターのグラビア。こちらのテンションを一気に上げてくれたのです。撮影したのは彼と長年一緒に動いている前川翔平。コンクリートスポットなのに、苔が派生しているカビ臭いようなストリートな裏路地。苔の方なのか、工事業者か道路公団の方なのか、どちらが先なのかは判然としないが、そこにある雑草やフェンスや高架のガードレールや資材のすべてが苔むしたようなカラーリング。テクスチャーを数トーン落としたような風合い。アースカラーっていうより、裏路地色。松尾芭蕉や禅寺の古参さん以外は、ドープで渋いスケーターしか愛でないようなこの世界観が好きです。ここにあるすべてのものの中で、1番の新参者であろうシークにやって来たスケーターさえも、ここにずっといたんじゃないのかっていうスタイリング。この一体感、すばらしい。だからこそ、写真でもフィルミングでもそのトリックだけが映えてくる。
そんなアースカラーじゃなくて裏路地色のビジュアルに奮えたのも束の間、AREthから新作ビデオがローンチされました。前述のジャイアンやLUI、そしてジュニアも勢ぞろいです。この国の裏路地からスケボーデッキとほぼ同じ高さでずっとシーンを見つめてきたシューズブランドAREthならではの渋い1本となっています。タイトルは『Tensioon』。テンションとは緊張とか不安というのが本来の意味ですが、Sbでもジュニアのグラビアを見てテンションが上がったと言ってしまうように、いつからか誤用があたりまえになり、気分や気持ちの代名詞になりました。
そんなことはどうでもいいのですが、長年(実はSb創刊と同じときにブランドがスタートしている間柄です)、このシーンで転がってきたAREthに、番長さんに、心をこめて言いたいです。「ジュニアくんの広告ビジュアルからの新作Tensionのワンツーパンチ、テンション上がりました。もとい、感慨深く、とても いい気持ちになりました。So Feeling Good、ニーナ・シモンな気分です」。
─Senichiro Ozawa (Sb Skateboard Journal)