
F.A.T.はストリートブランド。ワークウェアや独自の太いシルエットのパンツやシャツといったアパレルが特徴的。Sbのグラビアに登場するスケーターにもF.A.T.の代表的なデニムである247やDickiesとのコラボパンツなんかを穿いてメイクしている顔がチラホラいたりする。ただ、スケボーブランドではないと先にはっきりと書いておく。
そんなF.A.T.はSbをずっとフォローしてきてくれたのはトルゥーストーリーで、スケボーマガジンならなんでもいいってわけじゃない。どちらも2002年に立ち上がった同い年のマガジンでありブランドだ。
F.A.T.が注目してくれているのは、Sbのスタイルや誌面づくりの部分。たとえば、とても気に入っているスケボー写真がある。とても面白い唯一無二のアートワークがある。まだ日本では知られてはいないけれど本質的な絵を描くペインターがいる。スケボーも好きだけど映画だって小説だって好きだっていうフィルマーや、とにかくふざけていたいだけのフィルマーがいる。いわば、国内外を問わずに、情報誌や二番煎じではなくSb独自にフックアップしたりリレーションシップしてきた愛しい人たちがいる。
そういう人たちと誌面づくりをするとともに、さらにページ(=キャンバス)の画角からはみ出していって、二次元から立体化してみたい案件というのが必ずある。そこをサポートしてくれると同時に、そのページの延長線上にF.A.T.とのコラボレーションがある。具体的には、フィルミングした動画コンテンツを制作したり、プリント写真や絵画をデザインしたり、刺しゅうしたりしたアイテムをつくっている。
見てめくって何度も見返すものから、実際にそれを着たり、動かしたりするという、Sbにおけるアートワークのネクストフェーズが実現した。そもそもF.A.T.のブランド/デザイナーがスケーターであり、しかもSbの前身であるWHEELからのフォロワーというのもあって、話がブレることなく進んでいった。
当然のことながらスケボーブランドではないから、スケボーカルチャーとそのシーンを全身全霊、狂気の愛(最上級の形容詞です)でプッシュしているスケボーブランドと競合する気も、邪魔をする気も、美味しいとこどりする気もない。「ストリートブランドでありながらスケボーブランドでもあります」なんて、絶対にのたまわない。そういうモラルやプリンシプルがしっかりしているのもいいところ。
ちなみに、F.A.T.はファット(デ●)ではなく、エフ・エイ・ティー というスラングで、いい感じという意味。さらにはオーバーサイズとかたっぷり感なイメージ。ビッグシルエットのアイテムはどんなスタイルや体型のスケーターもアーティストも人間もカバーしてしまうし、何かをつくっていないと禁断症状が出てしまうアーティストたちの偉大な表現欲求を投影する大きめキャンバスにもなっている。
スケボーが一番そうだけど、楽しかったり、おもしろかったり、人とは違うメイクや表現をしたくてうずうずしている人間は、大は小を兼ねること(本質的に何がベストかということ)をよく知っている。大きいことをしでかしたいなら、小さなことでウジウジしているヒマはない。すなわち、なにはともあれ、大きいことはいいことだ。
—Senichiro Ozawa(Sb Skateboard Journal)