17年前にオーストラリア・クイーンズランド州でトレント・エヴァンスが立ち上げたPass~Port。現在ではシドニーにショップとクリエイティブスタジオを構え、世界的に高い評価を得るブランドへと成長を遂げた。新作フルレングス『You’re A Stranger Here But Once』のプレミアで怒涛の週末を過ごしたばかりのトレントに、作品の舞台裏やブランドへの思いを語ってもらった。
──TRENT EVANS / トレント・エヴァンス
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VHSMAG(以下VM): まずは新作ビデオの完成おめでとう。シドニーではイベント続きの週末だったみたいだけど、プレミアを終えた今の気分は?
トレント・エヴァンス(以下TE): 本当に濃い数日間だったよ。金曜日にシドニーで新作ビデオのプレミアを開催して、土曜日はWKNDの試写会を手伝ったんだ。そこでライリー・ペイヴィーにサプライズでプロモデルが贈られた。そして日曜日はNikeのイベントとプレミアがあって、今度はHoddleからベン・ローリーにもサプライズでデッキが贈られたんだ。月曜日はようやくひと息つけたから、(竹井)ユウマ、ケンケン(滑川絢斗)、チームの何人かを連れてボンダイビーチに行った。サーフボードを持っていって、みんなで波乗りを楽しんだよ。疲労困憊でようやく声が戻ってきたところだけど、本当に最高の数日間だった。

VM: 今回のビデオは、もともとどんなコンセプトからスタートしたの? タイトルの由来も教えて。
TE: 今回のビデオは、ある意味偶然の産物なんだ。ライダーの怪我があったり、それぞれが個人パートや別のプロジェクトを進めていたりして、いろんなことが重なって自然と形になっていった感じだね。それに、日本のディストリビューターのカッシーがケンケンのフッテージをずっと送ってくれていて、「この子ならパートを作れるんじゃないか」って思うようになったんだ。タイトルは、オーストラリアのパブやバーで昔から見かける言葉に由来している。「一度会って、一杯飲んで、一緒に時間を過ごせば、もう他人じゃない。ずっと仲間だ」っていう意味。その言葉がすごく心に残っていて、シドニーのショップ用に同じフレーズを入れたウェルカムマットまで作ったんだよ。ケンケンのような新しい仲間をファミリーに迎えることにも、ぴったりの言葉だと思った。一度出会えば、もう他人じゃなくなるってことだから。
VM: 今回のビデオは約2年をかけて世界各地で撮影してきたんだよね。
TE: 撮影には2年近くかかった。今年の初めには、メルボルンからシドニー、キャンベラを巡る東海岸のロードトリップをやることにしたんだ。みんなでバンに乗り込んで、キャンプしたり、スケートしたり、泳いだり、釣りをしたり。ブランドがまだ小さかった頃みたいにね。世界中に散らばっているチームライダーたちが集まって、ひとつの旅を共有できた。そういう一体感が生まれたのはすごくよかったね。

VM: Pass~Portのビデオには独特の世界観があるよね。今回の作品では、クリエイティブディレクションや編集、音楽のセレクトにどう取り組んだの?
TE: 今回はオレが編集の大部分を担当して、ツアーのセクションはジェフ(・キャンベル)が編集した。彼がその旅のメインフィルマーだったからね。ジェフとはもう10年以上、ほとんどのプロジェクトを一緒に手がけてきた。だからお互いに遠慮なく厳しいことも言えるし、建設的な意見を交換できる関係なんだ。音楽に関しては、個人的に一番思い入れのある部分だね。以前はネットラジオの番組をやっていたし、今でもシドニーでDJをしている。とにかく音楽を掘るのが好きなんだ。プレイリストを作り込んだり、これまでスケートビデオで誰も使ったことがないような曲を探したり。そういうチャレンジに夢中になっているし、その過程がたまらなく楽しいんだよ。映像面では、アニメーションの99%を自分たちのスタジオで制作した。メインデザイナーのひとりであるサミーは、何週間も部屋にこもって、ストップモーションや生々しい動きのあるテクスチャーを使いながら、グラフィックを1コマずつアニメーションにしていったんだ。
VM: ケンケンのパートには日本のパンクバンドの草分け的存在であるINUの楽曲が使われているよね。どういう経緯で選ばれたの?
TE: あれはケンケンと彼のフィルマーが一緒に選んだ曲なんだ。実はオレもケンケン用にかなりの数の曲をプレイリストにまとめていたんだけど、日本で一生懸命撮影してきたのは彼らだから、音楽も本人たちにしっくりくるものじゃないといけないと思っていた。それで彼らがINUの曲を何曲か提案してくれたんだ。聴いてみた瞬間、「これだ!」ってなったよ。それまでINUのことは知らなかったから、オレにとっても最高の発見だった。「このアルバム、めちゃくちゃいい!」ってね。あの曲に合わせてケンケンのパートを組み立てるのは本当に楽しかったよ。

VM: これだけ多くのスケーターやフィルマー、撮影場所をひとつの作品にまとめるうえで、一番大変だったことは?
TE: 映像全体の流れや方向性に一貫性を持たせることだね。できるだけ地域ごとにフッテージをまとめるようにしたんだ。例えばサム・サットンのパートはLAが中心で、アメリカ東海岸やシドニーの映像も少し入っている。一方でケンケンのパートは、日本で撮影された映像だけで構成しているんだ。ケンケンのセクションが完全に日本だけで完結しているのも、個人的にすごく気に入っているね。
VM: 編集しているときに、特に驚かされたクリップやスポットはあった?
TE: シドニーにいるオレのもとにフッテージが届くのは、いつだってワクワクする瞬間だよ。例えばイートゥのバックスミスからのポップアウトとか、LAでテニーが決めた鬼流しフロントボードのポップアウトとかね。それにまだ誰も見たことがないようなスポットを紹介できるのも楽しい。オーストラリアのツアーでは、ジェフたちがブッシュの奥まで入っていって何もないような場所からスポットをいくつか作り出したんだ。そういう探究心こそが大事なんだよ。
VM: カラムが滑っていた、あの飛行機のスポットについては?
TE: 実はあのとき、オレは膝の前十字靭帯の手術を受けていたから、その日は現場に行けなかったんだ。東海岸を仕事で行き来しているスケーターから、フィルマーのジェフが飛行機の置かれた場所について情報をもらったんだよ。それでジェフが実際に行ってみたら、「誰かが絶対にここで撮らなきゃダメだろ。こんなにヤバいスポットは放っておけない」ってなったらしい。それでカラムをなんとか説得して、オーリーアップから翼でノーズスライドを決めたんだ。あの写真はThrasherのツアー記事の巻頭にも使われた。
VM: ケンケンが正式にチームに加入した経緯も教えてほしい。
TE: 日本のディストリビューターのカッシーが、半年くらいずっとケンケンの新しいクリップを送ってくれていたんだ。それで最終的に、「よし、この若くてハングリーなヤツにパートを作らせようぜ!」って。その後、すごい偶然に気づいたんだ。ケンケンが生まれた年月と、オレが17年前にクイーンズランドのスタジオでPass~Portを立ち上げた年月が、まったく同じだったんだよ。本当に運命的な偶然だよね。しかもPass~Portが彼にとって憧れのスポンサーだったと聞いて、「マジで!? それはめちゃくちゃうれしい!」って思った。彼がシドニーに来たときはショップに連れていって、「好きなものを何でも持っていっていいよ」って伝えたんだ。まるでお菓子屋に連れてこられた子どもみたいで、みんなにとって最高の瞬間だったよ。
VM: 最高だね。Instagramのショートクリップが主流になった今でも、フルレングスがそれほど重要なのはなぜ?
TE: オレにとって、スケートカンパニーをやるうえでの暗黙のルールは、何が何でもフルレングスビデオを作ることなんだ。とんでもない時間と労力がかかるし、イライラすることも山ほどある。でもブランドとしての存在を証明するには、これしかないと思っている。フルレングスビデオはブランドそのものなんだよ。チームもクリエイティビティも、すべてが詰まっているからね。
VM: ビデオが完成した今、一番誇りに思っていることは?
TE: 今回は編集作業の大部分を自分で背負ったからこそ、オレらのビデオがちゃんと自分たちらしさを貫けていることを誇りに思う。作りたいのは、ソウルやジャズ、そしてクリエイティビティがにじみ出るようなビデオなんだ。スケートそのものはもちろん、音楽やスポット、アニメーションを通してね。今回もPass~Portというブランドを形作るパズルのピースがまたひとつ完成した。しかも、それはこの先もずっと残り続けるものだからね。
VM: Pass~Portの17年間を振り返ってみて、ブランドに対するビジョンはどう変化してきた?
TE: 最初はクイーンズランドでひとりで始めたブランドだったけど、今ではスタジオ、ショップ、営業、チームマネジメントを含めて10人のスタッフがいる。それに、15人ほどの素晴らしいスケートチームもいるんだ。オレも今は41歳で、もう若返ることはない(笑)。でもこの仕事があるから毎朝起きるのが楽しみなんだ。根本にある考え方は昔から何も変わっていない。自分たちの進む方向を貫くこと。スケートボードを通して世界を探検すること。身の回りのあらゆるものからインスピレーションを受けること。パブに行ってじっくり語り合ったり、音楽を掘ったり、たまには1日の終わりにビーチへ出かけたりね。実は今回のインタビューも、オレにとってすごくいい時間だったんだ。ずっと編集作業に没頭していて、頭の中がそのことでいっぱいになっていたからね。こうやって話すことで、頭の中に溜まっていたものを言葉にして吐き出せたし、なんだか気持ちが落ち着いたよ(笑)。
Trent Evans
@pass_port
Pass~Portの創設者兼ブランドディレクター。シドニーを拠点に、デッキのグラフィックや映像編集、音楽のセレクトまで、ブランドのクリエイティブ全般を手がける。オーストラリアのカルチャーやユーモア、コミュニティに根ざした独自のアプローチで、Pass~Portをスケートシーンでもっともリスペクトされるブランドのひとつへと育て上げた。

















