広島競輪場の隣に新たなストリートの拠点が誕生した。BMXライダー内野洋平が全体監修を務め、スケートパークの設計を白井空良、施工をMBM PARKBUILDERSの木村将人が担当。競技としての完成度と日常的に楽しめる滑りやすさを両立させたこのパークは、どのようにして形になったのか。
──URBAN CYCLE PARKS HIROSHIMA
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Special thanks_MBM Parkbuilders
VHSMAG(以下V): まず、今回の広島のパークプロジェクトに関わることになった経緯から教えてください。
内野洋平(以下U): ここの運営がチャリロトという競輪関係の会社なんですけど、その親会社のミクシィと僕がライダー契約をしていて、その繋がりからお話をいただきました。「広島競輪場の隣にアーバンスポーツのストリートパークを作りたいので力を貸してほしい」と言われ、気づいたら全体を監修することになっていました。場所の配置から、大会を想定した観客席の確保、電源の位置、客の動線まで全部考えています。
V: ウッチーくんが全体を監修されたのですね。スケートパークの部分についてはどうですか?
U: スケートパークに関してはさすがに僕ではわからないので、空良にお願いしていろいろやってもらいました。
白井空良(以下S): そうですね。ウッチーさんと一緒に考えながら、世界大会ができるようなセクションにしたいと言われたので、いろんな大会からインスピレーションを受けてデザインしました。
V: 空良くんは最初にこの話を聞いたときはどう感じましたか?
S: ウッチーさんは結構簡単に「これやる?」みたいに言うので、「あ、いいっすね」みたいな(笑)。
V: 施工を担当された木村さんは、このプロジェクトを最初に聞いたときの印象はどうでしたか?
木村将人(以下K): ウッチーくんとは以前からARK LEAGUEなどで一緒にパークを作ってきましたし、空良のデザインの考え方も他の人たちよりは理解しているつもりだったので、「いいのができるんじゃないかな」とワクワクしました。気合が入りましたね。



—白井空良
V: このアーバンサイクルスポーツパーク全体のコンセプトとして「Real, Fun, Aggressive」というスローガンがあるそうですが、デザインにどう影響しましたか?
U: 今回は行政(広島県・市)とチャリロトが一緒に行っているプロジェクトなのでやらなければいけないこともありますが、僕らはプレーヤーなのでリアルなものを作りたいという思いがありました。まずは「楽しむ」ところから入ってほしいので、初心者エリアも広めに作っています。そこからどんどん「アグレッシブ」に本気になっていって、最終的に「リアル」なものに繋がっていく…そういう循環を生めたらなというコンセプトです。
S: 正直、そのコンセプトは今初めて聞きましたけど(笑)。ウッチーさんからは「初心者が来やすいエリアを作りつつ、大会もできるセクションを」と言われていたので、自然とデザインに組み込まれていました。キーワードではなく、ニュアンスで伝わっていましたね。
K: 私もそのコンセプトは知りませんでした(笑)。私はこのふたりに近い立場で「言われたものを作る」という感じですが、とにかくデザインがかっこいいので、作る前はワクワクしましたね。
U: 実際、初心者エリアもかなり考えてレイアウトされていますよね。
K: そうですね。初心者エリアは結構人気が出ると思います。マニュアル台だけで十分遊べるし、角にRをつけてターンの練習ができるようになっていたり、広くてチルに滑るのにもちょうどいい。
V: 空良くんがデザインしたメインパークには、これまでの世界大会の経験が反映されていますか?
S: そうですね。レールの高さやサイズなど、今まで散々失敗して学んできた経験を詰め込んだ集大成だと思っています。大きすぎず、でも小さくなく、大会もできる。本当にいいパークができたなと思います。
V: BMXの視点ではどうですか? 今回はBMX用のフラットエリアも設置していますよね。
U: そうですね。BMXフラットランド用の屋外コンクリートステージも日本で初めての挑戦でした。ただのコンクリートではダメなので、最適な床材を木村さんと相談しながら試行錯誤して進めました。
K: あれは大変でしたね。水が溜まらないようにしたり、木が浮き上がらないようにしたり。うちの若いのが2週間つきっきりで仕上げました。でも今回はいいものができたなと。今後フラットランドのステージを作る上でのいいスペックができたと思います。

—木村将人
V: 空良くん的に今回のパークの目玉は?
S: やっぱりメインのパークじゃないですかね。日本には大会向けのパークが多くないので。日帰りで広島に来てセクションの高さを調整しましたし。
K: レールの高さが低すぎたり高すぎたりしたので、1回切ってやり直しました。図面で決まっていても、実際に乗ってみないとわからない部分はあるので、そこはこだわりました。使い方も知らないくせに「できない」って言う業者はイヤですからね。スケーターの立場だったらやるのが当然。MBMは気に入るまで何回も切って繋いでやりますから(笑)。
S: それはMBMさんくらいしかやってくれないですよね(笑)。
K: だってイヤじゃないですか。「いや、全然やってくれないんですよね」とか空良とかに言われたら(笑)。それだと何のためにパークを作っているのかわからなくなっちゃう。うちらはスケーターのために作っていますからね。
V: ちなみに現在の日本のスケートパーク事情は空良くん的にどう見ていますか?
S: 最近はいい感じなんじゃないですかね。増えているし。前までは広くて微妙なパークが多かったけど、今はスケーターが設計に携わることが多くなったので。100点ではないと思いますけど、徐々にいいパークが増えていると思います。でもMBMさんは本当にスケーター想いで、スケーターのことがよくわかっているので、マックスの信頼を置いて甘えてお願いしています。
K: そう言ってもらえるとうれしいですね。毎回、学ぶことがありますし。今回もスケートの攻め方を考えた施工の重要性を改めて勉強させてもらいました。
S: アメリカでも100点のパークはないんで。でも数が多いんで、それぞれの最高のセクションで練習をしに行ったりとか。
V: ではどのパークのどのセクションが好きですか?
S: 日本なら立川のピラミッドが好きです。自分のTHE PARKはずっと滑っているので、全部気に入っていますね。
K: THE PARKのときは何回もやり直しましたからね。空良はセクションの高さのリクエストが細かい。やっていて面白かったですよ。
S: でも本当に微妙な高さでかなり変わるんで。このパークもそうですけど、「スケートパークを作るのは本当にすごい」って思います。たとえばレールの高さだけ決めればいいと思っていても、アウトの高さを間違えると最悪のセクションになりますし。「これは大変だ」って思いましたね。
V: 特にかなり繊細なコンボトリックをやるスケーターとしてはなおさらですね。
K: だから空良に「どこどこが気になる」って言われるとドキッとするわけですよ。申し訳ないと思っちゃいますね。
S: でも本当にMBMさんが自分たちの夢を叶えてくれているんで。いや、マジで最近パークを作っていて「無理だな」って。最初は自分だけで考えたほうが絶対にいいパークができるって思っていたんですけど…無理ですね(笑)。バンクの角度にしても、ひとつ間違えると最悪のパークになるので。
U: 空良も「滑ってみないとわからない」って言うんですよ。でもコンクリートパークなんでね。滑ってみるということは出来上がっている状態だから。それで木村さんに相談すると「最悪、気に入らなかったらぶっ壊せばいいですよ」って(笑)。
K: だって面の良さでも変わるし、バンクに入るところのアールの擦り付け方でも変わるし。いろんな細かい要素がありますから。
V: ちなみにダウンレッジの形状が特徴的ですよね。
S: そうですね。どこかで他にないものを作ってみたいというのはあったんで。
U: 僕は全部が埋まっているレッジがあまり好きじゃないんですよ。印象が重くなっちゃうというか。色に関しても、ふたりともカーキが好きで「カーキのパークなくない?」みたいになって。それでカーキにしました。ふたりとも超気に入ってます。
K: 周りの地面が水色だから「海に浮かぶ戦艦みたいだね」ってさっき話していたんですよね。
S: あ。ウッチーくん、それで今日は洋服の色をパークの配色に合わせてきたんですね(笑)。
U: 誰がデザインしたと思っているんだよ…って恥ずかしい(笑)


V: (笑)。では最後に、このパークが広島のスケーターにとってどんな場所になってほしいですか?
S: 僕が初めて広島に来たときは滑れるパークがあまりなくて。自分は神奈川出身で、身近に滑る場所と上手い人がいたから今の自分があると思っています。広島にもそういう環境ができれば、もっといいスケーターが集まってくるはずだと思います。だからこの話をもらったときにすごくうれしかったですし、広島のスケーターが少しでも多く出てきたら…ってそんなに上から言える立場じゃないですけど(笑)。でも広島のスケーターがもっともっと増えたらいいなって思います。
U: 広島にはストリートスケーターが多いんですけど、これまでは市民球場跡地にできたRIDERSっていうパークしかなくて。でも過去には県と市がFISEとか世界大会をやっていたりとか。広島は行政が大会に投資することはあっても、プレーヤーの受け皿がずっと足りないと思っていたんですよね。それで今回のパークで、やっと広島にその受け皿ができたっていう。めちゃくちゃうまい子から、始めたての子までが混ざってやってほしいですね。
K: ここはそういう場所ですもんね。メインでは本気の練習ができて、初心者用のエリアでは日曜だけのオジサンも楽しめるとかね。
—内野洋平
V: では「5年後にこうなっていたら成功だ」っていうビジョンはあります?
U: 滑りすぎてハンドレールがボロボロになっていたらうれしいですね。それだけできる人が増えたということなんで。
K: 私も同じですね。オリンピック候補とか、強化指定に入るスケーターが出てきたらうれしいですね。完全に私事ですけど、草木ひなのもうちのパークで染谷 凱くんに出会ってうまくなってオリンピックの代表になったじゃないですか。あのときの喜びはすごかったですから。ここがそういう場所になって、広島の子どもたちがオリンピックに出るようになったら本当に行政は喜ぶでしょうね。
U: あとは広島でスターが生まれるのが一番ですね。
K: それが我々の楽しみというか…夢ですよね。
S: いや、ふたりの言う通りですよ。自分もスケーターが増えてくれたらうれしいです。でも自分は強化指定選手なんで…もうライバルはいらないです(笑)。
URBAN CYCLE PARKS HIROSHIMA
ucp-hiroshima.com
「Real, Fun, Aggressive」をコンセプトに、初心者が安心して楽しめる広めのビギナーエリアと、世界大会レベルのトリックにも対応するメインセクションで構成。日本初となるBMXフラットランド専用の屋外コンクリートステージも併設。
















