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モノクロの世界観、綿密に計算された点描と流れるようなカリグラフィ
──USUGROW

2017.05.11
モノクロの世界観、綿密に計算された点描と流れるようなカリグラフィなどで注目を集めるアーティストのUSUGROW。これまでの軌跡、創作活動、先日実現させたばかりのVOLCOM × 野坂稔和 × USUGROWのトリプルコラボコレクションについて話を聞いた。
[JAPANESE / ENGLISH]

Interview by VHSMAG, Photos by Shinsaku Arakawa, Special thanks: Volcom Japan

VHSMAG(以下V): まずはアートと出会い創作を始めたきっかけを教えてください。

USUGROW(以下U): 高校生の頃にハードコアパンクやスラッシュメタルのフライヤーとかを見て自分でもやってみたいと思った。それがきっかけかな。でも、その前にBMXとかマウンテンバイクのレースに出たりもしていて、自分のヘルメットを塗ったりとか、友だちのギターを塗ったりとかもしていましたね。ハードコア音楽やスケートボードという、大衆から外れたものに出会うまではそういうことをやっていました。当時はエアブラシを使ってましたが手間も金もかかるし、だんだん飽きてきて…。その頃にハードコアとかスケートをやっている人と知り合って、フライヤーやジャケット、デッキのグラフィックのアートワークに触れる機会が増えて「僕もやりたい」と思いました。自分でもバンドを始めたり、スケートを始めたりで。それで気がつけば今になっていたという感じです。

V: 初めて世に出た作品は何ですか?

U: 僕が18歳のときに描いた、友だちのバンドのフライヤーじゃないですかね。

V: USUGROWという名義で活動するようになったのはいつ頃ですか? その頃からモノクロというものがテーマだったのですか?

U: USUGROW名義で活動し始めたのは’95、6年頃ですかね。モノクロに関しては、フライヤーといった自主制作のものは予算が限られていたのでそれしか方法がなかったという感じです。白黒でコピーすると10円で済む。でも、ハーフトーンのようなものがなかった頃のコピー機なので、2階調でコピーが出てくるんですよ。そうなると、ぼかした感じがちゃんと出ないから…点々で描くと、ピシッと2階調に分かれる。シルクスクリーンの版下を作るときもそれが便利なんですよ。自分で簡単にできるし。ハードコアのフライヤーとかその辺のシーンには、点描を用いたりインクだけで絵を描いたりする先人が多いんですよ。そういうわけで、モノクロの今のスタイルに関して言えば、僕がオリジナルというわけではないです。

V: USUGROWという名前の由来については?

U: Cocobatというバンドのベースを担当する坂本さんという人が名前をつけてくれました。たしか、いつも着ているTシャツが薄黒いとかそういう感じで“USUGROW”。

V: ではアーティストとして影響を受けたのは?

U: 描き始めた十代の頃、僕にきっかけを与えてくれたのはPUSHEADをはじめ、間違いなくハードコアシーンの先人アーティストたちなんですけど、今の自分が強く影響されているのは今を生きている周りにいるアーティストですね。野坂さん、チャズ(・ボヨーケズ)さん、プロデューサー兼DJのJuzu a.k.a Moochyさん、Turtle Islandの永山愛樹くん、ドラマーのMurochinさんかな。みんな身近な人ばかりですけど、貪欲にスキルや手法を追求するだけじゃなくて、作品や気持ちを狭いアートシーンや音楽シーンだけではなく社会に向けているってところに影響を受けます。

V: USUGROWさんがアートで食っていくと決心したのはいつ頃ですか?

U: 残念ながらそんな決心ができるような賢い子ではなかったので(笑)。そのまま時間が経って今に至るという感じです。ある日、気がつけば「ああ、そうだ。もうバイトしなくていいや」という感じでした。それが良かったのか悪かったのか…。

V: でもその段階に至るまでに、食えない大変な時期がありましたよね?

U: 苦労というか、話せないようなことももちろんたくさんあるんですけど、当たり前のようにバイトしながらやっていました。「好きなことを仕事に」というよりは、「次を描くために完成した作品を売って生活を繋ぐ」ってスタンスでした。ただ、描いているだけでは作品は売れないので、それにまつわる諸々も自分でやりました。例えば音楽だと、自主制作で始めた人は創作活動だけじゃなくて自分ですべての業務をこなさなければならない。デモを録って、売って、ライブを企画して、ブッキングをして…。僕自身もアーティストとして大概のことは自分でやります。こういうDIYなやり方にこだわりはないですけど、いろんな仕事が覚えられて良かったと思っています。ただひとりで1から10までやりすぎて、人と仕事を分担するということが苦手になったりもしますね。全部自分でやろうとしてしまうから。

V: 創作活動で金銭を得るためには、ときにやりたくないこともやらなければならない状況があると思います。そこはどのように線を引いていますか?

U: 考え方ひとつでどんなものもご馳走になるんですよ。たとえば、描きたくないと思ったものでも「依頼した人が喜ぶのであればがんばろう」と思ったり、リクエストされたモチーフが自分の判断では絶対に手に取らないようなものでも「こういう機会だからゆっくり見てみようか」と思って取り組んでみると新しい発見をすることができたり。好き勝手やっていると好きなものしか食べなくなる。人と関わることで、自分で選ばなかったものが頭に入ってくるというのは面白いと思いますね。意外と僕は柔軟なほうだと思います。ただ、はっきりしない人のオファーは受けない。「売れようが売れまいがコレがやりたいんだ」ってはっきりしている人と仕事がしたい。それか「メジャーになりたい!」とか言い切る人のほうが逆に好感が持てる。ユルいノリは大好きですけど、どっちつかずのヌルいのはイヤです。

V: では初めて世界に出た作品はどれか覚えていますか?

U: 外国という意味だったら、初めてLAに行ったときに自分がアートワークを手がけたジャケットのアルバムを持っている人たちがいて、彼らと友だちになっていろいろ広がったとか…。ただ、「世界」という感覚が僕にはあまりないんですよ。隣の県に行くみたいな(笑)。みんな「日本を代表して」とか「日本を背負って」とか優しい気持ちで言ってくれるのはありがたいですけど、僕はあまりそういうことは考えていなくて…。アマゾンの秘境のような場所だとまた別の話かもしれませんけど、今活動している範囲ではそういう感覚は特にないですね。国境なんてその時の権力者が勝手に引いているだけなんですよ。そんなもの僕らには関係ないですから。

V: 自分の作風を言葉で言い表すとしたら?

U: ん~……。「本当はスカッとしたいくせに、いちいち細かい」みたいな(笑)。カリグラフィの作品の場合は気持ちや体の流れを大事にしますけど、点々で描くときは精密な感じが求められますね。どっちのスタイルも自分の中にあるので、よくわからなくなることがあります(笑)。

V: そのふたつの作風はどのような経緯でたどり着いたのでしょうか?

U: やっぱり面白いと思ったことを続けてきた結果だと思います。僕は「自分のスタイルはこうだ」と決めつけないようにしています。自分を限定しない。たとえば自分のプロフィールにもスタイルについては何も書いていません。レコード屋の仕切りと同じですよ。ジャンルでカテゴライズするとみんな入りやすいからいいと思うんですけど、別になくてもいいかなと思います。そういうもので自分を限定するのはもったいないと思うんです。可能性を限定してしまうような気がして。聴く音楽も付き合う人も限定しない。面白ければいい。いいものはどんなカテゴリーをも超越する。紅白歌合戦で美空ひばりが歌えば、魚屋のおっちゃんも、幼稚園の先生も、工場の社長さんも「ひばりちゃんいいよね!」ってなる。そういうのがいいですよね。

V: モノクロで表現することの魅力は何でしょう?

U: シンプルなところかな。あまり選択肢があるより少ないくらいがいいですね。結局、10種類の水があっても、手にするのはひとつなんで。「そんなにいらないや」って思いますね。黒にも白にもいろんな階調があるし、モノクロにはまだまだ学ぶべきことがたくさんあるので、それがようやくわかったら色を使ってもいいかなと思います。まずは米をよく味わう。おかずはいらない。どうしても米に飽きたら、はじめて漬物に手を伸ばす。

V: なるほど。これまでに漬物に手を伸ばしたことはありますか?

U: ちょっとありましたよ。味が濃すぎましたね(笑)。「これは食べられないな」みたいな。自分には早すぎる感じがしたかな。



V: 音楽のフライヤーに始まり、アルバムジャケットやアパレルなど幅広く活動されていますが、スケートではSkull Skates、RealやConsolidated、Evisenなどのアートワークも手がけてきました。それはどういう経緯だったのですか?

U: Skull SkatesのときはオーナーのP.D.からメールが来て、RealはPUSHEADがジム・シーボーを紹介してくれて。Consolidatedのマルちゃん(丸山晋太郎)のボードグラフィックをやらせてもらったときも、絵描きのSADAMくんが仙台でやった個展に連れて来てくれて。Evisenもそこから繋がって。縁があってやることが多いですね。デッキのグラフィックは、最初からコレクターズアイテムみたいなモデルはあんまり気が乗らなくて断ったりしますね。ちゃんとスケートショップで売っていて誰でも買えて乗れるっていうのがいいですね。

V: スケート、音楽とアート。類似性を感じることはありますか?

U: 完成を強くイメージしてそこに近づくために切瑳琢磨する。身体や頭の使う部分は違えど、そのプロセスはまったく同じだと思いますね。

V: Volcom × 野坂稔和 × USUGROWのトリプルコラボがリリースされましたが、どういう経緯で実現したのでしょうか?

U: 野坂さんに声をかけてもらって実現しました。野坂さんとはもう20年の付き合いで、僕がまだ福島でフリーペーパーを作っていたときにインタビューをして以来です。作品を合作したり、海外でグループ展をしたりとかはありましたけど、商品としてコラボするのは初めてですね。


 
V: そして、今回のコラボのテーマが「愛」、「勇気」、「智慧」。

U: そうですね。僕らが未来に必要なものです。

V: 制作はどのような感じで進めていったのですか?

U: お互いに話し合って方向性を決めて、スケッチをしたり、それを重ねてみたり。特に大変なことはなかったです。強いて言えば締め切りが大変だったかな(笑)。

V: 今回のVolcomのトリプルコラボが完成した感想は?

U: やって良かったと思いましたね。同じ絵描きでも使う道具が違うし、見ているところも違うし、勉強になります。誰と仕事をしても吸収できることは吸収したいと思いますね。

V: では最後に、創作活動をしていて良かったと思うことは何ですか?

U: 描いているときは何も面白くないんですけど…(笑)。描いてるプロセスの中でいろんな発想や経験ができたことですね。あとはいろんな場所に住んでいる人と出会って違った価値観に触れることができたことも良かったです。最近歳を取ったからかもしれないですけど、20年前に手がけたTシャツで僕のことを知って、「いつか一緒に仕事がしたい」と思ってくれていた人と仕事をする機会が少しずつ増えてきたこともうれしいですね。

 

USUGROW
@usugrow | usugrow.com

ハードコアをはじめとするフライヤー制作をきっかけに’90年代初めからアーティスト活動を開始。音楽、ファッション、スケートなどさまざまなフィールドを舞台に、ジャンルにとらわれることない創作スタイルで注目を集める。現在はHHH Galleryを共同運営しながら精力的に活動中。

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