ADIDAS SKATEBOARDING

結婚、新たなスポンサー、ビデオプロジェクト。ライアン・タウンリーは大きな変化の真っただ中にいる。長年在籍したWelcomeを離れ新たな環境へと踏み出した一方で、近年は樹脂を用いたコラージュ作品にも力を注ぎ表現の幅を広げている。スケートとアート、過去と未来、その両方を見つめながら進むライアンに現在の心境や創作への向き合い方、そしてこれからについて話を聞いた。
──RYAN TOWNLEY / ライアン・タウンリー

2026.06.15

[ JAPANESE / ENGLISH ]

Special thanks_BRIXTON JAPAN

VHSMAG(以下V): まずは近況から。最近はどんな日々を送っているの?

ライアン・タウンリー(以下R): 最近はかなりスケートしている。今年はトリップがいくつかあるから、それに向けて準備しているところ。それとあるブランドのチーム加入の発表に合わせて公開する映像を撮っていて、そのタイミングでThrasherに記事も出る予定。あと、数週間前に結婚したばかりだから、この1ヵ月は本当に特別な時間だった。
 普段の日々としては、妻のデラニーと一緒に結構早起きする。まず15分くらいストレッチしてから、愛犬のブルーと公園で散歩。家に戻ったらトレーニングをして、スムージーを作って、それから少しスケートパークでセッション。その後はスポットに行ってトリックをトライしたり、進行中のプロジェクトがあれば家でアート作品を作ったりしているかな。あとは家のことをやったり、もう一度ブルーを散歩に連れて行ったり、デラニーと一緒に過ごしたり。それで夕飯を食べて1日が終わる感じ(笑)。まあ、本当にありふれた毎日だよ。

V: 結婚おめでとう。結婚したことで、生活や考え方、スケートやアートといったクリエイティブな活動との向き合い方に何か変化はあった?

R: ありがとう。考え方は少し変わったかもしれないね。以前より将来のことを考えるようになった。プロスケーターとしてどうやって長く滑り続けていくか、それと同時に現役を終えた後に自分が何をしていくのかにも興味を持つようになったんだ。妻とはいつか子どもが欲しいと思っているから、そんな将来について話すこともある。でも今のところは調子がいいし、スケートへのモチベーションも高い。だからこれから控えているプロジェクトやトリップのことで頭がいっぱいだね。

 

V: 今の自分のスケートをひと言で言うなら?

R: 自分のことを表現するのは難しいね…。あえて言うならブルーカラーかな(笑)。スケートに関しては、何を形にするにしてもつねにひたすら努力し続けないといけないタイプだから。自然に転がり込んでくるわけじゃなくて、いつも必死に積み重ねてきた感じ。

V: 年齢や経験を重ねるなかで、スケートとの向き合い方やスケートに求めるものに変化はあった?

R: つねに変化していると思う。若い頃は、とにかく誰かが自分にチャンスをくれることを願っていた。スポンサーでもいいし、トリップに連れて行ってくれる人でもいい。そんな機会をひたすら求めていた。でも今は自分自身をもっとプッシュする責任を感じている。サポートしてくれているブランドに対しても、「本気で取り組んでいるし、ベストなスケートをしようとしている」という姿勢を見せたい。ただ支えてもらうだけじゃなくて、お互いに支え合う関係でありたいと思っているかな。

V: 最近、特に刺激を受けたスケーターや映像作品はある?

R: 昔からベニー・マグリナオのファンなんだ。だから彼が作る映像はいつも刺激を受けるね。音楽の選び方やアートディレクション、それに記録しているスケートとの組み合わせ方まで含めて、すべてがすごく魅力的。それと新しい世代ではLaandクルーが好きだね。すごく考え抜いて作品づくりをしているのが伝わってくる。映像にしてもスケートにしても、ひとつひとつにしっかり意図がある感じがして、その姿勢に惹かれる。

V: BRIXTONに入ってもう2年くらいになるけど、改めてこのブランドの魅力をどう感じている?

R: BRIXTONに惹かれるのはスケートだけにフォーカスしているブランドじゃないからなんだ。アートや音楽、サーフィンみたいに、スケートとつながりのあるさまざまなカルチャーも大切にしている。その姿勢に共感しているよ。それにBRIXTONは長い歴史を持つブランドでもある。クリエイティブなカルチャーに存在するいろんなものをサポートしていて、そういうところもすごく好きだね。

V: BRIXTONでの活動を振り返って、一番印象に残っている経験を挙げるとしたら?

R: 一度、夏の撮影でみんなでカボに行ったことがあったんだ。あれは本当に楽しかった。ビーチ沿いの家にみんなで泊まって、一緒に過ごしたりパーティしたり(笑)。普段のスケートや撮影のトリップは身体を酷使しながら動き回ることが多いけど、あの時はそういう感じじゃなかった。純粋にみんなでリラックスして楽しめたのが印象に残っているよ。

 

V: 樹脂を使った独特なコラージュ作品を制作しているけど、あの表現にたどり着いたきっかけは?

R: 昔からいろんなアート表現に興味があったんだ。子どもの頃から絵を描いたりペイントしたりしていたし、コラージュ作品も何年も作り続けてきた。コロナ禍の頃に樹脂を使った作品を見かけるようになって「これを自分のコラージュに取り入れられないかな」と思ったのがきっかけだった。そこからは試行錯誤の連続。ひたすら調べて、実際に作っては失敗してを繰り返しながら、何がうまくいって何がうまくいかないのかを独学で学んでいったんだ。

V: 素材集めから完成まで、作品づくりはどんなプロセスで進めているの?

R: どちらかというと感覚的なところから始まるかな。何年もかけて集めてきた本や雑誌を引っ張り出してきて、気になるものを切り抜いていく。そうしているうちに作品全体のイメージが少しずつ見えてくる。ただこの作品は立体的な奥行きを持たせるから、普通のコラージュとは少し違う作り方になる。完成形から逆算して考えなきゃいけないんだ。だから、ときには背景に入れたいものや全体の形、境界線なんかを先に描き出して、どうやって作品として成立させるかを考えながら進めていく。そんなプロセスかな。

V: 作品には偶然性と計画性の両方があるように見えるけど、実際の創作ではどちらを重視している?

R: 始めた頃は間違いなく偶然性のほうが大きかったね。まだ樹脂の扱い方を学んでいる途中だったから、どう仕上がるか予測できない部分も多かったんだ。でも今は樹脂の扱いにも慣れて、どうすれば狙った表現になるのかわかってきたから、プロセスをかなりコントロールできるようになったと思う。とはいえ、偶然の要素がなくなったわけじゃない。作品に使ういいイメージを見つけることだったり、別々の素材同士が思いがけずうまくハマったりする部分には、今でも偶然性があると思う。

V: パート制作やスポットシークと創作の間に共通点はあると思う?

R: あると思うよ。スケートと自分の創作活動で共通しているのは、どちらも「組み合わせを探す作業」だということかな。スケートでは自分がやりたいトリックに合うスポットを探したり、逆に見つけたスポットからアイデアを膨らませてトリックを考えたりする。作品づくりもそれに近いんだ。使いたいと思えるイメージを見つけたら、そこからさらに雑誌や本を掘りながら一緒に使えそうな写真や色を探していく。そして頭の中にある完成形に近づけるために、どの素材が合うかを組み合わせていくんだ。そういう意味では、どちらも「何が一番しっくりくるか」というものを探し続けるプロセスだと思う。

自分が作るものや発信するものから「どれだけ時間と労力を注いできたか」が伝わればいいなと思っている

V: アーティストとして表現したいことと、スケーターとして表現したいことに違いはある?

R: 難しい質問だね。アーティストとしてもスケーターとしても、自分が作るものや発信するものから「どれだけ時間と労力を注いできたか」が伝わればいいなと思っているよ。

V: 最近制作した作品で特に思い入れのあるものは?

R: 最近だと、友達のアーロン・ジュピンがキュレーションしたグループ展に参加した時の作品かな。いつもとは違うカスタムシェイプの作品を作ったんだけど、自分でもかなり気に入っている。それにアーロンとは子どもの頃からの付き合い。一緒に育ってきた友達が企画した展示に、自分もアーティストとして参加できたのは感慨深かった。いろんな意味で特別な出来事だったと思う。

 


 

V: これまでたくさんのパートを残してきたけど、一番思い入れのあるのは?

R: 思い入れが一番強いのは、やっぱり『Fetish』での初めての本格的なパートかな。あの頃に自分がどんなスケートをしたいのかがはっきり見えてきたし、本当に納得できるパートを作るために自分を追い込んだんだ。それまで以上にひとつひとつのトリックに向き合ったし、トリックそのものだけじゃなくて、それをどんなスポットでやるかも同じくらい大事なんだということを学んだ。パートをどう作っていくべきか、その考え方や向き合い方を理解できた気がする。それにあれは初めて映画館でプレミア上映されたパートでもあったんだ。友達や家族が見守るなかで公開されたのは本当に特別な経験だった。

V: Welcomeを離れた今、ブランドやチームを選ぶうえで大事にしていることは?

R: そうだね。今の自分が求めているのは、スケートの本質やカルチャーを大事にしている人たちかな。ビデオパートを作ったり、トリップに出たり、デモやプレミアを開催したり。そういうスケートコミュニティとの関わりやスケートを特別なものにしている要素を大切にしている人たちと一緒に動きたい。ショップやディストリビューターを訪ねて、自分たちの商品を扱ってくれている人たちや、それを買ってくれるキッズたちと直接コミュニケーションを取ることも重要だと思っている。もちろんSNSが大事な時代なのは理解しているよ。でも今話したような活動とSNSは対立するものじゃなくて、お互いを補完し合えるものだと思うんだ。映像制作やイベント、トリップといったリアルな活動は、そのままSNSのコンテンツにもなる。だから両立できるはずなんだよね。ただ、ブランドによってはSNSや数字だけに意識が向いてしまうこともある。もちろんそれも価値のあることだし、自分も貢献したいと思っている。でも同時に、質の高いスケートをしっかり見せるプロジェクトに取り組むこともすごく大切だと思うんだ。そしてそれが優れた映像として記録され、明確なアートディレクションやブランドのアイデンティティを持った作品として形になることに大きな価値を感じているね。

V: 長年所属したチームを離れて新しい環境に飛び込むというのはどんな経験だった?

R: 不思議な感覚だったね。でも人生と同じで人は変わっていくし、ブランドを運営する側の人たちも変わっていくものだと思う。Welcomeでは本当に特別な時間を過ごさせてもらったし、ブランドを運営していたみんなには感謝しかない。チャンスをもらえたことを本当にありがたく思っている。プロにしてもらったのもWelcomeだったし、いくら感謝してもしきれないね。ただ10年というのはすごく長い時間なんだ。その間にチームもブランドの方向性も変わっていった。もちろん自分自身も変わった。だから最終的には、お互いが求めているものが少しずつ違ってきたということなんだと思う。そういう意味では、双方がそれを理解したうえでの自然な流れだったんじゃないかな。
 新しい環境に飛び込むことは、自分には必要なことだったと思う。これから所属するブランドに関わっている人たちとは以前から友達だったし、話をもらった時に提示されたものやブランドの考え方にもすごく共感できたんだ。だから自然の流れだったし、ずっと求めていた新しい刺激を与えてくれた気がする。それに、このブランドから声をかけてもらって、チームの一員として迎え入れてもらえたことにも本当に感謝している。今はその一員として活動できることが純粋に楽しみだし刺激をもらっている。これから一緒に何を作っていけるのかワクワクしているんだ。

V: まだ詳しくは話せないかもしれないけど、今後のスポンサーやチームについて現時点で言えることはある? Instagramで乗っているデッキを見て気になっている人も多いと思うけど。

R: それとなく匂わせてはいると思うけど、チームとしては発表でみんなを驚かせたいみたいなんだ。だから今の段階では詳しく話せない。ただ2週間後にはアメリカツアーを控えていて、それに合わせてチーム発表の映像と記事が公開される予定。その後も映像公開に合わせていくつかトリップが決まっているし、今年後半に向けてもいろいろ計画が進んでいるよ。

 


 

V: 結婚やチームの移籍も含めて、最近は大きな変化が続いているけど、自分でも「新しい章が始まった」と感じる?

R: まさに今だね。この数ヵ月はずっとそんな感じだよ(笑)。

V: 今後、スケートでもアートでも「これに挑戦したい」と思っていることは?

R: まず今この瞬間をしっかり生きることかな。変化が訪れたらそれを受け入れて、その時々を大切にしながら進んでいきたいと思っている。スケートでもクリエイティブな活動でも、これからもベストを尽くし続けること。それが今の自分にとって一番の目標だね。
 

Ryan Townley
@ryantownley

カリフォルニア州アナハイムヒルズ出身。独創的なスポット選びと力強く緻密なスケーティングで支持を集める。BRIXTONに所属する傍ら、アーティストとしても表現の幅を広げている。長年所属したWelcomeを離れ、新たなチームへの加入を控えるなどキャリアの転換期を迎えている。

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